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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
3幕-20:勝負の時

PERFECT BLUE 20-06

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センターライン付近から高く舞い上がったボールは、ゴールへと何の狂いも無く真っ直ぐと延びていく。全員の視線が、ボールに集中した。

ピー!!

試合終了のホイッスルと共に、ボールは綺麗にゴールネットを突き抜ける。
一瞬、時が止まった。館内が静寂に包まれる。
スコアに追加される3点。2年F組の逆転優勝だ。
その瞬間、ベンチに居た生徒たちが一斉にコートに飛び出した。皆藤の劇的な逆転ブザービーターにギャラリーも歓声をあげ、館内はとてつもない盛り上がりを見せている。

「すっごい!3-Fに勝ったで!!」

信じられへん!と桜沢が叫びながら、側に来た浜島にガバッと抱きつく。浜島も、コクコクと頷きながら桜沢を受け止めた。

「勝った。勝ったよ先生!!」

麻生と藤崎が、諏訪の腕を掴んで満面の笑みを見せる。

「ホント、勝ったよ。勝っちゃったよ」

マジかよ~と、諏訪も笑いながら周りの生徒たちに呼びかけた。
試合に出ていた生徒たちも、抱き合って喜んでいる。

「皆藤~~!!お前すっげぇよ!」

木下が興奮しながら、劇的シュートを決めたにもかかわらず冷静沈着な皆藤を抱きしめた。最後にパスをした真鍋も、皆藤に抱き着く。交代でベンチに下がっていた武藤や秋本も駆け寄り、木下や真鍋越しとはいえ皆藤を抱きしめる。周りの生徒も彼らを囲んだ。

「すごいね、皆藤くん。勝っちゃったよ!」
「ホンマや。皆藤、俺は信じてたで?お前ならあそこからでも決めてくれるって」.
「その割に留加、最後皆藤の邪魔になるとこ居ったけどなー。ま、それでも俺は皆藤にパスするって最初から決めとったけど」
「ハハ。ナベ、すっごい後付け~~」
「皆藤くんが走ってくれたからパス出せたくせに」
「っさい」
「でもすごい。2年連続優勝の3-Fに勝ったんだよ?しかも、あんな大差だったのに!」

皆藤を囲んで、全員が興奮状態。
試合終了の挨拶をするために一旦12名全員が整列して、3-Fの生徒たちと向かい合う。それから両者とも健闘を称え合うように、その場で握手や言葉を交わし始めた。

「汚いぞー、諏訪」

後ろから声がして、諏訪は振り返る。そこには串崎がいた。

「あんなラスボス、決勝戦の後半まで温存しとくなんてさぁ」

やっぱり腹黒だ、と諏訪の肩を抱きながら、串崎は笑っている。

「なあ、今度はエキシビジョンで職員対抗マッチっていうのも入れてもらお?俺、経験者」

そう言いながら2人の肩を抱いてきたのは、いつの間にか傍に来ていた町田。

「ホントさ、見てたら自分までやりたくなるぐらい、面白い試合だった」

猛追した2年F組だけでなく、戦意を失くことなくギリギリまで踏ん張って耐えた3年F組も大したものだと、町田は両者を称える。3連覇などさせてたまるかという挑戦者の意地と、簡単にこの座は渡さないという王者のプライド、それがあの後半戦に集約されていたと。
そんな町田の言葉に、負けた3-Fの生徒たちも頷いている。

「確かに、すげぇ興奮したよ。なんかドラマみたいな展開っていうかさぁ。負けて悔いなしだわマジで」

悔しさよりも、感心してしまったようだ。試合観戦していたギャラリーの生徒たちも、外で行われる閉会式に向けて体育館を出て行きながらも、試合の興奮冷めやらぬ様子でワイワイと騒いでいる。
いつの間にか、そこには2、3年のF組と教師トリオだけが残っていて。会話は盛り上がる一方だ。
ふと町田は、そこに皆藤が居ないことに気付いた。視線を向ければ、すでに彼はベンチに戻り、脱いだ上着を手にするところで。皆藤は、いつの間にか気付かれぬようにするりと抜け出していたのだ。
町田の視線を感じたのか、皆藤がチラリと顔を向けてくる。町田は、呆れたように、しかし優しく笑いかけてやった。

「皆藤がホンマに……」

後半10分間フル出場した真鍋が、同じくフル出場した皆藤の動きのすばらしさを語ろうとして、隣にいたはずの皆藤が居なくなっていることにようやく気付いた。
真鍋の表情で、他の生徒たちも気付いて辺りを見回す。
諏訪は、その中でひとり冷静な町田に気付き、彼の視線の先に皆藤の後ろ姿を見つけた。

「皆藤!」

慌てて、皆藤を呼び止める。皆藤は立ち止まると、少しだけ振り向いてきた。

「どこ行くんだ?」

閉会式まではまだ少し時間があるし、みんなと一緒に行けばいいという意味を含めて。
しかしそれを皆藤が受け入れるわけもなく、また体の向きを変えるとさっさと出て行ってしまった。

「ったく、アイツは…」

試合が終わった途端またこれかと、木下が苦笑いをする。
あと一歩のところで踏み込んでくれない皆藤が、自分たちに踏み込ませてくれない皆藤が、彼を始め2年F組の生徒たちにはもどかしかった。
そしてそれは、皆藤と数か月だけとはいえクラスメートだった3年F組の生徒たちにも伝わったようで。

「今なら、皆藤とまた話せる気がしたんだけどな……」

この一丸となった空気を、作ってくれたのは彼なのだからと。

「アイツが笑うとこ、もう1回見たかったな……」

自分たちが卒業してしまうまでに…と。そんな言葉が、ポツリポツリとこぼれだす。
それを宇賀は黙って聞きながら、

「俺たちも、早く出よう?閉会式始まっちゃうよ」

しんみりとしてしまった空気を変えるようにまた笑顔と明るい声で、生徒たちを促した。


体育館を出て行く生徒から少し離れて、諏訪と串崎と町田は歩いていた。

「さすがにこの輪の中には居られなかったかぁ」

串崎が、残念そうに呟く。

「まあでも、ここまでやるようになっただけでも大したもんだよな?」

彼がまさか試合に出てくるとは思わなかったと、諏訪の力やクラスメートの呼びかけあってこそなのだろうと、串崎は妥協の結論を出したのだが、

「何言ってんですか。これが当然にならないとダメです」

はっきりと、諏訪が断言した。

「みんなは普通にやってることなのに、皆藤がやったら大したもんだとか、そこで境界線を作ってはいけません」
「諏訪?」
「皆藤は、臆病です。いつだってマイナスなことばっか考えて、何も踏み出そうとしない。
これまでの人生で彼はそのぐらい辛い思いをしてきたのかもしれないけど、だからってそれにしがみついてばかりいてはダメです。怖くても、踏み出す勇気が必要です。
だから俺はアイツを甘やかさない。甘やかすのは本当の優しさじゃないです。今日の彼を誉めるのは活躍したことに対してだけであって、試合に出たことじゃありません」

諏訪の口調は、静かだけれどとても強かった。
彼のこんな意志の強さが、今まで皆藤をたくさん助けてきたのだ。皆藤をここまで、変えたのだ。そんなことを、町田も串崎も痛感していた。

「そうだね。“優しさ”の意味をはき違えちゃいけないよな?」

町田が同意を示し、串崎も「そりゃそうだな」と大きく頷く。
諏訪が担任でよかったと、町田は素直に感じていた。
しかし、一方で強く沸き起こるのは、“彼に敵わない”という思い。皆藤が彼に惹かれる理由が、悔しいけど分かる。
自分が望んだ形で皆藤が変化を始めている反面、その変化と共に待ち受けるのは、自分が望んでいない結末のような……町田には、そんな気がしてならなかった。

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