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Bonnieの小部屋

BLオリジナル小説サイトです。芸能界ものをシリーズで連載しています。

立ち入り禁止 3-6

3:時限爆弾

「……そうやね」

静かに風見に視線を向け、低い声でそう言い返す。

「涼太さんのストライクゾーンは、ホンマ広くなったもんな。心と一緒で。"人間の男であること"やったっけ?」

ズタズタにされた心は、誠を酷く冷静にさせる。自分らしくない皮肉めいたツッコミというか返答が、驚くほど冷静に出てくれていた。

「誠……?」
「ホンマ、そういうとこ尊敬しますわ」

本当は、「俺も好きやで」とか言うのがこの状況の切り替えしには一番だとわかっているけれど、誠には言えない。少なくとも風見には、絶対言えない。だから、そう皮肉返しするしかできない。
そうやって、この話題を終えることしか……

「なんだよそれ」

終えることしか……

「俺が軽い男だって言いたいわけ?」

―――終わってくれへんし…(泣)

「違うよ、心が広いって言いたいんや」
「そうは聞こえねぇよ」
「誰も軽いなんて言うてへんやんか」
「言ってるじゃねぇかよっ!」

風見がキレて叫ぶ。いつもならこんなこと言われてもおどけて更に皮肉を返して終わるはずの風見が、彼らしくない剣幕でそう食い下がってきたのだ。
おかげで、次の瞬間には、高瀬も誠も、驚いて風見を凝視していた。

「俺は誰かれ構わずだって、そう言ってるようなもんじゃねぇか。お前に何がわかるんだよ。俺が付き合ってきた人間なんて、ぜんぶは知らないくせに」
「涼太さん?ちょ、落ち着けて。何や急に…」
「俺の気持ちも知らないで、平気でそういうこと言えるお前の方が神経疑うね」
「平気で?」

ピクンと、今度は誠のこめかみが震える。
そして、

「涼太、それ、酷くないか?」

高瀬のトーンも下がった。
それは、誠の事情を知っている高瀬が風見を嗜めようとしたまでなのだが。
しかし結局、それが風見の怒りを煽る結果となってしまって。

「何、司も俺が悪いって言いたいのかよ」
「そうじゃないけど、涼太だって誠のことそこまで分かってるわけじゃないだろ」
「だったら自分は分かってるとでも言いたいわけ?」
「は?何言ってんだよ。ホント、おかしいって涼…」
「そんなに誠のこと分かるってんなら、お前がコイツのマネージャーになってやれば?そんで、ずっとそばにいて、相談役やってやりゃいいじゃん」

その瞬間、誠の中で、何かが弾けた。
静かにテーブルに置いた缶コーヒーを掴む手に、力が篭もる。

「涼太、自分で言ってること分かって……」
「……ふざけんな」
「え?」
「誠?」
「ええ加減にせえやっ!」

自分でも驚くほど、大きな声で。気づけば誠は、叫んでいた。
驚いて目を丸くする風見の胸倉を、勢い良く掴んで引き寄せる。

「何が高ちゃんがマネージャーになれ、や。言うてええことと悪いことがあるやろ!」
「誠、落ち着け」

風見に殴りかからんばかりの誠の気迫に慌てた高瀬が身を乗り出して、誠の腕を掴む。しかし誠はそれを振り払い、今度は風見の両肩を掴んだ。

「俺だけならまだしも、高ちゃんに失礼やろ。謝れやっ」

口から出まかせとはいえ、風見の発言は、様々な覚悟を持って大河を育てようとした高瀬の熱意を踏みにじっているのだと。そしてそれは、高瀬を信頼している大河にも失礼に値する。
それなのに、誠のその言葉を聞いた瞬間、風見はまた怒ったように顔をそむけた。

「涼太さんっ」
「………」
「だいたい、あんた俺のことおかしいおかしい言うとるけど、自分やって相当おかしいで。やけに俺につっかかるし、今やって変なところにこだわってトンでもないこと言い出すし」
「…………」
「黙ってないでなんとか言うたらどうなんや。なあ!」

何も言わない風見が、誠は無償にムカついた。
誠の方が何も考えていないだなんて、平気で何でも言える奴だなんて、そんなこと風見には言ってほしくなかったのだ。
誠はいつだって、風見のことを考えてきたのだから。

気持ちを押し殺して鍵をかけて、だからこそ"好き"という冗談すら言えない自分。
悪気がないとはいえ、平気で近回りしてくる風見。良くも悪くも、自分の感情に正直な風見。
風見のそういうところに誠は憧れる反面、同時に、苛立ちが募る。
挙句の果てが、"高瀬に相談役をやってもらえ"だなんて……

「俺たちの13年って、そんなもんやったんか」

悔しい。
涙が出そうだ。

「何があっても信頼と絆は壊れへんて、仲間への敬意は一生やって、あれは全部嘘かっ。これのどこが敬意や、ふざけんなっ」
「……誠」
「そんな風に思ってたのは俺だけってことかっ!」

本気で泣きそうになって、泣き顔だけは見られたくなくて、自分の名を弱々しく読んだ風見の声には気付かず、誠は立ち上がる。

「誠!!」

止める高瀬の声を振り切り、そのまま部屋を飛び出した。


その後、あの部屋でどんなやりとりがあったかはわからない。
公園のベンチで夜を明かした誠には、知る由もない。





「最低だな」

部屋の住人が出ていった部屋。
風見と取り残されてしばらく沈黙が続いた後、高瀬はそう口を開いた。

珍しく本気でキレた誠が出ていった瞬間、

『誠!!』

慌てて追いかけようとした高瀬の腕を、引き止めて制したのは、意外にも風見だった。

『……涼太?』

離せよ、と言いかけて、高瀬は言葉に詰まった。
何かを懇願するように自分を見ている風見の瞳が、"追うな"と言っているのは明らかで。
その意味を、高瀬はわかっている。本人に確かめたわけではないが、風見の親友ともいえる自分には、確信がある。だからこそ、風見が自分を引き止めたいことも、誠を追いかけるべきなのは自分ではないことも、理解できて思わず固まってしまったのだ。

―――絶望的な2人だな……

見事にすれ違う2人に、心がチクリと痛む。
しかし同時に高瀬の心には、損な役割ばかりさせられる誠への同情と、自分勝手な風見への苛立ちが湧き上がった。

―――好きになった相手が悪いって、誠……

浮かせた腰を再び下ろして、高瀬は、俯く風見を真っ直ぐ見詰める。

「なあ、涼太……」

確かに、誠を追いかけることはできないなと、高瀬は思う。そんな場合じゃないと、気付いたのだ。
誠を追うよりも、自分には、することがあるのだと。

「お前、勝手すぎるよ……」

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