FC2ブログ

「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
3幕-23:愛のある場所

PERFECT BLUE 23-07

 ←PERFECT BLUE 23-06 →PERFECT BLUE 23-08
「俺はね、お前と違って、別の街に好きなヤツが居たわけでもないし、どこにも居場所なんてなかったから、何の躊躇いもなく自分の生まれた街を捨ててここに来たんだ。そして俺にとっては、ここが何よりの居場所」

一昨日、"好きなヤツを置いてきたのか?"と訊いたことに対し無言になってしまった皆藤の表情で図星だと思ったのか、皆藤には好きな相手がいるという前提で、ケイは話し出す。皆藤も、特に否定せずに彼の話を黙って聞いていた。

「俺には、ここが居場所で、ここに好きなヤツがいるんだ」

フッと笑いながら、ケイはそう言った。それは、とても優しい笑顔で……思わず、皆藤は顔を上げて彼を見た。
ケイは、皆藤に顔を向けて、またニッコリ笑う。

「ブリストで無茶ばっかしてた俺が何気なくこの店に、ちょうどお前が座ってるこの席に座ったんだ。そしたら、声を掛けられて。ナンパだね、いわゆる」
「………」
「明らかに軽そうなヤツでさ、ホント、ふざけんなって感じのヤツ。だけどね、結局ソイツが、俺を救ってくれたんだ」
「救った……?」
「そう。その日その日に店からパクッたモンとかで金作って、カプセルホテルとかネットカフェとかで寝泊りして、そんな風にフラフラしてた俺を、ソイツが拾ってくれたんだ。"俺も1人だから、ここに住みなよ"って」

『俺のアパートで暮らしなよ。俺もひとりぼっちだからさ』

町田の声が、皆藤の頭の中でオーバーラップした。
ここに居るケイは、自分と同じようなことを経験している―――それが、皆藤の表情を自然と真剣な顔に変えさせた。

「ヤローにナンパされてホイホイついてった俺も相当だけど、結局は、運命かもしんないな~なんて。
ま、ソイツの前では、悔しいからそんなこと言ったことないけどね」

"自分の話をするのは好きじゃない"などと言いながら、ケイはどんどんと身の上話を進める。
それが何故かは、ケイにも分からないことだった。分からないが、皆藤には何故か話せてしまっていた。

「ソイツのためなら、俺は何でも出来ると思うんだよな。俺もまだ18かそこらのガキだったし、恋愛とかそういうの考えたことなかったけどさ。ソイツが一生懸命俺のことを考えてくれて愛情をくれて……そうされてるうちに、気持ちに応えられるかどうかは最初はよく分からなかったけど、でも"コイツのために俺も頑張ろう"って思い始めて。"きちんと生きよう"って……それで、ブリストを離れたんだ」

それは皆藤にとって、まるで自分と町田の関係だった。
町田の愛に応えることは出来ないけれど、彼のために生きよう―――そう思って生きてきた自分と、このケイという青年は、とても似ていた。

「ケイ……」

気がつくと、皆藤はケイに自分から話し掛けていた。
会って間もない人間とこんなに真剣に話をするなんて考えられなかったことだが、知っている人間のいないこの場所で、唯一自分に声を掛けてきた彼しか、訊ける人間が居ない。あまりにも自分と酷似した経験をした彼にしか……

「お、何?」

ケイも、皆藤が会話に乗ってきてくれたことにパッと嬉しそうな表情になって、また覗き込んできた。

「アンタは、それは愛だと思う?」
「……へ?」
「つうか、愛って何だ?」
「……??」
「俺には、その"愛"ってやつ、分かんないんだけど」

ケイは、彼を救ってくれたその人物を、"好き"だという。それが恋愛感情だということぐらい、訊かなくたって皆藤にも分かる。だからケイなら、"愛"の定義を知っているのではないかと、皆藤は思ったのだ。
するとケイは、キョトンと首を傾げた。

「お前、好きなヤツいるんじゃねぇの?」

だったら分かるだろと、何言ってんだよと、その表情が語っている。
だが、皆藤は首を軽く横に振った。

「分かんねぇから訊いてんだろ。誰も、好きなヤツがいるとも言ってねぇし」
「でも、大切な人、置いてきたんだろ?」
「だからって、それが好きなヤツとは言ってない。それに……」

諏訪のことだってある。皆藤は、心の中でそう呟いた。
諏訪の愛のある言葉、真っ直ぐに突きつけてくる愛情を求めた自分の感情は、愛なのか。町田を誰よりも大切だと思う気持ちに名前をつけるとしたら、何なのか。宇賀の自分への愛情に気付きもしなかった自分はどこを見てきたのか―――皆藤には、何も分からないのだ。

「お前は、その大切なヤツ、どんな風に思うわけ?」

逆に、ケイがそう質問してきた。
しかし、皆藤は何も答えない。答えられなかった。他人に、町田とのことを話す気にはなれないし、諏訪のことも宇賀のことも、何も知らないケイには話せなかった。
するとケイも諦めたのか、少し溜め息をついてから笑った。

「まあ、お前はどんな風にソイツのこと想ってるか知らないけどさ」
「………」
「俺はね、俺の好きなヤツのことをそういう風に想う気持ち、それが"愛"だと思ってるよ」
「……え?」
「コイツのためなら何でも出来る、コイツとずっと一緒に居たい、コイツとなら素直になれる、コイツとなら未来を見つめられる、一緒に居るだけで毎日が幸せだと思える、いっぱい笑ってほしい、悲しませたくない、幸せにしたい。そう思うこと、それって最高の愛じゃない?」

その言葉に、はっきりと断言してきたケイに、皆藤は絶句した。
皆藤の心臓が、早鐘を打ち始めていた。目の前が真っ白になるような感覚に襲われるほど、それは皆藤にとって衝撃の事実だった。
なぜなら自分は、町田に対して全く同じことを思ってきたからだ。ケイが恋人に対して想うことと、同じことを……。
そんな皆藤の表情に気付かず、ケイは言葉を続けた。

「ソイツって、割と表情にあからさまに出るくせに、しかも何でもサクッとこなせちゃうくせに、変なトコで不器用なんだよ。だから肝心なときに言葉が足りなかったりしてさ、最初の頃は俺もフラフラしてたんだよ。
自分のソイツへの想いが愛だって気付いてなかったから、試すようなこととかも、何回もした。不器用なソイツよりも、しっかりと愛情をくれる人に流れそうにもなって、何度も傷つけた。別れ話が出たときもある。でも俺は結局離れなかったし、ソイツも必死で繋ぎ止めてくれて。
それである日、ふと気付いたんだよね。"ああ、これが愛なのかもな…"って」
「………」
「結局さ、何だかんだ言ったって、俺はソイツしかダメなんだよね。誰に流されそうになっても、離れれば顔が浮かぶし、ソイツのことしか考えられなくて、すぐに会いたくなるんだ。だから、もうフラフラするの止めたんだよ」

ケイの言葉が、皆藤の心に容赦なく突き刺さる。
町田も、不器用な人間だ。何でも出来るくせに、時々皆藤が驚くぐらいに不器用だったりする。そういうところが、一見真逆そうな自分たちの共通点だなんて、話したこともあった。
反対に、諏訪は不器用だがとても器用でもある。自分の感情をストレートに表現して、そしてどんなことにも怯まない、粘り強い精神で相手の心を捉えることができる。おかげで皆藤はずい分とペースを崩された。
そして諏訪は、愛情を真っ直ぐに突きつけてくる。皆藤が心のどこかで望んでいた"愛されること"を、しっかりと実行してきた。
もしかしたら、と皆藤は考える。
もしかしたら自分は、彼を羨ましいと思っていたのかもしれない、と……

「智司?」

沈痛な面持ちで黙り込んでしまった皆藤を、ようやく気付いたケイが心配そうに覗き込んできた。
しかし、皆藤には何も聞こえなかった。
様々な混乱や矛盾がひとつの糸で繋がったように、クリアになって。そこから見えた真実に、愕然としていたのだ。
そう、それは、


自分は、町田を愛している――――


関連記事
スポンサーサイト



↓ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL恋愛小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png SS
総もくじ 3kaku_s_L.png Turning point(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 悪魔たちの狂想曲(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 立ち入り禁止(誠×風)
総もくじ 3kaku_s_L.png Old flame(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png 交差点(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ 3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
総もくじ  3kaku_s_L.png SS
総もくじ  3kaku_s_L.png Turning point(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 悪魔たちの狂想曲(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 立ち入り禁止(誠×風)
総もくじ  3kaku_s_L.png Old flame(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png 交差点(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ  3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【PERFECT BLUE 23-06】へ
  • 【PERFECT BLUE 23-08】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【PERFECT BLUE 23-06】へ
  • 【PERFECT BLUE 23-08】へ