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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
4幕-26:極限の絆

PERFECT BLUE 26-10

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「そんな……俺は間違ってないよ」

榊の言葉に首を振りながら、宇賀は必死で否定しようとしている。
しかし、榊は再び厳しい言葉をかけた。

「じゃあ訊くけど、君は、智司とキスしてドキドキする?」
「……え?」
「アイツと抱き合って、アイツの肌に触れて、興奮する?」
「………」
「しないよな?」

迷うような瞳を見せた宇賀に、榊は断定するような口調で言い切った。それでも反論しない宇賀の態度が、全てを物語っている。

宇賀には、分からなかった。
ずっと親友として付き合ってきた皆藤とは、今さらドキドキし合うような間柄じゃないと思うから。そんなもの、自分たちには無用だと。それでも彼を愛していると感じていたのだ。

「でも、俺は……」
「たとえどんなに月日が流れても、愛してる人とキスしたりセックスしたりしたら、ドキドキするもんなんだよ?」

宇賀の考えを見透かすように、榊はそう言った。そして、ニッコリと微笑む。

「まあ俺はさ、こんなこと言いつつ"愛"を感じるような人と出逢えていないから、説得力ないかもしんないけど。でも、例えちっぽけな恋愛だって、ドキドキはするもんだよ。冷静にキスしたり抱き合ったりなんて出来ない。言い方がアレかもしれないけど、すげぇ興奮するし、すげぇエロいこと考える。それが恋愛ってもんだと思うな。年齢とともにそういう欲求って減るかもしれないけど、それは加齢による性的欲求の減退からくるものであって、俺や宇賀君はまだまだ現役なんだからさ、あんまり当てはまらない気がするよ?」

決して偉そうに語ることなく、ユーモアすら交えて正直に言う榊に、宇賀は思わず笑ってしまう。そして同時に、何だかとても納得していた。
しかし、だからといってすぐに自分の気持ちを切り替えることなどできない。
たとえ間違った愛情だったとして、ずっとそうだと思い続けてきた気持ちをいきなり"間違ってたから元通り"というような器用なことなど、出来るはずがない。そんなことが出来ていれば、こんなに苦しむこともなかった。

「榊さん……」
「ん~?」
「俺は、これからどうすればいいのかな……」

皆藤のために、そして自分のために。
これから自分は、どんな行動をとればいいのだろう。本当に、自分と彼が親友という関係を取り戻すことが、彼へのこんな気持ちを元に戻すことができるのだろうか……?
宇賀は、答えを求めるように榊を見つめた。
すると榊は、少し考えてから口を開いた。

「それは、そのうち分かってくるよ」
「え……?」
「宇賀君が本当に智司を助けたいなら、本当に智司を失いたくないなら、勇気を持ってアイツと向き合ってみな。そうすれば、きっと分かる」

皆藤の目を見て、自分の気持ちと向き合って。そうすればきっと、自ずと分かってくる。榊はそう言った。そして、またニッコリと笑ってやる。

「大丈夫。君は強くなれるよ」
「………」
「大事なものがある人間は、強くなれる。智司との友情は、宇賀君には宝物だろ?」

その言葉に、宇賀は微塵も躊躇わずに頷いた。生まれて初めて出来た、そしてきっと生涯で一番の親友……それが皆藤だから。

「そうだね」

宇賀は、ゆっくりと微笑む。
少しだけ、自分の先が見えた気がした。この目の前にいる初対面の男に、救われた。

「榊さんってカウンセラーみたいだね」

何だか心が癒されて、宇賀は穏やかな表情で話しかける。

「え?そう?心療内科で研修してるだけのことはある?」
「めっちゃあるよ。高校では、マチルダ先生の"悩み相談室"がかなり効果あったけど、榊さんもすごい。すっごい説得力」
「え゛~~?アイツと同類にしないでよ。あんな元ヤンとさぁ」
「榊さんだってそうじゃん。不良仲間だったんでしょ?」
「俺はアイツに脅されてただけだもん。今だにね、俺の方が1コ年上なのに指図されっぱなし」

わざとらしく眉を寄せながら、榊が苦笑いをする。宇賀も、思わず声を出して笑ってしまっていた。


それから間もなく2人でレストランを出て、榊は宇賀の家まで送ってやった。

「ねぇねぇ榊さん」

車から降りた宇賀が、ドアを閉めかけて"あ"と気づいて振り返る。

「ん?」
「また、話聞いてもらってもいい?」

医者という職業をしている彼は忙しいかもしれないが、彼にまた話を聞いてもらいたい。宇賀は、素直にそう思った。
すると榊は、ニッコリ笑って頷く。そして、胸ポケットに入っていたカード入れから1枚の紙を出し、何やらサラサラとペンを走らせた。そして助手席の方に体を伸ばして、外にいる宇賀にそれを手渡す。

「はい」
「え?」
「あげる」

手渡されたそれは、榊の名刺だった。"東上大学付属病院"と書かれた名刺には、病院の所在地と電話番号、榊の名前と"研修医"という肩書が記されている。

「これ、もらっちゃっていいんすか?」
「うん」

頷きながら榊は、名刺の裏を返してみろというようなジェスチャーをしてみせる。宇賀が裏返してみると、そこには携帯電話の番号らしき数字が書かれていた。

「それが俺のプライベートのやつ。だから、君が使うのはそっちだね。俺はまだ研修医の身だから、仕事以外にもやることあってだいたいが病院に居るけど、メールでも電話でも、時間見つけて折り返すから」
「俺、邪魔しちゃうかな」
「ハハ、気にすることないよ。俺でよければ、愚痴でも弱音でも相談でも何でも受け付けるよ」
「ホントに?」
「ホントホント。ここまで聞いておいて放ったらかしにするほど、俺は悪いヤツじゃないからね」

そう言って、榊はまた明るく笑い、エンジンをかける。

「じゃあな」
「うん。さよなら」
「おう。ちゃんと大学にも行って、バイトもして、俺みたいに立派な人になれよ?」
「努力します」

気軽な友人同士のような口調で言葉を掛けてくれる榊に宇賀もやっぱり笑いながら、動き出した車を見送った。





深夜を過ぎても眠れずに、町田は自室を抜けた。
リビングのローテーブルに置いたままの、榊が忘れていった煙草とライターを手に、ベランダへと出る。1本咥えて火をつけ、大きく吸い込むと、柵にもたれるようにして空を見上げた。
夜空に広がっていく紫煙を眺めながら、夕方の一件を思う。
諏訪や宇賀が自分に向けて発した数々の言葉の意味、悲しい表情の理由を。

いったい自分は、何を見落としていたのか。
いったい彼らは、何を知ってしまったのか。

皆藤との再会を果たしたことで、明らかに彼らは自分に対して苛立ちを抱いたのだと、町田もそこまでは気づいている。
しかしその先が、どうしても分からないのだ。

『ホント、お前って罪なヤツ』

榊までもが、そんなことを言っていた。
そう、きっと、知らないのは自分だけ。
当事者や深い関係者の中で、自分だけが、何か重大なことに気付いていない。

「何やってんだ、俺は……」

情けなくて、町田は頭を掻いた。これでは皆藤との距離が縮まらなくて当然なのかもしれない。
自分がしっかりするべきなのに、今まではそれができていたはずなのに。どこかで掛け違えたらしきボタンが町田からペースを奪い、判断力を鈍らせている。
皆藤を守りたいのに、救い出したいのに、彼の幸せを一緒に導き出してやりたいのに……何かが邪魔して、その先にあるはずのヒントに辿り着けない。諏訪や宇賀、榊は知っているのかもしれない、その"何か"が。

「ダメだろこんなんじゃ……っ」

喝を入れるように呟いて、町田は煙草の煙をまた大きく吸い込んだ。
今夜も眠れそうにない―――


ふと目が覚めて喉の渇きを感じた皆藤は、リビングへと出てきた。
キッチンに向かおうとして、ベランダの人影に気付く。
そこには、煙草の紫煙を燻らせる町田の後ろ姿があった。それは榊が忘れていったものを拝借したのだろうことはすぐに想像できたが、単純に喫煙時代を思い出して吸っているようには見えなかった。
自分を落ち着かせるように空へと煙を吐く町田の背中には、皆藤の前では決して見せることのない、重苦しいまでの責任と自己嫌悪、そしてもしかしたら本人は気付いていない疲弊が感じられた。

自分は一体何をするべきなのだろう……下げた両腕の、拳を強く握りしめる。
皆藤はそのまましばらく、町田を見つめていた。


第27章へ進む

周りが気づく中で自分だけが何もわからず追い込まれる町田と、そんな彼と向き合えないくせに放ってもおけない皆藤です。お互いにお互いを救いたい思いは同じなのに、思考のベクトルが違っているようですね。

諏訪先生と宇賀は、もう完全に理解しちゃったようです。今後は彼らの動きにもご注目ください。第3幕までは諏訪がひとり勝ち状態の展開でしたが、何だか一気に彼が不憫になってきた気も……(^^;)

そして、いい距離感で見守り続けている串崎においては、"コイツ必要?"とか言わずに温かい目で見守ってやってください。宇賀ちゃんの慰め役として活躍してくれていますしね。ちなみに私は、町田と諏訪コンビの"串崎イジり"が書けなくて、ストレス溜まってます。その分、川口教授をとりまく東上病院の面々のほのぼのしたやりとりでリラックスしながら書き進めていました。
村山さんの奥さんも、個人的にけっこう好きなキャラです。上品なんだけど空気読めないオバさんw いや、いい意味で。ちなみに彼女の名前が"美代子"だということが、今回判明しましたね。

さて。川口教授と榊の賭けが吉と出るか凶と出るか。町田と皆藤の、絆が強い故にすんなりと戻ることのできない葛藤を、ぜひとも応援してやっていただければと思います。
次回第27章は5/12(水) 6時からスタート予定です。


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