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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
4幕-24:知らせ

PERFECT BLUE 24-04

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「遺体を預かっていたのは、ブリリアント・ストリートのすぐ近くにある警察署のひとつです。ブリストで起きた事件ですから、もちろんそうですよね?その警察の方が、言ってたんです。町田さんのこと、"ずい分ご立派になられて"って……」

『あの人、よく覚えてますよ。町田祥君。ずい分僕も、彼には手こずらされました』

弱ったように頭を掻いていた、50代半ばぐらいの警察を思い出す。あの日、諏訪の話を聞いてくれたその男性はそう言ったのだ。諏訪が来る数日前に来た町田を自分の部下が対応している姿を見ながら、どこかで見た顔だと思っていたらしい。そして、ずい分変わってしまったから思い出せなかったけれど、後で部下からその名前を聞いて思い出したのだと。

『僕4年ぐらい前までは、長いこと少年課で非行少年たちの補導やら指導を担当してまして。何度も彼には、更生するよう説得してたんです。彼は悪ぶってはいるけど、根は気持ちの優しい子だろうなって思ってたんでね。頭も良くて、人を惹きつける魅力もあったし。そしたらまあ、学校の先生になられてたんですね』

町田君なら良い先生になりそうだ。彼は、懐かしそうにそう言っていた。そして、皆藤のことも覚えていると。

『皆藤君ねぇ…まさか、彼がこんな形で亡くなるなんて。
彼も高校でずい分と変わったみたいですね。3年近く前だったかな?僕たち警察の不手際で、妙な事件に巻き込まれたらしいと聞いて心配していたんですが、乗り越えたんですね。クラスメートさんや先生方がみんな悲しんでいたと、あの日あなた方に知らせるために学校に行った者たちから聞きました』

それなのにどうしてこんなことに、と、人情派らしきその警察は目を潤ませて諏訪に打ち明けた。

「……どういうことだよ、それ」

話を聞いていた串崎が、驚いたように町田を向く。町田が昔不良だったことは、本人から聞いて串崎も諏訪も知っていた。しかしそれは、横浜に居た時代のことだとばかり思っていたのだ。

「その人、最後に言いましたよ」

あの警察は、諏訪に決定的な言葉をかけたのだ。

『町田君も皆藤君も、ブリストに居た時期が少しだけ被っているんですよね。町田君はあの容姿ですからとにかく有名で、芸能プロダクションのスカウトマンが警察に訪ねてきたこともあるぐらい、華やかというかよく目立つ子でね。皆藤君も、容姿でもそれ以外でもいろいろ有名でしたから、お互い面識あったんじゃないかなと思ってたんですけど。実際は彼らの口から互いのことを聞いたことなければ彼らのグループが小競り合い起こしたこともないし、2人が何か手を組んでたってこともなさそうですし、まあお互いあんまり他人に興味があるタイプじゃなかったので知らなかったのかな。それが回りまわって、運命的に同じ高校に居たんですねぇ』

「……なあ、諏訪…」

諏訪からその言葉を聞き、町田がしばらくぶりに口を開く。

「その人もしかして、"吉田"って人…?」
「え?あ、はい。そうですけど」
「あの人か……」

町田はガックリと肩を落として溜め息をついた。予想外のところから、自分の秘密を知られてしまったと。
吉田は確かに、当時何度も厄介になった人だ。情に脆くていちいち熱い吉田のことが、町田は決して嫌いではなかった。だが、あまり深く考えずに何でもペラペラと喋ってしまう人だとは感じていたので、自分の身の上や心情など、深い話を彼としたことはなかった。
だから今回吉田が、校内の教諭たちは町田の過去を知っているという前提で話したのか、それとも単純に口が滑ったのか……そんなものは町田にとって考えるまでもなかった。十中八九、後者だと。町田の記憶にある吉田という人は、そういう人間だ。悪い人ではないのだが、この口の軽さはどうにかしてもらいたいと、もう一度大きなため息をついた。
しかし、諏訪は町田が懸念するほどには敏感な人間ではなかった。

「町田さんが皆藤と最初から仲が良かったのは、彼が保健室の常連だってだけじゃなくて、吉田さんの言ったとおり、自分たちが同じブリスト出身だったからなんですか?」

皆藤の当時の話が校内に知れ渡ったとき、自分も同じ時期にそこに居たから、町田は彼と意気投合したのだろうか……諏訪には、そこまでしか考えられない。皆藤の死を受け入れられない自分に、他のことに気を回せる余裕などないのだ。
だが、どうしてもそれでも心に引っ掛かるものがあって、それでここに来ていた。

「でも、面識がなかったってこと、やっぱりなかったと思うんですよ……」
「………」
「だって皆藤は、ブリリアント・ストリートで知らない人間がいないくらいに有名だったんでしょ?吉田さんの話では、あなたも有名だったそうですし。少しでも時期が被っているなら、知ってたんじゃないですか?吉田さんも、知らないはずはなかったんだけど、って顔してました。
仮に皆藤が町田さんを知らなかったとしても、彼よりも前からブリストに居た町田さんは知ってたはずだって、俺は思うんです。自分たちの縄張りをおびやかすかのように現れた"レクター"の存在を、知らなかったはずはない、って…」

諏訪には、分からなかった。町田が自分たちに何かを隠していることは分かるのだが、それがこのことに関係することなのか。そしてその謎を解く鍵が、吉田から聞いた話の中に隠されている気がしたのだ。
あの日警察署から帰りながら諏訪が思ったのは、町田と皆藤の関係が、予想以上に深いものだったのではないかということ。そして時間が経つごとに痛々しいまでに憔悴していく町田の姿を見ていれば、やはり2人の間には何か秘密があったのではないかという疑問は、日に日に確信へと変わっていったのだ。
そしてそれは、串崎も少なからず感じていた。諏訪や宇賀とはまた違った苦悩を、町田から感じられる。自分自身を責めるように追い詰められた顔をする町田は、何かがおかしいと。

「町田さん、俺も宇賀も、何も知らないままアイツの死を受け入れることなんて出来ません。なんでアイツがあの日ブリストになんて1人で居たのか、それも分からないんです。でも、町田さんは何か知ってるんじゃないんですか?」

皆藤がブリリアント・ストリートに居たということ、それがまず理解出来なかった宇賀と諏訪に対し、町田はあまり疑問を抱いていないように見える。そのことからしておかしい。諏訪は、そう思っている。
すると、沈黙を守っていた町田が、再び大きな溜め息をついた。

「諏訪……串崎……」
「はい」
「何だ?」

項垂れながら苦しげに言葉を吐いた町田に、隣で会話を聞いていた串崎が顔を覗き込む。向かい側の諏訪は、特に姿勢を変えることなく町田の言葉を待った。

「今日、放課後空いてるか?」

顔も上げず、町田は呟くように言う。そして、少し顔を上げてチラリと2人に視線を向けてきた。2人が無言で頷くのを見て、口を開く。

「一緒に、来てくれ」

声は頼りなかったが、町田の瞳にはある決意があった。

「お前たちを、連れて行きたいところがある。そこで全部話す。そしたら、宇賀にも会いに行こう。アイツにも、きちんと話す」

もう話すしかない―――町田は、覚悟を決めた。





宇賀は、今日も大学へは行かずに部屋の中に居た。心配した串崎が頻繁に来てくれるのだが、彼以外の他の人間とは会っていない。誰とも話す気になれない。
何故皆藤がブリリアント・ストリートに居なければならなかったのだろう……そればかりが、頭の中を駆け巡る。普通に考えれば、彼があの場所に、しかも深夜に居るはずが無いのだ。
ずっと繋がらなかった電話。マンションを訪ねても留守ばかりしていたあの部屋。町田に訊けば理由が分かるのかもしれない。だが、そうすることすら宇賀には出来なかった。
何をしても、皆藤が死んだという事実は変わらない。誰よりも信頼して、そして愛していた彼は、もう自分の手の届かないところにいる。

「何で…?」

スマホを握りしめて、呟く言葉はいつも同じ。そして、もう何度も聞いている、留守電メッセージを再生して耳にあてる。

『第一志望、合格おめでと。ずっと目指してたとこ、行けて良かったな。じゃあな』

自分が彼に愛を告白したあの日の深夜、明け方近くに彼が入れてくれた留守電メッセージ。自分を相棒として認めてくれていたことが窺える、彼の優しい声。毎日のように聞いていた、彼の声。今はもう、聞くことの出来ない……。
無意識に、涙が溢れてきた。この2ヶ月、このメッセージを切ることが出来ないままだ。
もう抱きしめることは出来なくてもいい、自分だけのものになんてならなくていい、友情を超えたあの歪な行為を止めたいと言うならそうする。だから、また声を聞かせてほしい、顔を見せてほしい……。
彼の命を、返して欲しい。

「助けてよ……智司」

こんな自分を助けられるのは、彼しかいない。彼自身しか、自分を救える人間はいないのだ。
誰にどんな言葉をかけられても、この苦しみから逃れることなんて出来ない―――

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