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Bonnieの小部屋

BLオリジナル小説サイトです。芸能界ものをシリーズで連載しています。

パンドラの箱 6-2

6:強硬手段

「で、話って何?」

自販機で買ってきた缶コーヒーを手にソファに腰を下ろすと、実は手にしていた2本のうち1本を、突っ立ったままの直希に差し出した。
直希は小声で「ありがとう」と呟きながらそれを受け取ったが、開封する事も無ければ座る様子も無い。

「とりあえず座ったら?そこで立たれてると落ち着かないんやけど」

隣に立ったままジッと見下ろしてくる直希を振り返り、実が隣に促せば、

「実…」

目の前に回ってきた直希が。
実から貰った缶コーヒーをポケットに突っ込んで。

「頼むっ!」

ガバッと、腰を直角に折るようにして、頭を下げてきた。
その勢いに実も思わずたじろいだが、驚きすぎて逆に表情にも態度にも出ない。ポカンと、目の前の直希を凝視していると、

「大河との時間を、俺にもくれないか……っ」

頭を下げたままそう訴えた直希の声は、既に涙声だった。

「実が、俺を軽蔑してることも、大河から切り離したいことも、分かってる。大事な存在だって人が傷つけられたら、それは当然だし、俺だってそうすると思う。
それから、実の気持ちも、知ってる。大河が、それに応えようとしてることも。
それが全部分かっている上で、それでも俺は、もう一度大河の隣に行きたい。実と張り合いたい。身勝手だけど、チャンスが欲しいんだ」
「…チャンス?」
「俺のこれからを、見てもらうチャンスを。
自業自得だって、何度も言い聞かせてみたけど…ダメなんだ。大河が俺を見ないだけで、毎日苦しくて。このままじゃ俺……」

声を詰まらせて、ひたすら頭を下げ続ける。完全に弱り切った声の直希に、実も思わず視線を逸らした。

―――だから嫌やったんや…

心の中で、大きく溜め息をつく。
直希の本気に気づきかけていたから、真っ直ぐ向き合いたくなかった。
しかし、だからといって、実は直希を信用したわけでは無い。大河に同じことをまた繰り返すかもしれないリスクを直希に1%でも感じる限り、彼の本気なんて信じるつもりはないから、

「それは俺に、"大河を独り占めするんやない"って文句言うてるんか?」

少しだけ意地悪な角度で、直希に問いかける。

「大河がお前を避けてるのは、俺がそう言うてるとでも?あいつの意思やなくて?お前、なかなかおめでたいヤツやな」

そんな厳しい言葉を言いつつも、実は自らも立ち上がり、直希の肩に手をかける。顔を上げろ―――と。
体を起こされても俯いたままの直希は、実の言葉に頭を左右に振って否定はするものの、弁解の言葉が見つからないのか唇を噛んでいる。
しかし、

「そんなにアイツが好きか…?」

クールなトーンを少し落として、実がそう問えば、

「好きだ…っ」

やはりそれはハッキリと、迷いなく断言してくる。

「アイツの気持ちが、冷めてるとしても?」
「そしたら、また好きになってもらえるように努力する」
「お前、それ相手分かって言うとる?俺いちおう、今現在は、アイツの恋人候補第1位なんですけど」
「……それは…」
「まあええわ。……で?好きになってもらえるように努力して、その次は?アイツの気持ちがまた自分に向いたら、お前はまた調子に乗ってアイツの好意を利用するんやないんか?」
「しない…っ。絶対に、そんなことしない」
「どうして言い切れる?」
「その結果が、これだからだ」
「…なるほどな」

ごもっともな正論に、実は小さく頷いた。直希にとって厳しすぎた今回の出来事は、どうやら正確に彼の教訓となったらしい、と。

「目の下にクマ作るほど、キツかったか」

思わず笑ってしまいながら顔を覗き込むと、直希は声を詰まらせながらも「うん」と頷く。

「気がついたときには、もう引っ込みつかなくてて…。周りを牽制して、大河から視線逸らせようとするしか…。
大河の魅力は、俺だけが知ってればいいって。そうすれば誰にも取られないって…」
「それでミキにあんなこと言うたんか」

『は?無い無い。
だって大河だよ?色気もクソもねぇっての。
恋愛とか、普通にムリでしょ』

あの言葉にはそんな意味があったのかと、直希の言葉を聞けば実も改めて納得できる。今野の言う通り、大河が好きなのに自分本位な驕りと弱気で、あんな行動になったのかと。
大河との間に、独特な空気感と距離感を持つ冴島。天然でぼんやりしている、一般的には人畜無害な奴だが、大河を少なからず好意的に思っているだろうことは、確かに実も感じていたことだ。その冴島が大河の魅力をつらつらと素直に述べ、"直希のように年がら年中側にいたら恋愛もあり得る"とでもいうようなことを言ったものだから、焦ってあんな発言をしてしまったのだろうと。
冴島に、"大河は無し"と感じさせるような発言を。

「調子に乗ったんやなくて、焦ってた。ってことか…」

それでも許される発言ではないが、それはもう直希はじゅうぶん痛感しているだろうから、実は言わないでおいてやった。堂々巡りの話は、効率が悪い上に、良くない"時間稼ぎ"だ。

「大事なのは、大河がどう思うかやな」

どう思って、どう判断するのか、それが大事だと。
いまだ俯く直希の肩をもう一度軽く叩いてから。

「はぁ…まったく」

実は、溜め息をついてその場を後にした。
放置状態の直希は、それでも俯いたまま、立ち尽くす。
だが、

「あ、ちょっ……!」

背後から聞こえたその声に。
自分が良く知っているその声に。
思わず顔を上げれば……

「み、みのる…っ」

実に手を引かれながら、引きずられるように現れたその人物に、

「大河…」

思わぬ人物の登場に目を丸くしながらも、呼びかける機会すら激減していたその人の名を呼べば、直希は心が震えた。

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