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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
3幕-22:究極の選択

PERFECT BLUE 22-03

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「何考えてんの?」

昼休みの学食内。食事に殆ど箸をつけずに物思いにふける皆藤に、宇賀は声をかけた。
金曜日のバスケ大会以降、皆藤とは全く連絡がつかないままで、やっと会えたと思ったら、皆藤はいつも以上に心ここにあらず。事情を知らない宇賀にとっては、理解不能だ。

「何も」

皆藤は素っ気なく言い返し、思い出したように食事を再開する。しかし、やっぱりすぐに箸を止めてしまった。そして、トレーごと宇賀に押し付けてくる。

「何だよ」
「食って」
「は?」
「もういらない」
「"もう"って、2口ぐらいしか食ってないじゃん」
「るせぇな。さっさと食えよ」
「ダメだよ、きちんと食べないと。だから体弱いんだぞ」

細身の割に大食漢の宇賀だから2人分ぐらいは食べられるのだが、今までも、皆藤が食べ残した物を貰うことは年中だったのだが、殆ど食べていないままで貰うわけにはいかない。だから宇賀は、少し叱りつけるような口調でトレーを戻した。

「ちゃんと食え。食べ終わるまで、ここから動かさない」
「小学生の給食かよ」
「そうだよ。習っただろ?ちゃんと食べないと大きくなれません、って」
「俺の小学校ではそんなこと言われなかった」
「うるさい。口答えばっかするんじゃない。本当に食べないつもりなら、俺がここで食べさせるぞ。"あ~ん"ってね。それでもいいの?」
「………」
「嫌なら食べなさい」

宇賀らしい強引な発言をされて黙ってしまった皆藤に、宇賀はニッコリ笑った。宇賀の場合は本気でそんなことをする恐れがあるため、皆藤も仕方なく箸をつける。
渋々と彼が食事を再開したのを見届けて、宇賀も食事を再開した。そして、話題を戻す。

「何かあった?」
「……何が」
「トボけるんじゃないよ。さっきからずっと考え事してる」
「………」
「一昨日も昨日も、一日中電話繋がらないし。すっごい心配したんですけど」

皆藤の電話が繋がらないことなんて、年中ある。だが、2日間も、しかも一日中電源が切れているなんて初めてだったのだ。
心配で心配で、インターネット上で確認した第一志望校の合格も、皆藤との連絡が取れないことの方が心の中を占めていて、全く嬉しくなかった。あんなに行きたかった大学で学部なのに、どうでもいいと思えるほどに。

「たとえ何かあったとして、お前がそういうの話せるタイプの人間じゃないとは分かってるけどさ。でも、親友の俺に何も話してくれないなんて、俺は淋しいよ。やっぱりお前にとって俺は、そんなに信用ないわけ?」

こんな発言は今までしたこともなかったけれど、どうしてもそんな考えが浮かんでしまう。そんな言葉を吐いてしまう。
昔のように彼が自分を信頼してくれなくなったとして、素っ気なくあしらわれ続けたとして、そこにきちんと自分を認めてくれる彼の思いがあることを、宇賀は感じていたのだ。しかし、ここまで様子がおかしくなるほどに悩んでいることを、何も話してくれないし誤魔化そうとする彼に、大きな壁を感じてしまった。自分は彼になら何でも話せるし、彼だってその度に何かしら救いをくれるのに。
自分が彼に言えないことと言えば、彼を愛しているということだけ。そしてそれが一番大きな悩みかもしれないが。

「俺は、お前の支えにはなれない?俺は、やっぱりお前にとって親友じゃないのか?」

その言葉に、皆藤は何も答えなかった。
しかしそれは、"否定"の沈黙ではなく。彼なりに、宇賀を親友だと再び感じてくれていることの表れ。それを感じ取った宇賀は、少しだけ安堵を覚えた。

「宇賀……」

沈黙を破り、皆藤が口を開いた。箸は、やっぱり止まってしまっている。

「何?」

宇賀も箸を止めて、彼を見つめた。
少しだけ顔を上げて自分を見つめてきた彼から読み取れる表情は、自分への謝罪。

「悪いけど、今は何も訊かないでくれないか」
「智司……?」
「今は、考えるだけで精いっぱいだから」

その言葉は、何かがあったことをきちんと肯定していた。
誰にも心を開かなくなって以来、初めて皆藤が宇賀の真剣な言葉を流さずに答えてくれた。皆藤の身に何かが起こり、それに気付いた宇賀に、誤魔化さずに本心を告げたのだ。今は、自分が考えるだけで精一杯だと。
きっとそれが、皆藤の紛れもない本心なのだろう。宇賀はそう理解した。彼の表情が、全てを物語っていたのだ。だから宇賀も、それを受け止めてやることにした。

「そのコロッケ、貰ってもいい?」

ニッコリと笑って、彼の皿を指す。すると皆藤も少し笑みを見せて、

「食えよ」

とトレーごと差し出した。

「コロッケだけでいいってば」

笑いながら、宇賀はトレーを戻した。



食事を終えた2人は、そのまま並んで廊下を歩いていた。宇賀の教室は学食と同じ1階なのだが、3年生はすでに午前中のみの授業になっているため、皆藤を教室まで送ろうと2年F組の教室まで一緒に歩く。
しかし、階段を上りかけて、皆藤がそのまま真っ直ぐ歩いていることに気付いた。

「どこ行くの?教室戻るんじゃないの?」

慌てて彼に追いつき、腕を引いてみる。だが、皆藤は歩き続けている。

「智司」
「教室戻るんだよ。当たり前だろ」
「だって、階段…」
「………」

その言葉に、皆藤は何も答えない。そして、その先にある階段を昇り始めた。皆藤は敢えて、手前の階段ではなくて先にある階段を利用したのだ。

「何遠回りしてんの」
「食ったら運動だろ」
「は?」

すんなりと彼が言い返してくるので、「お前がぁ~?」と宇賀は思わず笑った。
2階に着いて、2年F組へ向かって歩き出す。
しかし突然、皆藤の足が止まった。

「おおっと…」

少し後ろを歩いていた宇賀は、いきなり立ち止まった彼にぶつかりそうになって足を止めた。

「どうした?」
「………」
「智司?」

宇賀の声も聞こえないのか、皆藤はジッと前を見据えたまま立ち尽くしている。宇賀も、皆藤の視線を追った。
そこには、保健室から出てきたまま、皆藤と同じようにジッとこちらを見て立ち尽くしている町田がいた。
何とも言えない空気が、そこに漂っていて……
そして宇賀は、理解した。皆藤が敢えて遠回りした理由を。
手前にある階段を通ると、どうしても通らなければいけない場所がある。それは保健室だ。皆藤は保健室を通りたくなくて、町田と顔を合わせたくなくて、遠回りをしたのだ。

2人と顔が合った町田が、小さく笑みを向ける。
しかし皆藤は、その笑顔から逃れるように教室へ入って行った。
町田の笑みが少しだけ、しかし明らかに歪む。そして彼もその場を去って行った。
宇賀は、そんな2人を交互に見つめていた。
学食で皆藤が様子がおかしかった理由が、やっとわかった。町田と皆藤の間に、何かがあったのだ。
そしてそれは、皆藤が苦しい表情で頭を混乱させるほど、深刻なもの―――

「………」

教室の入口で無言で立ち尽くしたまま、宇賀は、自分の席で窓の外を眺めている皆藤の何ともいえない表情を見つめていた。

皆藤は、再び大きな罪悪感を感じていた。
町田をどうしても避けてしまう自分、あからさまに彼に対して顔をそむけた自分。町田にだけは、どんな言葉にも行動にも応えなかったことは無いのに。初めて彼に顔を背けた。また彼を、傷つけてしまった……。

「お前、どないしたん?顔色悪いで」

隣の席の真鍋が、心配そうに声をかけてくる。桜沢も、皆藤のいつにない空虚な表情を気にして見つめてくる。木下も石原も、同じように見つめてくる。その全ても、今の皆藤には痛いほどに苦しかった。
自分は心配される権利などないのだから。町田をこれほどまで傷つけて、勝手に罪悪感に苦しむ自分など……
だから、

「何が?俺はいつもどおりだけど?」

平気な表情で、淡々とした声で、皆藤はそう答えるしかなかった。

そして。
そんな緊迫した状況のまま、時間は着々と過ぎていった―――

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