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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
3幕-23:愛のある場所

PERFECT BLUE 23-11

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[4]

「なぁなぁ、ブリストのニュース観た?」

2年F組の教室。数名の生徒が、そんな話題で盛り上がっている。一週間の試験休み期間がが終わった今日、教室には、生徒がすでに揃っている。
ただ1人、皆藤を除いて。

「ああ、観た観た。あれは衝撃映像だよな。火の海ってああいうこというんだな」

秋本が、話し掛けてきた武藤に頷きながら、興奮気味にそう答えている。

「雑居ビルが火元らしいね。なんか、朝方まで消えなかったとか言って」

谷原もニュースを観ていたらしく、話に入ってくる。"ブリスト""ニュース"の単語に、ピンときたらしき藤崎や富永も混ざってきた。治安が悪い一方で十代の若者にとっては流行の発信基地でもあるブリリアント・ストリートは、昼間はそれなりに学生も集っていた場所。高校生にとってはとても馴染み深い場所なのだ。

「ずい分と人が死んだみたいだよな」
「うん。しかもみんな焼け焦げて、殆ど判別不可能だって。今だに、ブリスト一帯が閉鎖中だってさ」

教室内は、朝からその話題でもちきりだ。特に、ブリリアント・ストリートに通っていた人間とかつては付き合いがあったこともある木下や真鍋あたりは、火元となった店に訪れた経験もあり、「あの店、安全対策とかヤバそうだったもんな」などと納得顔で話し合っている。
すると、

「久し振り~、おはよ」

諏訪が、いつもの笑顔を作って教室に入った。
教卓についた諏訪は、条件反射のように窓際の席に目を向ける。だが、皆藤の机は空席だった。
やっぱり、自分に会いたくないのかもしれない……そんなことを思って、心が痛む。そして同時に、心配も募る。もしこのまま来なかったら、さすがに家を訪ねた方が良さそうかと。それは担任として、一人暮らしの生徒の安否を案じる部分も大きい。
そんな思いを抱えながら諏訪は心の中で一度深呼吸をして、改めて生徒たちに笑顔を向けた。

「ホラホラ、席に戻れよ。出席取るぞ」

合図とともに、出席を取り始める。
いつも通り、一週間ぶりでも相変わらず元気に返ってくる、生徒たちの声。しかし、

「皆藤」

その言葉に、もちろん返事はない。

「休みか?誰か、聞いてる?」

そう言いながら、諏訪は木下たちに目を向けた。皆藤が休むときはまず宇賀に連絡が入り、宇賀が木下たちに伝えてくる。今日から卒業式の練習も始まるので、宇賀は登校しているはずだ。
だが、今日は木下たちも首を横に振った。

「何も聞いてないよ」

な?と、木下が真鍋と桜沢に顔を向ける。彼らも頷いて「知らない」と答えた。

「そうか……」

仕方なく、皆藤の出欠欄は空白にしておいた。
もしかしたら、遅刻かもしれない。そうであることを願って。



町田も、いつもの時間どおりに出勤していた。
保健室の机で、ぼんやりと空を眺める。
日曜日は仕事があり学校に行った後も、夕方車で探し回った。それから次の日も、その次の日も……昨日は居なかった場所も今日は居るかもしれないと、探し回った。ブリリアント・ストリートは大火事が起きたとかで通行止めになっていたため、皆藤が居る可能性は低いと知りつつも周囲だけは探してみた。だが、どこにも皆藤は居なかった。
夜、榊から電話が来て、警察に届けた方がいいと言われた。町田もそのつもりでいる。これ以上自分たちだけが探していても埒があかない。警察にでも探偵にでも、探してもらうしかないと。警察よりも探偵の方がいいかもしれないと、榊は言う。汚い話だが、金で動く探偵の方が、しっかりとやってくれるのではないかと。
自分が親に雇われた探偵にウロつかれた経験を持つ町田には、あの気分の悪さを知っている以上、探偵は避けたいのが正直な気持ちだった。だが、榊の言い分はもっともだ。それに、事を荒立てないためにも、探偵の方がいいかもしれないとも思えてきて。やはり探偵しか手段はないだろうかと考えながら町田は、もう何度目かになるか分からない溜め息が零れた。




「これから、卒業式の練習があるけど、ウチのクラスは……」

朝のホームルームが終わりテスト返却を終えて、諏訪は卒業式の練習の話を始めた。黒板に体育館の概要を書き、自分たちのクラスの位置を示す。

「いいか?出席番号順に横一列で……」

コンコン

不意に、ドアをノックする音がして諏訪は言葉を止めた。「はい」と返事をすると、遠慮がちにドアが半分ほど開く。

「すいません。諏訪先生ですか?」
「え?あ、はい」
「ちょっといいですか?」

現れたのは、見知らぬ2人の男性。スーツを着て頭の良さそうな顔立ちで、こっちが姿勢を正したくなるほどにしっかりとした中年の男性コンビだ。

「はあ……」

諏訪は首を傾げながらも廊下に出た。
そっと、ドアを閉める。

「2年F組担任の、諏訪先生ですね?」
「はい」
「私たち、こういうものなんですが」

そう言って見せられたものは、警察手帳。

「え……?」




宇賀は、教室でぼんやりと座っていた。
皆藤は今日、来ているだろうか…と考える。朝2年F組に寄ったときには、まだ来ていなかった。繋がらない電話に、訪れても町田すら居ないマンション。皆藤と連絡をとる術がなくて、今日に賭けてきたのだ。

「どうした?宇賀ぁ」

クラスメートが、いつになく暗い宇賀を心配して声を掛けて来る。

「ん?別に……」

小さく笑みを返して、宇賀はポーズだけでも彼等の話に混ざろうとした。
そこへ―――

「宇賀っ!!」

勢いよくドアが開かれて、大きな声で呼びかけられる。入って来たのは、串崎だった。

「くっしー?何」

真っ直ぐに自分に向かって歩いて来た串崎の危機迫る表情に、宇賀は少し体を引いてしまった。他の生徒たちも、呆気にとられてその光景を見ている。

「ちょっと、来い」
「え?」
「いいから」

串崎に腕を引かれるがまま、宇賀は教室の外へと連れ出された。

廊下だと生徒たちが驚いて見にくるだろうことを察し、串崎は中央棟の生徒会室に彼を促した。

「ちょっ……何」

宇賀にはワケが分からず、ただそれだけを繰り返す。宇賀を生徒会室に入れた串崎は、パタンとそのドアを閉めた。

「くっしー?どうしたの」
「あのな、落ち着いて聞けよ……」
「?」
「さっき、職員室に警察が来て……諏訪が居なかったから、今、その人たちは2年F組に行ったんだけど」

串崎の表情は、今まで見たこともないぐらいに強張っていて。宇賀も、思わずつられて顔が強張った。

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