FC2ブログ

「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
4幕-24:知らせ

PERFECT BLUE 24-03

 ←PERFECT BLUE 24-02 →PERFECT BLUE 24-04
「失礼します」

小さくノックをして、そう断りを入れながら中に入った。
中には、デスクで仕事をしている町田が居る。そして、長いすには串崎が腰掛けていた。

「おお、諏訪…。どうした?」

顔を上げて小さく笑みを見せた町田は、また痩せたようだった。華奢で細い割に健康そうな血色や身の振る舞いが彼の魅力だったが、今はげっそりとやつれているようにも見え、睡眠も食事もろくに摂れていないのか顔色が悪く覇気がない。彼の魅力の1つでもあった潤んだ瞳は、赤く充血いているようにも見える。
自分も周りに"痩せたね"と言われる諏訪だが、町田ほどではないと思った。彼の姿は、同じようにショックを受けて悲しみにくれる自分ですら、見ていて痛々しくて気の毒になってしまうのだ。今ここで崩れても不思議はないほどの姿で、それでも町田は反射的に笑顔を作るから、余計に痛々しい。

「ちょっと話があって。今、大丈夫ですか?」
「え?あ、まあ。いいけど」
「じゃあ、ちょっとこっちへ」

町田に近づいた諏訪は、その腕を引いて、串崎の座る長椅子の方へと導いた。

「俺は、外した方がいいかな?」

串崎が、気を利かせて少し腰を浮かせる。それを諏訪が慌てて制した。

「いや、いいんです。串崎さんも、聞いてください」
「でも……」
「これ以上串崎さんに黙っていても、心配募らせるだけですから」

だから、一緒に聞いてください。諏訪はそう言った。もう、串崎には隠しきれないと思っているのだ。自分と町田が皆藤のことで何かがあるということに気付いているだろう彼に隠すことは不可能だと。
それに、串崎だって大切な友人…いや"親友"といっても過言ではない。そんな彼にこれ以上黙っていたら、彼を裏切ることになる。
すると町田も、諏訪と同感だと言うように、溜め息混じりに串崎に頷いてみせた。それを見て、串崎も再び体勢を戻す。
諏訪は串崎の隣に町田を座らせ、自分は向かい側の回転椅子に腰かけた。

「宇賀のことなんですけど」

その言葉に、串崎が反応を示した。
宇賀は、串崎の元生徒。そして今一番、彼が心配している生徒でもある。3年生を送り出して今年は担任を持っていない串崎は、彼の家に年中通っているのだ。

「宇賀のこと、町田さん聞きました?」

自分が串崎から聞いたのだから、町田だって知らないはずはない。そう考えて、諏訪は断定的に問いかける。するとやはり、町田は大きく頷いた。

「聞いたよ」

宇賀は、この2ヶ月間、ほとんど家に引きこもってしまっている。念願叶って合格したはずの大学もかなり休みがちになってしまっているようで、春休みに入ったらシフトを増やすつもりだったアルバイトも、皆藤の件の直後に辞めてしまったらしい。

「俺たちみんな、このままじゃダメになりますよ」

泣き出しそうな気持ちをこらえて、諏訪はそう告げた。

「……諏訪?」

町田が、ゆっくりと顔を上げる。
諏訪は町田の肩にそっと触れた。それはやはり薄くて頼りなくて……思わず心が痛んだが、だからこそはっきりするべきだと、口を開く。

「町田さん、俺たちに何か隠してませんか?」
「………」
「今の町田さんを責めるのはとても心苦しいけど、何か大切なこと、隠してますよね?」

町田が本気で皆藤を愛していたとして、それは諏訪も同じこと。そして恐らく宇賀も。愛する人を突然あんな形で失って、心が追いつくわけもなく、悲しみは日に日に増す気すらしてくる。
しかし、町田の様子だけは自分たちと何かが違うと、どこかおかしいと諏訪は思うのだ。
それは、ただ純粋に皆藤の死を受け入れられずに悲しんでいるというよりは、何か自分自身を責めて苦しんでいるような……
俯いたまま何も答えない町田の肩からそっと手を離しながら、諏訪は自分がとったある行動を打ち明けた。

「皆藤の死は、信じたくないし、受け入れられません。でも、自分が担任として何ができるだろうっていろいろ考えたんです。
彼には身内が1人もいないし、唯一の肉親である母親の居場所もわからない。ならば、彼のように身寄りのない人間が亡くなった場合、どんな扱いを受けるのか……そう思って調べてみたら、死亡届と死亡診断書を同居者や家主が出す必要があるってわかりました。そして皆藤の死亡診断書が存在しないってことも。恐らくそれは、あの事故で亡くなった多数の遺体の解剖で時間がかかっているからです。遺体はすべて損傷が激しかったそうなので、1人分でも1か月以上かかる場合があるって知りました。皆藤のように身元が判明している場合、後回しになっている可能性があります。
解剖が終わるまで、遺体は警察が預かっているはずです。だから俺、あの後すぐ警察に行ったんですよ」
「……え?」

諏訪の思いがけない発言が、町田の表情を変えさせた。諏訪がそんな行動に出ていたことなど、全く気付かなかったのだ。

「俺、どうしても信じたくなくて。皆藤の財布が遺体から出て来たってだけで、それは皆藤じゃないんじゃないかとか、そんな風に考えなければやってられなくて。だって、3年前の事件だってそうじゃないですか。アイツのバイクがあったってだけでアイツは犯人に仕立て上げられたけど、結果的には冤罪だった。
だから警察に、ちゃんと調べてもらおうと思ったんです。遺体の身元を法医学的にしっかり特定してくれ、って。
警察からは、俺は身内ではないのでそういった要望を伝えることはできないって言われました。遺体の身元を特定するために何をどこまでやるかは、検視官たちの判断によるもので、俺たちがどうにかできるものではないって。それで……」
「………」
「その警察の方に、言われました。町田さんが、俺と同じことを言ってきた、って」
「え?」

黙って聞いていた串崎が、目を丸くして町田を見た。
しかし町田は、俯いたまま黙り込んでいる。諏訪は、言葉を続けた。

「結局町田さんも、俺と同じ事を警察から言われて帰ったそうですね。町田さんが皆藤のためにそこまでしたこと、俺には分かります。俺がしようと思ったぐらいですから、同じように彼を想っているアンタだってするだろうと……」

それが、身寄りのない生徒に対して教師がすることといえばそうかもしれない。しかしそうじゃない。自分たちは、そこまで彼を愛しているということなのだ。
そしてそれを、串崎も感じた。少し予想はついていたのだが、まさかと思って頭の中で否定していたその考えが、やはり真実なのだろうと。
串崎がそんな事実に気付いたことを町田も諏訪も空気で察したが、敢えて何も言わなかった。串崎を誤魔化すのは、もう止めようと思っているからだ。この先、自分たちが立ち直る努力をしていくためには、隠しきれないことだと。

「でもね、町田さん。その遺体はやはり警察の方で保管しているそうなんですけど、その警察が、おかしなこと言ったんです」

その日、警察で一連の話を終えた諏訪は、とても気になることを聞いたのだ。

関連記事
スポンサーサイト



↓ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL恋愛小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png SS
総もくじ 3kaku_s_L.png Turning point(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 悪魔たちの狂想曲(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 立ち入り禁止(誠×風)
総もくじ 3kaku_s_L.png Old flame(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png 交差点(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ 3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
総もくじ  3kaku_s_L.png SS
総もくじ  3kaku_s_L.png Turning point(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 悪魔たちの狂想曲(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 立ち入り禁止(誠×風)
総もくじ  3kaku_s_L.png Old flame(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png 交差点(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ  3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【PERFECT BLUE 24-02】へ
  • 【PERFECT BLUE 24-04】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【PERFECT BLUE 24-02】へ
  • 【PERFECT BLUE 24-04】へ