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Bonnieの小部屋

BLオリジナル小説サイトです。芸能界ものをシリーズで連載しています。

PERFECT BLUE 06-02

1幕-6:彼の伝説

[2]

「じゃ、今日はこれで終了。帰っていいぞ~」

諏訪の言葉と共に、生徒たちがガタガタと席を立ちだした。

「柊~、今日バイト?」

木下が席に座ったまま、斜め前の石原に声をかける。

「ん?今日は違うよ?」

振り返り、石原がニコッと笑う。

「んじゃさ、ちょっと俺に付き合わない?」
「いいよ~、何?」
「お前今日誕生日じゃん?メシでも奢るよ」
「え、マジ?!?!」

顔中にパッと光でも射したかのように、石原が木下の机に駆け寄って来る。木下は、そんな石原にニッコリと微笑んだ。通称"来人王子の微笑み"である。

「何食いたい?」
「美味いモン!」
「はぁ?大まかすぎだってば」

木下は、石原の頭をポンポン叩きながら笑った。まるで尻尾をブンブン振っている子犬のような石原のその仕草に、前の席の富永が、一緒に居た谷原と共にハハっと笑う。隣の席の真鍋も、真鍋の机に座っていた桜沢も、思わずフッと笑ってしまった。
石原は、木下がとても大事にしている親友だ。去年同じクラスになり、不良の木下たちにも平気で話し掛けてきた生徒が石原だった。特に木下と気が合い、2人は大親友の関係にある。
石原のおかげで、木下はずい分と性格が優しくなった。1度目の1年生の時には殆ど学校にも来ず、目立つ容姿のおかげで通学途中にケンカを売られては倍返しにして騒ぎを起こし、何とか無事学校に辿り着いたら着いたで何かしら問題を起こしていた札つきのワルだった木下は、去年石原と知り合って以来、きちんと学校に来るようになり、問題も起こさなくなった。
DOQの中でも一番親しみやすい人物で、クラスメートとも割りと普通に会話が出来るのは木下だけだ。桜沢や真鍋は、皆藤ほどではないにしろ、近寄り難い印象をクラスメートに与えてしまっている。
しかし、木下がDOQで固まっていても平気で混じってくる石原とは、真鍋も桜沢も、比較的話をする。冷たくすれば木下が怒るというのもあるが、石原に対して彼らも親しみやすい印象を持っているのも事実だ。
そんな、石原と木下のデコボココンビのやりとりを笑いながら見ていた真鍋だが、

「ナベ……」

遠慮がちに自分を呼ぶ声に、一気に笑みを消した。
声の主は、分かっている。

「………」

無言で、クールに目を向けると、予想通りの人物・浜島は、表情を曇らせながらも必死で話し掛けようとしていた。
桜沢が、無言で席を離れて皆藤の方へ行く。皆藤は、桜沢が来たことに気付いても、変わらず窓を眺めている。写真を撮ろうと思っているのか、机の上に置いてあるバッグの横にカメラが出ていた。
余計な気をきかせるんじゃない…と、真鍋は桜沢に対して内心舌打ちをしながら、浜島を睨みつける。

「朝のホームルームで配ったプリント、書いてあるかな。提出してほしいんやけど」

浜島が言っているのは、来週行われる生徒総会で使うアンケートだ。帰りのホームルームで他の生徒たちは提出したのだが、真鍋と皆藤だけ提出していない。

「皆藤くんも……」

浜島が、皆藤に顔を向ける。
真鍋はいつも通りブスッとしたまま動く気配がない。
そして皆藤もいつも通り、無言のままではあるが素直に浜島にプリントを差し出した。すでにきちんと記入してある。

「…ありがとう」

浜島が、ぎこちなく皆藤に笑いかける。
真鍋は、また何か釈然としない気持ちになった。

「あ、ナベも……」

言われて、仕方なく真鍋もプリントを出し、アンケートにササッと明らかに適当な記入をすると、浜島に突きつけるように渡した。

「…ありがと」

曖昧に微笑み、浜島はその場を去った。途中、浜島は木下と顔が合った。木下には、いつも通り苦笑された。浜島も悲しそうに笑い、立ち去っていく。
浜島が立ち去るとすぐさま桜沢が来て、真鍋の頭を軽くはたいた。しかしその真鍋は、桜沢に文句を返すこともなく、皆藤に視線を向ける。皆藤は、ただただ、窓を眺めていた。


「先生、今日この後は部活に顔出すの?」

ガヤガヤとうるさい元気な生徒たちを"ほんと元気なやつらだよな"と思いながら見ていた諏訪に、富永がそう話し掛けてきた。

「いや、中間テストの問題作らないといけないから、行けないかな。何で?」
「授業のことで、訊きたいことがあって。後で行こうかなと思ってたんだけど…」
「あ、いいよ。職員室に居るから、おいで。先生たちみんな問題作ってるからさ、ドアで俺を呼んでくれって頼みな。そしたら、教室で質問訊くから」

諏訪が言うと、「は~い」と言いながら、富永は再び自分の席に戻って谷原と楽しそうに話しはじめた。
諏訪も、教室を出る。
無意識に、チラリと皆藤の席に目が行ってしまった。
皆藤は、ジッと諏訪を見ている。

保健室でのキスから10日。あれ以来皆藤は、こうして諏訪をジッと見てくるようになった。
きっと、諏訪があのキスに反応したこと、彼は気付いたのだろう。諏訪を見る皆藤の表情は、どこか挑発的だ。品定めをしているかのように、自分を見つめてくる。こちらの出方を窺っているのかもしれない。
諏訪はいつも通り動じない表情を作ってニコっと笑って見せると、教室を出た。

"俺は、そんなことでお前を厄介もの扱いするつもりはないよ"

という気持ちを、精いっぱいこめて。
なぜなら10日前の件に関しては、皆藤は串崎と麻生に交換条件を突きつけるためにしたことなのだ。諏訪を脅すためにしたことではない。あれは、皆藤なりの麻生と串崎への詫びだったのだと諏訪は考えている。彼があの状況をただ愉しんでいたわけではなかったと、信じているのだ。

「だからそろそろ、観念してくれよ……」

廊下を歩きながら、諏訪は呟いた。
そうじゃないと、いつまでもこのモヤモヤした気持ちに悩むから、と。
皆藤が少しでも心を開いてくれれば、こんな気持ちが無くなるはずだ、と。
そう信じて疑わない諏訪は、ひたすらそう願いながら歩き続けた。

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