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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
3幕-19:卑怯者の言い訳

PERFECT BLUE 19-07

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皆藤は、ひとりで映画館に来ていた。
劇場を出ると、谷原がフロアで掃除をしていた。

「あ」

谷原も皆藤に気付き、顔を向ける。
すると皆藤は、無言ではあったが軽く手を上げ、そのまま出て行った。
笑顔も言葉もないが、それでもきちんと反応をくれたことが、谷原は嬉しいと思った。
彼の後ろ姿を笑顔で軽く手を振りながら見送り、自分も元気に仕事を再開する。

「どうしたの、谷ちゃん。ずい分楽しそうに仕事してるじゃん」

一緒に作業をしていた矢野が楽しそうに声をかけてきた。谷原はそんな彼に笑顔を向けると、そのまま仕事を続ける。

「そういえばさっき、あの子に手ぇ振ってもらってたね。クラスメートなんだって?」

ゴミをまとめながら、矢野が話題を振ってくる。"あの子"とは、皆藤のことだ。

「ん?あ、そうですよ」
「あの子、どんなコなの?最近ちょっと、感じが変わったよね」

近寄り難いイメージはあるものの以前のように冷たいオーラだけを振りまかなくなった皆藤を不思議に思っているのか、興味津々の面持ちで矢野が訊ねてくる。それを谷原は、"ん~"と考えて言葉を探した。

「確かに、ちょっと近寄り難いけど…」
「だよねぇ」
「すごい、頭が良くて」
「ああ、そんな感じする」
「それから、本当はすごく優しいんですよ」

それだけは確かだと、谷原は断言した。
すると矢野は"意外"というように目を丸くしたが、

「へぇ、そうなんだぁ」

と笑った。





「な~んか、変だよな……」

天井を睨みつけるようにして、串崎はふと独り言を呟いた。
彼が考えていたのは、諏訪と町田のことだ。2人の様子がどこかおかしいことに、串崎も気付いていた。いつもと変わらずバカな会話もするしふざけ合う彼らだが、何かがおかしいと。
諏訪は顔に出やすいので分かるのだが、町田も、何か様子が変なのだ。時折、1人でいる彼が何かジッと考えているところをたまに見かける。

「卓さん、なんか悩み事?」

ベッドの上で思案顔をする串崎に、麻生が不思議そうに布団から顔を出した。麻生はインフルエンザで寝込んでいた間は串崎と会えなかったのはもちろん、治ったら治ったで串崎の仕事が忙しくて会えず、明日は学校の創立記念日で休みということで今日久しぶりに泊まりにきたのだが、難しい顔で考え事をする恋人に怒りではなく心配が募り、ジッと見つめてくる。

「ん?何でもないよ」

笑顔で、串崎は麻生を抱きしめた。隣に自分がいるのに他のことを考える恋人を怒るでもなく、本気で心配そうになる彼を、やっぱり愛しいと感じる。そんな彼に、何の確証も理由もない疑問など、話したところで混乱させるだけだ。
何より、これはあまり周りに話してはいけないことなのではと、何となくだが感じてもいる。そしてそれは、当事者であろうあの2人だけしか知ってはいけないことのような気もしていて。だから串崎も、これ以上は考えるのをやめた。





「ただいま……」

皆藤がリビングの扉を開けて入ると、夕飯を作っていた町田が顔を出した。

「おう、お帰り~。お、何だ、映画観てきたのか」

パンフレットを入れた袋を見て指を差すと、皆藤も「そう」と頷く。

「でも、病み上がりでフラフラしてんなよ?」

ぶり返すぞ?そう言って笑顔を見せれば、皆藤は"はいはい"というように小さく首を上下に振り、着替えるために自室に入って行った。
今日は、皆藤は宇賀とも諏訪とも会わずに帰って来た―――それだけで、町田はホッとしていた。




「智司……」

ベッドの中。
いつものように、町田は皆藤を抱く。何も知らない顔で。

「祥……」

皆藤も、変わらず町田の名前を呼ぶ。町田とのセックスだけは、皆藤は相手の名前をきちんと呼ぶ。
町田との情事は、皆藤にとって今までの誰とのそれよりも最高の快感があって。相性ももちろんだが、お互いに自分たちが感じる部分をきちんと知っているために、しっかりとそれを与えることができる。この先も、彼以上に体の相性が良い相手は居ないと思える。
町田とのセックスだけは、皆藤は純粋に快感を追うことができる。彼が与えてくれる刺激を、素直に受け止めることが出来る。自分が100%信じている人間だし、彼が欲しいものを与えてあげたいから。
しかし……ふと脳裏に過ぎるのは、諏訪のこと。
彼とは、それほど抜群に相性がいいわけではない。刺激よりも、快感よりも、ただ優しくとだけ考えて自分を抱いてくる。町田も自分を優しく抱くけれど、同じくらいに刺激と快感をくれるから最高だと思える。だからどう考えても、諏訪とのセックスは物足りない。物足りないはずなのに……それでも彼との関係をやめない自分がいる。どうしても、彼の言葉を求めてしまう自分が……

―――違う…

求めてなどいない。これはただの気まぐれだ。
頭の中に浮かぶ1つ1つを全否定して、皆藤は動きを早めてきた町田にしがみついた。

「……ぁっ…祥…」
「……っ、智司」

達する瞬間、町田はやはり皆藤の名前を呼んだ。
その先の言葉は、呑み込んで。

"愛してる"

喉元まで出かかっているのに、音として出ることなく消えていくその言葉。皆藤が望まないから、言えない言葉。
そして目の前にいる皆藤は、自分の名を呼んでくれてはいるのだが、ときどき遠い目をする。本当は、それに気付いている。だが、町田はやはり知らないフリを続けている。
皆藤は、愛のあるセックスを求め始めている。諏訪に心が動いている。そのことに確実に気付きながら、それでも皆藤を手離せない。
何も気付かないフリをしながら体を繋げ続ける自分を、町田は初めて"汚い人間"だと思った。
しかし、笑って諏訪に渡せるほど、自分は出来ている人間ではない。今の町田に出来ることは、彼を繋ぎ止めることだけ。

"愛してる"

それを言ったら、何かが変わるのだろうか。それとも、全てが終わるのだろうか……。
何も考えたくなくて、町田は皆藤を強く抱きしめた。



シャワーに入り、2人で静かな眠りに付く。
夜中にふと目を覚ました皆藤は、そっと体の向きを変えると、自分を抱きしめたまま眠る町田の寝顔を見つめた。
出会って約5年半。いつでも自分の隣で支えてくれた町田。こうして今でも、隣に居て、自分を必要としてくれる男。彼のためなら、何だってしてやれる。

―――俺には、お前だけなんだ。お前が傍に居ればいい……

眠っていても美しい町田の寝顔をそっと撫でながら、心の中で呟く。
お前のためだけに生きているのだと。他には何もいらないのだと……自分自身に言い聞かせるように。


第20章へ進む

諏訪がライバルと知ってもいまいち緊張感のない態度の町田でしたが、今回はさすがにしっかりと宣戦布告しましたね。既にだいぶ劣勢ではありますが。だからこその焦りでしょうか。

F組のバカップル2組(ナベ×ハマ、王子×柊)のお初、いかがでしたか?メインシリーズ(POLYGONシリーズ)のお話に対して、こちらはけっこうサラリとHシーン流しちゃいましたが、ご満足いただけたでしょうか。あの2組にはこのぐらいのボリュームでちょうど良いのかな、と思った次第です。

ちなみに、皆藤と町田のHシーンって全然ないなぁと今更ながら気付きまして。19章ラストに、ちょこっとですが入れてみました。
物語の主軸である皆藤や町田がこれだけヤンチャにもかかわらず絡みのシーンがとっても少ないのは、彼らのキャラ的にあまり出さない方が良いのかも、と思っているためでして。周りから見ればミステリアスな関係性の2人なので、そっち方面もミステリアスにしてます。煙に巻いておきたいというか。アイドルはトイレ行かない、的な。…違うかな。

そして、さすがにちょっと何かおかしいって思い始めたのが、串崎。
彼が麻生からは"卓さん"て呼ばれてるということが判明しましたね。"卓(タク)"といえば、POLYGONシリーズでも拓郎というのが居ますが、そういえば奴も鈍かったですね。同じバンド内にカップルが居るのに、1年以上も気付かないという。そう考えると、キャラ的にも串崎って拓郎ポジションなんですよねぇ。決して意識してなかったんですが、結果的に"タク"同士でした。私の中で名前に"タク"がつく奴は鈍いっていう意識でもあるのかしら…

さてさて。
諏訪に惹かれながらも必死で否定する皆藤と、いろいろ知りながらも気付かないフリで皆藤を繋ぎとめる町田。この2人の行動が、今後の運命を左右していきそうです。貧乏くじモードを爆走中の町田ですが、彼にも何らかの一歩が必要ですよね。
そして完全出遅れ気味の宇賀、頑張れw

次回第20章は、年明けの1/5(火) 6時からスタートです。


本年も、ご訪問まことにありがとうございましたm(__)m
暗い話題の多かった2020年でしたが、来年こそは良い年になることを願うばかりです。
皆様も、楽しいお正月をお過ごしください。
年明けも引き続き『PERFECT BLUE』の連載から始まりますが、完結に向けて後半戦も頑張ります!
皆様のご訪問を心よりお待ちしております♪


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