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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
4幕-24:知らせ

PERFECT BLUE 24-11

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夜勤明け、少しだけ残業をした榊は、自分のマンションには寄らずに町田のマンションへ直行した。

「どうしたんだよ、昨日のあれ」

ドアを開けて出て来た町田は、榊の顔を見るなり不信感たっぷりで訊ねてくる。

「とりあえず入れてくれよ」

玄関で立ち話をさせるなと、榊は立ち尽くしている町田の腕を引いてリビングへと向かった。
町田をソファに座らせると、榊は自分も隣に座る。掃除の行き届いた町田の部屋はいつも過ごしやすく、染み付いた整理整頓の習性はこういう状況でも無意識に動くものなのかと一瞬思ったのだが。今の状況下では、もしかしたら気を紛らわせるために掃除をしているのかもしれないと、榊は感じた。

「煙草、いい?」
「え?あ、いいけど」
「悪いな」

テーブルの灰皿に手を伸ばし、榊は煙草に火をつける。

「あのな、祥」
「ん?」
「じつはさ、俺、お前に秘密で、してたことがあるんだよ」
「?」
「智司のことなんだけど……」

皆藤の名前で、町田の表情がさっと変わった。

「アイツの遺体が見つかった場所、知ってる?」
「いや…知らない」
「火元の雑居ビルの地下にある、バーなんだけどさ」

警察から聞いた話を思い出しながら、榊は語り出す。
榊は、皆藤の死んだ状況を調べていた。現在でもまだ皆藤の身元引き受け人の状態にある榊は、自分なら詳しい話が聞けるだろうと気付き、警察に出向いていた。どんな状況で彼が火事に巻き込まれ、逃げ遅れて死んだのかを、きちんと知りたいと思ったのだ。大切な、弟のような存在だった皆藤がどんな風に最期を迎えたのか、知っておくべきだと。
榊の予想通り、警察は親族に等しい関係性にある榊に、様々な情報をくれた。検視結果や遺品の開示、現場の説明、解剖の進捗状況まで、細かく教えてくれた。

「火元はそのビルの1階にあった居酒屋なんだけど、すぐにプロパンガスが爆発して、地下のバーに居た人間は誰1人として逃げられないままに死んだらしい。
火元の居酒屋やあのバーで見つかった遺体はみんな身元が分からなくて、行政解剖に回された。そんな中で唯一すぐに身元が分かったのは、智司だけだったそうだ。アイツの服に残ってた財布、あれってホラ、燃え難い素材だろ?ボロボロになったズボンのポケットの中で、きちんと残ってたんだな」
「……そんなこと、わざわざ言いに来たのか?」
「バカ。最後まで話を聞け」

悲しげに呟く町田に、榊は喝を入れるようにパチンと頭をはたいた。

「遺品を見せてもらったんだけどな?その中に、おかしなものがあって」
「……?」
「ピアスだよ。遺体の左耳に、シルバーのピアスがついていたそうだ」
「……え?」

町田が、顔を上げる。
確かにおかしい。皆藤は、ピアスなどしていない。このマンションを出て行ってから開けた可能性もゼロではないが、皆藤の性格上、それはあまり現実的ではない。

「ピアス……」
「おかしいだろ?だから俺、これは智司じゃないんじゃないかって思ったんだ。もしかしたら智司は、この店か他の場所で財布を落として、それをその人が拾ったんじゃないかなって」
「………」
「もしかしたら智司は、火事に巻き込まれずに他の場所に居るんじゃないかって……」

解剖が終わればすぐにわかることだが、榊には確信があった。あの遺体は、皆藤じゃない、と。
町田も、そんな榊の言葉に動きが止まっている。

「たとえアイツがブリストのどこか違う場所に居たとして、あんな火事の後だ、しばらくあの辺りは進入禁止だったし、どっか他の場所にいる可能性もある。そしたらもう、アイツの居場所なんて見当がつかない。だけどな……」

そこで言葉を切り、榊は2本目の煙草に火をつける。そして町田にも、1本差し出した。気を落ち着かせろというように。
町田は一瞬キョトンとしたものの、榊の行動の意味を察してそれを受け取った。久し振りに煙草を咥えて、火をつけてもらう。

「だけどな、祥。俺、どうしても智司が近くに居る気がして仕方がなくて。ずっと、ブリスト近辺を探してたんだ。でももちろん、アイツは居なかったんだけど。
そんな時、何気なく入った定食屋で、ふと耳にしたんだ。あの火事で怪我を負った人たちの中には、ああいう場所柄、住所不定の人間も多いらしいって。意図的に身元を明かさないような人間も居て、収容先の病院としても彼らが回復した際にどこへ連絡すれば良いか困っているようだ、って。俺はそこに、智司が居る気がしてならなかった。
だから、病院を調べたんだ。身元不明の、10代の少年が入院していないか。あの火事で患者を受け入れたと思われる、ブリスト近辺の病院を全て。川口教授も協力してくれて、2人で探しまくった。そしたら……」
「………」
「あの街の区内にある救急病院で、おそらく10代であろう少年が収容されてるってことが分かって」
「え……?」
「ブリストの間近にある病院だ」

その言葉に、町田の表情が一変する。手にしていた煙草は今にも灰が落ちてきそうだが、それにも気付いていない。
榊は、町田の手元に灰皿を出してそれを置かせた。そして、自分もまだ半分以上残っている煙草を灰皿に揉み消す。ここからは、しっかりと話さなければいけないことだ。

「あの火事の日に、運ばれて来たらしい。通りがかりの人が、倒れているその少年を連れて来たんだって。ブリスト内の、どっかの路地裏だそうだ。火事にも少し巻き込まれてたみたいで、火傷はしてなかったみたいだけど、流れてきた煙をかなり吸ってしまっていたらしい。
それで、もしかしてと思って、体の特徴を訊いたんだよ。
そしたら、アイツと……智司と一致した」

175cm程度の、細身の体。茶色の髪に、特徴的な目。某有名ブランドのネームプレートタイプのネックレス。そして何より、ほくろや傷の位置……全てが、皆藤と一致していた。
そして……

「しかもその患者、視力が左目だけ極端に悪いそうだ」

それが、榊に決定打を与えた事実だった。これは、皆藤に違いないと。そこら中の病院を調べたことは、やはり正しかったのだ。

「それですぐ俺、その病院に連絡して、自分が身元引き受けを任されている少年かもしれないから、すぐに会わせてくれって頼んだんだ。向こうだって、患者の身元が分かるかもしれないってことで即来てくれってことになって」

連絡をもらったその日に、榊は病院に出向いた。皆藤であることを願って。皆藤に違いないと信じて。

「功輔……」

無意識に、町田は榊の肩を掴んでいた。
榊は、ゆっくりと頷いた。


「智司だったよ……」


その言葉が、町田の頭の中で大きな音を立てた。
力がスッと抜けていき、そのまま動けなくなる。
町田の手は僅かに震えていて、その手を榊はそっと握ってやった。

「ウチの病院はアイツにとってかかりつけ医みたいなもんだし、川口教授に許可をもらって、ウチの病院で引き取った」
「………」
「向こうの病院もすぐに承諾してくれて、その日のうちにな。それが、1ヶ月前のことだ」
「じゃあ、智司は……」

町田は声も震えていた。やっと出た言葉だったが、掠れて音になっていない。
だが榊にはきちんと聞こえていて、彼は再び大きく頷いた。

「祥、智司は生きてる」


第25章へ進む

さあ、最終幕のスタートです。
第3幕のラストで主人公(の一人)が死亡という、衝撃の結末となっておりましたが、まあ、こんな展開です。みなさんの予想どおりでしたでしょうか。
遺体の解剖に時間がかかっているとはいえ2か月半もかかることがあるのかとか(1ヶ月以上かかることはあるようですが)、諏訪にペラペラと何でもしゃべっちゃう警察とかw、強引な部分はあるかもしれませんが、目を瞑っていただけるとありがたいです。

諏訪や宇賀、F組のクラスメートが悲しみに暮れるなか、群を抜いて町田がだいぶ参ってますね。あんな別れ方をすれば、そりゃそうでしょうけど。
ただ、彼の場合はいろいろ勘違いしたままでもあります。町田以外の面々は少しずつ気付いているようですね。

罪悪感で潰れる寸前の町田に突然突き出された、皆藤が生きていたという知らせですが、なぜ榊は1ヶ月も黙っていたのでしょう。それが最終幕の大きなテーマとなります。これまでほとんど出ていなかった榊が大活躍します(たぶん)。
そして第3幕ラストのあとがきでもお知らせしていました、"もう1人のキーパーソン"ですが、こちらは次章で登場予定です。ちなみに川口教授のことではありません。
それでは、クライマックスまでは少し先となりますが、最終幕もお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

次回第25章は4/8(木) 6時からスタート予定です。


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