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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
3幕-22:究極の選択

PERFECT BLUE 22-10

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諏訪は、3時を過ぎても眠れずにいた。ベッドに横になってはみたものの、眠れない。
諏訪が考えているのは、たったひとつ。
何かがおかしい―――と。
何か自分は、大きな見落としをしている気がする。諏訪には、そう思えて仕方なかった。

『慎が好きだよ』

夕方の海辺で、キスの後、皆藤はそう言ってくれた。
そして自分は、彼を抱きしめた。彼の言葉がとても嬉しくて。
それなのに……

『でも―――』

皆藤はその後、絶望的な言葉を吐いた。

『俺はアンタを選べない』

諏訪に抱きしめられたまま、皆藤はポツリと、しかしはっきりとそう告げたのだ。

『なんで……?』

彼が離れないように腕を強めて、問い掛けた。しかし皆藤は、

『俺は、慎のところには行けない』

静かだけれど意志の強い口調で、そう言い切った。理由は答えてくれなかった。
諏訪を選ぶことは出来ない。諏訪のところには行けない―――それは、この関係を終えるということを意味している。
しかし諏訪からすれば、このままで諦めるわけにいかないというのが本音だ。理由のないまま離れることなど、出来るわけがない。そんな簡単な気持ちではない。
だから、諏訪は何も答えなかった。彼をいつもの場所まで送り、去っていく彼の後ろ姿を見つめることしか出来なかった。
彼の本音が見えない。それが諏訪を混乱させたのも事実。だがもっと違う"混乱"が、皆藤の背中を見ているうちに沸き起こってきたのだ。
それが、諏訪自身の何かしらの混乱なのか、それとも皆藤の混乱が伝播したものなのか。そこまでは分からなかったが、そこに皆藤の本音が隠されている気がしてならなかった。
もしかしたら皆藤すら気付いていないかもしれない、本音が……





宇賀は、5時近くに一度目を覚ました。
寒いトイレで肩を竦ませながら用を足して、足早に自室へ戻る。ベッドに入り布団に潜り込もうとして、時間を確認しようと枕元のスマホを手に取る。ロック画面が表示されたことで、着信を知らせる通知に気付いた。
またワンギリか何かだろうか。そう思いながら、眠い目をこすりながら履歴画面を開く。そこには、

【不在着信 皆藤智司 録音メッセージあり】

「智司?」

皆藤が宇賀に電話をかけてくることなど、2年半前の事件以来初めてだった。
履歴の詳細を開けば、彼からの着信は3時少し前。
この時間に、しかも自分から電話をくれ、さらには留守電メッセージを入れたぐらいだから、よっぽどの用なのだろうと考えた宇賀は、すぐに思い当たった。
それは、昼間の学校での出来事。宇賀が告げてしまった、今まで隠し続けてきた想い。あの会話の後、諏訪との"進路面談"があるという彼とは教室で別れたままだ。
あの話に関することかもしれない。決断を迫られている皆藤だけに、あの返事をしてきたのかもしれない……そんな予想をすれば"聞きたくない"という気持ちが沸き起こってきたものの、それでも皆藤からの貴重な電話を無視することは宇賀にはできなくて。恐る恐る、録音メッセージの再生ボタンをタップし、そっと耳に押し当てた。

『言い忘れてたことがあるから、忘れないうちに電話した』

いつもの、淡々とした声が聞こえてくる。

『第一志望、合格おめでと。ずっと目指してたとこ、行けて良かったな。じゃあな』

そこで、プツリとメッセージは切れた。

「………」

宇賀はスマホを握り締めたまま、呆然としてしまった。
自分の大学合格を祝うために、皆藤は電話をしてきた。昼間の会話など、全くなかったかのように。
皆藤は、宇賀があの大学を1年生の頃から目指していたことも、きちんと覚えていてくれた。年がら年中言っていたわけでもないのに、きちんと。
それは、何の交じりもない、親友としての、相棒としての行為。かつて自分たちが育んだ友情を思わせるような、皆藤の言葉だった。
皆藤のことだから、決して昼間のあの話を無かったことにするつもりはないだろうことは、宇賀は分かっている。2人の互いへの感情に相違がある場合、かつての友情は成り立たないと、彼は分かっているはずだ。
それでも皆藤は、友情を示してきた。きちんと自分に言葉をくれた。それが意味するものは、彼なりの"最後の友情"―――

「最後まで優しすぎるよ……」

スマホを握りしめて、宇賀は布団にもぐり込んだ。
皆藤の優しさが、自分を友人として大事だと思ってくれている気持ちが、あまりにも痛くて。
こんな感情さえ自分が抱かなければ……なんて、思ってもどうしようもないことまで考えてしまっていた。





「……ん…」

朝の光で、町田は目が覚めた。
時計を見ると、10時過ぎ。昨日あれからもなかなか寝付けなかったせいか、少し寝過ごしてしまったようだ。
今日から学校は試験休みで生徒も来ていないし、町田も特にやるべき仕事はないため、今日から有休をとっている。そこにはもちろん、皆藤との結果を見据えた町田が、彼の引っ越し準備やら諏訪への話やらで忙しくなることを予想してのこともあった。

「メシ食うか…」

皆藤ももう起きているだろうかと思いながら、町田はベッドから降りて寝室を出た。
リビングは、電気が消えたままで静まり返っている。どうやら皆藤は、まだ眠っているらしい。ここ最近ずっと寝付けなかった分、寝入っているのかもしれない、寝かせてやろうと町田は思った。
1人分の朝食ならばトーストと牛乳で済ませようと、キッチンに向かう。
歩きかけて、ふと、ダイニングテーブルの上にメモが置いてあることに気付いた。ここ最近、皆藤が頻繁にする書き置きだ。
皆藤は昔から、町田に黙って出かけることをしない。学校がある日は『先に行ってる』、ない日は『出かけてくる』等、きちんと報告をしてくれる。町田が居るときならば口頭で、傍に居ないときはスマホのメッセージで、自宅に居るけれどまだ町田が眠っているときはメモで。だから、ここ最近気まずい状態が続いていても、ちゃんとその習慣を守っていたのだ。皆藤は、町田を無視することだけは決してしないから。
今日は、一体どこへ行ったのだろう……冷蔵庫でパックの牛乳を手にしながら、町田は小さく溜め息をつく。やっぱり、自分と一緒に居るのが気まずいと思ったのだろうかと。しかし昨日ちゃんと向き合って話をしたのだし、それは無いだろうと、すぐにその考えは打ち消した。

"出かけてくる"

きっとそう書かれているだろうメモを見るべく、コップに注いだ牛乳を飲みながらダイニングに戻った。
もしかして、諏訪に話をしに行ったのだろうか―――そんなことを考えて思わず落ち込みそうになる自分に苦笑いをひとつしてから、メモを手に取る。
そこに書かれた文字が目に入った瞬間、町田の手から、コップがスルリと落ちた。


"今までありがとう。1人になる。じゃあな"


転がったコップから牛乳が零れ、フローリングに広がる。しかし町田は気にすることなく、慌てて皆藤の部屋のドアをあけた。
そこには、学生服も、カメラも、服も、眼鏡も、コンタクトのストックも、パソコンも残っていた。ベッドの上にはスマホも。
しかし、皆藤の姿が無い。煙草とライターと財布と、そして皆藤の姿が無い。

『結論、出たのか?』

昨日、自分がそう訪ねたことを思い出す。

『出たよ』

彼は、笑顔でそう答えてくれた。
だがそれは、諏訪を選んだということではなく。
皆藤の出した結論は……

「嘘だ……」

全ての人間の前から、立ち去ること。

「何で……」

彼が選んだのは、"人"ではなく、"孤独"―――

「何でだよっ!!」

叫ぶと同時に、町田は家を飛び出していた。


町田は、所構わず走り続けた。
寒空の下、トレーナーとスウェットという姿で走る町田を、道行く人がジロジロと見てくる。それでも町田は、走り続けた。周りなど何も見えない、何も聞こえない。皆藤の姿だけを求めて、ひたすら走った。
しかし、彼が居るはずもなく……
フラフラと、町田は街中で立ち止まった。
荒い息が、耳鳴りが、鼓動が、煩い。

「ふざけんなよ……」

呟いた声は、雑踏の中にかき消された。


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