FC2ブログ

「優しい嘘(直×大)」
2:きっかけ

2-1

 ←1-4 →2-2
【2:きっかけ】

事の発端は、6月も中盤を過ぎたある日のことだった。
個人活動がひと段落して、久しぶりにバンドメンバー勢ぞろいでラジオ収録をした日のこと。

「大河、今日、泊まってかない?」

収録を終え、メンバーの実と拓郎がそれぞれ個人の仕事に向かうのを見送った大河は、同じように隣で2人を見送っていた直希にそう声をかけられて。
翌日は午後から仕事だということを知った上で、彼女と会わなくていい理由をまた作ってくれたのかと、大河はそれぐらいに考えながら、

「おお、そうしよっかな」

彼女よりもプライベートを過ごしているこの相棒に、あっさりと乗っかった。
それぞれの車でスタジオを後にして、彼のマンション近くにあるコインパーキングに車を停めて。改めて彼の車で夕飯を食べに行き、彼の部屋に一緒に戻った。
そしてソファに並んでビールを飲みながら、何てことない雑談を交わす。
彼と知り合って5年半以上経つが、直希がまだ正式メンバーではなかった頃からずっと、互いの部屋を行き来しては、こんなことを繰り返していて。
だからその日も、何てことない2人の日常として終わるはずだったのだが。

「大河、最近、カノジョとどうなの?」

不意に、直希がその話題を切り出してきた。
何故だかそれが重く聞こえたのは、聞きにくいことだけに彼なりに気を遣ったのだろうと大河は受け取った。
自分が彼女と上手くいっていないことを打ち明けたのはだいぶ前で、それ以来直希が自分から訊いてくることはあまりなかったから。

「ん~、ケンカばっかやなぁ。お互いに冷静になるために会う回数減らしてるはずが、悪循環になってる気がするわ」
「これからどうするつもりなの?」
「ちゃんと考えようと思ってるよ。このままはアカンしな」
「別れるってこと?」
「現状のままならそうなるな」

この相棒にはいろいろ心配をかけている分、大河は正直にそう答えた。
ルックスも性格も良い直希はどう考えてもモテるはずで、恋愛にはそれなりに慣れているだろうと、相談に乗ってもらったこともあるのだ。

「でも、冷静に考えてみようと思うよ。2年近くも付き合った子やからな」

20代半ばを迎えようとしている同士、この関係に付いては大人の判断をするべきだと思うから、大河はそう結論づけたのだが。
実際は、修復はだいぶ難しい気もしていた。
プライベートでは右手の薬指に嵌めていた彼女と揃いのリングも、今は寝室の引き出しに眠っている。彼女と会うときには嵌めるようにしているが、うっかり忘れたことが、3日前のケンカの原因だった。話し合う余地すら与えてくれずに怒った彼女に、大河は既に反論する気力を失っており、それがまた彼女の怒りを煽った。
正直、疲れたのが事実で―――

「ゴメンな、付き合わせて」

そう、気が付けば大河は、いつも仲間と過ごすようになっていた。
直希やバンドメンバーはもちろん、事務所の仲間や仕事仲間だとか。彼女と過ごす時間を、最近はほぼ仲間で埋めていて。そしてその大部分が直希だったのだ。

「でも、自分の予定を優先しろよ?」

直希は優しいから、誰よりも自分の"時間潰し"に付き合ってくれるのだと、大河はそう思っていた。
多少見た目は元ヤン丸出し&チャラいとはいえ容姿は抜群に整っているし、それに勝るとも劣らない性格の良さは、知り合えばすぐに分かるはずなのだから、

―――コイツに振り向かない女って、どんなやろ…

直希に片想いの相手が居ることを以前本人の口から聞いたことがある大河は、しみじみとそう思う。
その相手に対して直希が真剣であることを知っている分、自分では力になれないような気がして、大河はそれ以来その話題を出したことはないが。

「相棒やろが何やろが、断ってくれてええからな?」

だから力になってやれない分、邪魔になってはいけないだろうと思う。
彼にチャンスが回ってきたとき、自分の誘いが重なったら迷わず彼女を優先して欲しくて、そんな意味を込めて言うと、

「何言ってんの?」

本当に"意味が分からない"という顔で、直希が首を傾げた上に目を丸くして顔を向けてきた。

「誘ったの俺でしょ。俺は大河と居たいから居るだけだよ?5年以上ずっとそのつもりだけどね」

普通に考えればそれはそれなりに"告白"として通ってしまうことを、直希は言っていたのだと、大河は後になって分かるのだが。
当然、この時は何も気付かず、ただそのままの意味としてしか聞いていなかった。

「相棒だろうが何だろうが、嫌だったら断るタイプだから安心しな」

そんなこと大河が一番知ってるでしょ?と、大好きな笑顔を見せてくれる直希に、

「そっか」

大河は何故か妙にホッとしていた。
自分は本当に仲間に恵まれていると、頼りになる仲間も先輩も可愛い後輩も多くて幸せだと、思ったときだった。

関連記事
スポンサーサイト
↓ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL恋愛小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png SS
総もくじ 3kaku_s_L.png 短編作品
総もくじ 3kaku_s_L.png テスト(○×○)【テスト】
総もくじ 3kaku_s_L.png ★Old flame(実×大河)【連載中】
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png 交差点(実×大河)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ 3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
総もくじ  3kaku_s_L.png SS
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編作品
総もくじ  3kaku_s_L.png テスト(○×○)【テスト】
総もくじ  3kaku_s_L.png ★Old flame(実×大河)【連載中】
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png 交差点(実×大河)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ  3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【1-4】へ
  • 【2-2】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【1-4】へ
  • 【2-2】へ