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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
3幕-20:勝負の時

PERFECT BLUE 20-05

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「え?」

驚いて、諏訪が顔を向ける。他の生徒も、驚いて声の主を見た。言葉を発したのは、皆藤だった。

「皆藤?」
「勝ちたいんだろ?俺が行く」

もう一度、皆藤ははっきりとそう告げる。そして、ゆっくりと立ち上がった。
皆藤が試合に出ると自分から言い出したことで、諏訪も生徒たちも思考がショートしてしまい、唖然とするばかりだ。
その中で、真っ先に立ち直ったのは木下だった。

「じゃあ、この5人でいこう」

ニッコリ笑って、元気に声を出す。
すると諏訪もやっと我に返り、笑顔を見せた。

「そうだな。じゃあ、頑張って」

諏訪の言葉に対し皆藤は無言のまま上着だけを脱ぐと、Yシャツの腕をまくりながら試合の輪に入って行った。



「んあ??」

昼休み明け、再び試合を観にきていた町田は、その光景に目を見開いた。そこには、5人の輪に入って試合に出て行こうとする皆藤の姿があった。

「ラスボスのご登場か……」

小さく呟きながら、町田はフッと笑った。



「智司……?」

試合コートに入ってくるその姿に、既にコートに入っていた宇賀は思わず驚きの声をあげた。周りで観戦している生徒たちも、宇賀のクラスメートたちも、驚いて見ている。

「………」

皆藤が、無言で宇賀に視線をチラリと向けた。

“負けねぇぞ”

瞳が、そう言っている。

「受けて立とうじゃん」

呟きながら、宇賀は小さく笑った。。


ピーッというホイッスルとともに、3年F組のボールで後半戦が始まった。
少し後ろに下がっていた皆藤がスッと、ボールの動きを見ながら走り出す。ボールは、皆藤の読みどおり、宇賀の手元に渡った。
その時、2年F組全員、相手の3年F組全員、そしてギャラリー全員が唖然とした。

「ウッソ……」
「マジ…?」
「どういうこと?」

誰からともなく、そんな呟きが次々ともれる。
皆藤は宇賀の動きを見事に制し、次々とゴールを決めているのだ。中距離から遠隔のスリーポイントまで、皆藤が放つショットは見事にネットへと吸い込まれていく。

「何アイツ……メッチャすごいやんか」

ベンチで試合を見ていた桜沢が、唖然としながら言葉を吐く。このクラスの生徒たちは皆藤が運動をしているのを見たことがないので、彼のスポーツ能力など全く知らなかったのだ。

「すげぇな」

諏訪も、それしか言いようがない。
ふと、隣にいる相手チームから視線を感じた。串崎だ。彼は、目を丸くして驚いたように諏訪を見てきている。それから、笑うしかないとでもいうかのように笑みを見せた。“信じらんない”と、その顔が言っている。

町田は、試合をジッと見つめていた。
思い出すのは、遥か昔。まだ、出逢って半年ぐらいのころ。

『祥、バスケしよ。俺、けっこう得意なんだ』

当時住んでいたアパートの近くの公園にバスケットのゴールがあって、皆藤がそんな風に誘ってきた。町田が中学校の途中までバスケ部に所属していたことを知って、自分も小学校時代に入っていた事があるからと、勝負を挑んできたのだ。
皆藤の体力作りのためにもと町田は皆藤の挑戦を受けて立ったものの、力の差は歴然としていて。せっかくなら互角の力で闘いたいからと、町田はその日から皆藤にバスケットを教えてやるようになった。皆藤はみるみるうちに上達し、体の成長や健康面の改善も相まって、あっさりと町田は追い越されてしまった。
しかしそれでも、町田は皆藤とのバスケが楽しかった。仕事と勉強に追われる毎日の中で、心も体もリフレッシュできる時間だった。楽しそうに笑う皆藤の笑顔が、ブリリアント・ストリートで“レクター”と呼ばれるているようには思えないほど中学生らしくて、とても大好きだった。今のマンションに越して来て以来やらなくなってしまったが、今も町田にとって、あの街に居た頃の一番の思い出だ。
そんな、あの日の皆藤を思わせる姿が、もう二度と見ることは出来ないかと思っていた姿が、町田の目の前で実現していた。笑顔はないものの、コート上皆藤の姿は輝かしく、そしてこの会場全体を盛り上げている。

「皆藤くん!」
「皆藤~!行け~!」

2年F組は、気がつくと皆藤に声援を送っていた。コート上でも、普段は皆藤に声をかけることを思わず躊躇ってしまう武藤や秋本も、

「皆藤!」

という言葉と共に彼にパスを繰り返す。いつも“皆藤くん”と呼んでいることも忘れて。それほどに皆藤を、近くに感じた気がしたのだ。
皆藤は期待通り、誰のディフェンスも上手に交わしてシュートを決めていく。それはシュートだけでなく、ゴール下を守る秋本を始め仲間へのパスも絶妙だ。言葉は発していなくても、皆藤が2年F組の司令塔となってボールをコントロールし、3年F組主導のはずだったゲームを撹乱しているのは明らかだった。気がつけば、前半終了時には20点近くあった差が、開始5分で一桁差にまで縮んでいた。

「アイツ…やっぱすげぇな。感覚全然鈍ってねぇじゃん」

3年F組のメンバーが、息をきらしながら宇賀に近寄る。クラスメート時代、授業でバスケットをやった時の衝撃を覚えていたようだ。
だが宇賀は、何も言わなかった。ただ、ボールを、皆藤を追いかけることだけに集中した。

『智司、今日は負けないよ?』

同じクラスのとき、それが宇賀の決まり文句だった。
放課後この体育館で、上着だけ脱いだ制服姿で2人して駆け抜けたあの日。月に2~3回そんなことをしては、負けた方がジュースを奢って。奢るのは、いつも宇賀の役目だった。小中学校時代に所属していたバスケ部では常にレギュラーとして活躍していた宇賀だったが、皆藤にだけは勝てなかったのだ。それでも、負けてばかりでも、楽しかった思い出。ボールを追いかけながら、ずっと笑っていた気がする。

『はい、智司く~ん、パスパス』
『ハハ。バーカ』

優しくて美しい、純粋に楽しかっただけの思い出。固い友情だけが2人を繋いでいた、あの頃。懐かしさで、周りの音が聞こえない……

―――智司、今日は負けないよ

あの日の自分の決まり文句を、心で呟いて。
宇賀は、あの日の自分に帰った錯覚を起こしたまま、ここには皆藤と自分の2人だけしかいないような錯覚を起こしたまま、試合に臨んでいた。

その後試合は皆藤と宇賀をそれぞれ中心として何度かメンバー交代をしながら、じわりじわりと点差の縮まる展開となっていき……終了間近を迎える頃には、2年F組が2点差まで追い上げていた。

「あと1ゴールか……」
「あと何秒?」

ベンチの生徒たちが、時計とスコア表を睨む。すでに、残り5秒を切っている。
ボールは、2年F組からは一番遠い、相手側のエンドライン。ボールを木下からパスされた真鍋だが、完全に動きを封じ込まれていた。

「ナベ!」

ベンチの生徒も諏訪も、彼らの応援に回ったらしき別のクラスの生徒たちからも、声があがる。だが、真鍋のすぐ近くに宇賀が接近してきていていた。
宇賀に取られてしまえば、逆に点を入れられてしまう可能性が高い。誰もが息を呑んで、コートを見つめていた。
すると、真鍋同様にディフェンスに固く動きを封じ込まれかけていた皆藤が、隙を狙ってスッと動き出した。そして敵の輪から抜け、センターラインへと走り出す。それを、真鍋も見逃さなかった。

「皆藤!頼む!」

真鍋は、皆藤に全てを賭けて、強くボールを投げた。敵チームが一斉に、皆藤へと向かって走り出している。
彼らが辿り着く前に無事ボールをキャッチした皆藤は、時計を見た。そして残り時間が1秒しかないことを確認すると、その場でボールをゴールに向けて高く飛ばした。

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