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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
4幕-24:知らせ

PERFECT BLUE 24-08

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黙ったまま何も答えず身じろぎもしない諏訪を、町田は彼のショックと捉えつつ、それでも自分にはすべてを告白する義務があるのだろうと言葉を続ける。

「智司は、俺の気持ちを知ってた。だから、俺を裏切りたくなかったんだ。アイツは義理堅い奴だから。諏訪のところにいけば、俺を裏切ることになると思って……それで、アイツは孤独を選んだんだ」
「………」
「俺のせいで……」

過ぎたことなど考える人間ではない町田だが、今回の事態については後悔ばかりが頭に浮かぶ。もっと自分が強い人間だったら、もっと自分が器用で賢いやり方のできる人間だったら……そしたらきっと、別の結果が出ていたはずだと。
そんなことを考えれていれば、町田には、何故自分がこうして今までの生活を送れているのかが次第に分からなくなった。問題の引き金をなった自分が、何故こうして毎日学校に勤務し、食事を摂り、ベッドに入っているのか。突然将来も現在の生活も絶たれた皆藤に対して、いつも通りの日常が戻ってきている自分に一度でも違和感を感じてしまえば、食事なんて喉を通らなくなるし、眠れなくもなる。周りに迷惑をかけないためにと仕事だけはしているが、まるで他人の人生を生きているような感覚に支配された2か月だった。
しかしこうして諏訪に全てを打ち明け胸の内を吐露したことで、少しだけ町田は自分自身を取り戻したような気がした。死んでいた自分の心が、彼に話しながら息を吹き返したような。それは同時に痛みを伴うものだったが、ひとりでは抱えきれなくなってきた重圧を背負うよりは何倍もマシだった。
だから、この後諏訪からどんな言葉が出ようが、町田は全て黙って受けるつもりだった。どんなに罵られようが、こんな機会をくれた彼にはその権利があるのだと。
しかし―――
真っ直ぐと町田を見ていた諏訪が沈黙を破って開口一番に言ったのは、町田の予想したどんな言葉でもなかった。

「それでも俺は、町田さんを嫌いになれないです」

その言葉に、町田はふと顔を上げた。諏訪の表情は、何ともいえないほどに悲しそうだ。

「アイツに決断を迫ったっていう意味では、俺だって一緒なんですよ。自分を選んで欲しいって、俺ははっきり言いました。
でも町田さんは違う。誰か1人を選べ、って、俺のところに行けって言った。それがアイツを追い詰めたと仮定して、それはアンタが発したそういう言葉じゃなくて、アンタの人柄そのものだ。アンタは人が良すぎる。
そしてきっと俺は、町田さんのそういうとこが好きだし、信頼できる人だと思える理由なんだ」
「……諏訪…」
「嫌いになれたら、アンタを憎めたのに。智司のこと全部、アンタのせいにできたのに」
「…………」
「憎めないから悔しい」

普段は何でも器用にこなせすくせに、いざとなると不器用で人の良い町田。そこが彼の人間らしさで、危うさで、そして魅力なのだと諏訪は思うのだ。町田という人間が人を惹きつけて止まないのは、決して容姿だけではなく、良い意味でのその二面性なのだと。少なくとも自分は、惹かれている1人だ。もちろんそれは、人間的に。

「卑怯ですよ。そんな顔されて、こんなこと打ち明けられて、俺は何を言えばいいんですか。
それに、一緒に暮らしてたことだって、どうしてもっと早く言ってくれなかったんですか」

何も知らずに皆藤を愛して、横から手を出すようなマネをしてしまって。限りなく皆藤を愛していた町田にこんな思いさせて。

「ホント、卑怯だよ……」

そのまま、諏訪は俯いてしまった。
2人の間に、重苦しいほどの沈黙が訪れる。

「俺も、そのつもりだったんだ…」

やがて、町田がポツリとそう呟いた。

「言い訳じゃない。本当に、お前に言うつもりだった。アイツが決断したら、言おうと……」

試験が終わったら、遅くとも春休み前には、町田はきちんと諏訪に告げるつもりだった。それは真実だ。その頃にはきっと、皆藤だって腹を括るはずだからと。だから自分が諏訪に全てを打ち明けて、皆藤を手渡さなければいけないと、そう思っていた。

「諏訪にだけは、知っててほしかったから」
「……え?」

顔を上げる諏訪。町田も顔をあげ、視線を合わせた。

「俺からアイツの心を奪ったお前には、俺たちの5年半の絆を教えておきたかった。それぐらい大事な奴を渡すんだってこと、知ってもらいたかった」
「……」
「本当は、それ話した後にお前のこと一発思いっきりぶん殴って、"幸せにしないとぶっ殺すからな"って言って、恨みっこなしでアイツを渡して終わるつもりだったんだ」
「町田さん……」
「それなのに、こんなことになるなんて……」

謝る言葉すら自分には言う権利は無いとでもいうように、町田は語尾を言いきる前に俯いてしまった。
その姿を見ながら諏訪は、先ほど感じた違和感が再び沸き起こるのを感じていた。それは、今までよりも強く。

皆藤が姿を消した理由は、町田の言う通り、彼を傷つけたことに対する罪悪感なのだろう。それは諏訪も、こうして一連の話を聞いて理解できた。
しかし、逆に考えてみれば、それほどまでに皆藤は町田を大切にしていたということだ。
皆藤が諏訪に気持ちが揺れたこと、それは諏訪本人も気付いている。彼が確かに自分を求めたことは分かる。だが、その全てを捨てても皆藤は、町田のために誰も選ばず姿を消すことを決意したのだ。町田を選べないのならば、誰のところにも行かない、と。
そして、それまでの皆藤が"たったひとつのため"だけに生きていたことは、諏訪は皆藤本人から聞いたのだから確実なこと。その"たったひとつ"が何なのかずっと気になっていたが、ようやく確信した。町田のことなのだと。だから、皆藤がたとえ愛情を求める本心に気付いていたとして、自分自身のために愛の温もりを求め諏訪という人間を求めたとして、それでも彼が町田のために生きていたことは確かだと諏訪は思うのだ。
町田と天秤にかけられたときに自分は負けた―――その事実が、諏訪はどうも引っかかる。町田の言うとおり皆藤が本当に自分を愛していたのなら、そんな比重になるだろうかと。仮にその比重が成立したとして、ならば町田への皆藤の想いは何と呼ばれるべきなのだろと。
だから、

「真実は、アイツしか知りませんよ」

諏訪が答えたのは、そんな言葉だった。

「え……?」

諏訪の言葉に、町田は少しだけ顔をあげる。諏訪は、町田の目をしっかりと見た。

「全ての真実を抱えたまま、智司は消えたんです」

"死"という言葉は、敢えて使わなかった。
皆藤が誰を愛していたのか、姿を消した彼は一体何を考えて数日間を過ごし、最期を迎えたのか―――今となっては、誰も何も分からない。





マンションに帰った諏訪は、寝室に直行し、ベッドに倒れこんだ。
頭を駆け巡る、町田の今日の言葉。
何も知らなかった、疑いすらしなかった。皆藤は、決して町田のことを話さなかったから。諏訪が一度だけ町田と皆藤のキスシーンを見てしまっただけで、彼が町田の影をチラつかせることは決してしなかった。それほどまでに、町田の存在を大切にしていたのだ。自分と町田の関係が壊れないように秘密を守り通していたのだと、今ようやく理解できた。諏訪に自分のマンションまで送らせなかったのも、どんなに心を開いてくれてもそれだけは決してさせなかったのも、そこからバレる可能性が高かったからだろうと。
最後まで、何も言わずに彼は消えた。そして、命を落とした。もう、今となっては彼から何を聞くことも出来ない……。

しばらくぼんやりとしてから、諏訪はムクリと起き上がった。
そして、机の引き出しに入れてある1枚の薄いアルバムを開く。そこには、皆藤の笑顔が映っている写真がいくつも収められている。試験の最終日、2人で海に行ったときに撮ったあの写真だ。あの日の光景は、まるで昨日のことのように、諏訪の記憶の中に鮮明に残っている。
初めて自分に見せてくれた、満面の笑顔。それはまるで、天使の笑顔。18歳よりも幼く見える、無邪気な笑顔……
この笑顔を残して、皆藤は姿を消した。町田の話から考えると、この翌日の朝方。この写真から、10数時間後のことだ。きっと、諏訪を海に誘うときから、自分が姿を消すことは決めていたのだろう。この綺麗な笑顔は、お別れのしるしだったのだろうか。最後のプレゼントに、素顔を見せてくれたのだろうか―――しかしもう、その真実もわからない。本人が居ない今となっては、確かめることができない。
自分を好きだと告げて、去って行った彼。最後の最後に、素直な姿を見せてくれた彼。

「忘れられないよ……」

写真の皆藤に向かって、話し掛ける。言葉とともに、涙が溢れた。

「死んだら、どうあがいても会えないじゃないか……」

"死"という言葉を始めて口に出して、あまりにも絶望的で悲しすぎるその言葉に、堰を切ったように溢れ出てきた涙が止まらなかった。

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