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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
3幕-22:究極の選択

PERFECT BLUE 22-04

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[2]

「答案用紙と問題、ちゃんと回ったか?」

諏訪は、そう声を発した。
3月を迎えて間もなく始まった学年末試験も、今日が最終日。最後の数学の試験は、諏訪が2年F組の試験監督だ。

「じゃ、始めていいぞ」

チャイムの音と共にそう告げると、生徒たちが試験を開始した。
教卓に座った諏訪は、いつもとは違って真剣な生徒たちの表情を眺めながら、ふと、皆藤のところで視線を止めた。
皆藤は、まるで授業中のように、淡々とした表情で問題を解いている。彼には、試験への緊張感など皆無のようだ。数学の問題すら、決してペンを止めることなく、何度も消しゴムで消すこともなく、スラスラとペンを走らせている。どこも危なっかしい表情はない。
それでも彼の表情がどうしても気になってしまうのは、ここ最近の彼が様子がおかしいからだ。
皆藤はいつもどおりに登校し、いつも通りに授業をこなし、いつもどおり宇賀やDOQの連中と行動をしている。クラスメートに話しかけられればそれなりに答えてもいる。
だが、諏訪とあまり会話をもたなくなった。"おはよう""さようなら"程度の挨拶はするのだが、それ以上の会話をしようとしない。しかしもちろん、無視をしているわけではなく、話し掛ければ答えてくるし、拒絶するような素振りはみせない。どちらかというと、自分に対してそんな態度をとることをすまないと思っているような表情をしてくる。それが自棄に気に掛かるのだ。
そして皆藤は、諏訪の"誘い"を全て断ってくるようになった。

『何があった?』

一度だけ、体育をサボって教室にいる皆藤を見つけて、泊まっていったあの日マンションに忘れていった彼の眼鏡を返しがてら、諏訪はそう訊ねたことがある。そのときも皆藤は、俯いたまま何も答えようとしなかった。ただ一言、

『ゴメンな、先生』

それだけ言って、教室を出て行ってしまった。その背中がとても淋しくて、どうしても呼び止められなかった。
そして諏訪にとってもう1人の気がかり、町田の反応も変わらない。あからさまに自分を避けてくる。それでもどうしても居合わせてしまうと、ぎこちなく笑って『よぉ』とだけは声を発してくれるのだが、スッと自分を通り過ぎてしまう。その笑みも、とても苦しそうで。
ここ最近、皆藤と町田が、明らかにおかしい。そしてそれは、自分が大きく絡んでいるように、諏訪には思えて仕方ない。2人とも、自分を避けてくるのだから。
あの2人は、自分に関することで大きな衝突をしたのだろうか。考えれば考えるほどそうとしか思えなくて、諏訪は日に日に胸騒ぎが強くなっている。そしてその時、皆藤は一体、どんな言葉を発したのだろう……と。
悶々とそんなことを考えている内に、時間はあっという間に過ぎていった。




「こんにちは」

今日もノックなしでガラリと保健室のドアが開いて、宇賀が現れた。

「あれ?3年って休みじゃねぇの?」

遠慮なく入ってくる宇賀に、町田は首を傾げる。学年末試験のない3年生は、試験中は休みのはずだ。

「休みだけどね、どうしても話をしたい人がいるから」

そう言って、宇賀は町田を指差す。小さく微笑んでいるものの、彼の瞳は真剣だ。

「俺に?何の話?」
「大事な話」
「だから何の…」
「智司と、何があった?」

宇賀は町田に歩み寄りながら、単刀直入にそう言った。
皆藤の名前に、町田はさっと表情が変えて俯いた。

皆藤は、あの日以来、一度も保健室に現れない。
帰りも遅く、リビングで帰りを待っていた町田と顔が合うと、少しだけ笑みを見せる町田にぎこちなく微笑んで、しかしすぐに俯いて自室に入ってしまう。そんな彼に何もかける言葉がなくて、動けなくなって、町田も皆藤と接することが出来ないままだ。
あれから2週間近くが経つが、皆藤はあの話を保留にしたまま何も決断を示さない。自分たちを見て戸惑った表情を隠せない諏訪を見ていれば、一目瞭然。皆藤は諏訪に何も話していないのだろうと、町田は確信している。
そしてそんな2人の様子に宇賀は痺れをきらし、こうして現れたのだ。

「2人して、そんな風に辛そうな顔して。先生、何を話したの?アイツに何を言ったの?」

宇賀の言葉は相当強いのだが、そこには心配そうな色だけが溢れている。しかしそれでも、町田は答えられなかった。
宇賀は、自分や諏訪と同様に皆藤を想う1人。だが、宇賀は皆藤が自分のものにならなくても決して手離すつもりがないことも、町田は知っている。そんな彼に、今の自分が説得する自信がない。諏訪に渡してやれと、言える勇気がない。

「………」

町田はただ、沈黙を通した。
宇賀は、彼が答えないのを感じると、溜め息をつきながら長いすに腰掛ける。

「智司、最近誰とも会ってない」

それは何となく、町田も分かっていた。帰りが遅いけれど、誰とも会っていないのだろうと。自分と会うのが気まずいから、決断が出せないから、だから諏訪か宇賀と会うだなんてことを、皆藤が出来るわけがない。そのことで町田と話をしたのだから。

「昼飯ぐらいは一緒に食うけど、放課後は一切会ってくれない。俺とも、諏訪先生とも、誰とも会わずに帰ってる」
「………」
「先生とは、どう?放課後まっすぐアイツが下校して、毎日一緒に過ごしてるわけ?」
「………」
「そんなわけないよね。こんな風に、互いにぎこちない空気なんだから。こっちが気まずくなるぐらいに」

ここ最近、皆藤が敢えて1人でいようとしている。そこに大きなヒントがあると、宇賀は思っていた。
宇賀とも諏訪とも、そしてきっと町田とも、皆藤は距離を置いている。それはまるで、誰か1人を選べずに全員と一線を引いているかのように見えるのだ。

「アイツにどんなこと言ったか知らないけど、アイツが決断出来ないようなこと、言っちゃったみたいだね」

町田が皆藤にどんな話をしたのか、宇賀は何となく気付き始めている。本当は今日も、確認のために来たようなものだった。そして皆藤が、誰か1人を選ぶとして、誰を選ぶだろうかということも。
しかし、それでも皆藤が諏訪を選べず、こんな風に悩んで1人でいようとするのは、それだけ町田が彼に大切に思われているということで。2人がどんな風に始まったのかは宇賀には分からないが、皆藤が町田を誰よりも大切にしてきたことは、これからも大切な人だと考えているだろうことは、確実なのだ。

「複雑だね、2人は……」
「………」
「2人が最初から愛し合えてれば、俺もこんな気持ちに悩むこともなかったかもしれないのに」
「………」
「そこまでお互いを大切にしてるのに、どうしてアイツは、先生をそういう意味で愛せなかったんだろう。何が足りなかったのかな」

宇賀は、皆藤にとって町田が世界で一番大切な存在であるのだと、確信している。だがそれが"愛"なのかと訊かれれば、正直答えられない。皆藤の想いに名前をつけるならば一体何なのか、それが宇賀には分からなかった。

「苦しいね、先生」

思わず、苦笑いが出てしまう。あそこまで大切にされても他の男に惹かれていく皆藤をどんな気持ちで見ていたのかと思えば、宇賀もさすがに町田が気の毒になってしまったのだ。
町田も小さく苦笑いをしたものの、言葉無いまま俯いてしまった。

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