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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
4幕-30:美しい涙

PERFECT BLUE 30-11

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「寝ぼけ……てんのかな」

ぼんやりと頭を掻く町田を見ながら、やはり皆藤は呆れたように笑っている。
すると皆藤も、隣に腰をおろした。

「なあ、祥」
「ん?」
「俺、ちゃんと話してきた」
「え?」
「ノブのおじさんとおばさんに、全部、本当のこと」

その言葉に、町田は驚いて目を丸くした。
ノブの家に寄っていくという話までは聞いていたものの、まさかそんな決意があったとは思わなかったのだ。

「お前、別にそれは話さなくても……」
「おじさんとおばさんも同じこと言ってたよ。"辛いこと思い出す必要ないのに"って。でも、どうせ忘れられない出来事なんだ、この先も思い出さずにはいられない。その度に辛い思いをするのか、それとも受け入れて乗り越えていくのか、そんなの選ぶまでもないって分かったんだ」

そしてそのためには、今後も付き合いが続くであろうノブの両親には話すべきだと、皆藤は思ったのだ。

「アイツはあの家に居るって、今日行ってみて感じた。だからアイツの見てる前で、隠し事はしたくないんだ」
「……そうか。2人とも、驚いてたろ」
「そうだな。でも、俺らしいって言ってくれたよ」

あの事件については、野田が事実を告白し警察が皆藤に謝罪をしたということで、名前を伏せた上で報道されていた。そのニュースを何となく覚えていたらしき2人は、驚きつつも、あの事件において皆藤が下した"再審請求をしない"という判断もここで自分たちに全て打ち明けたことも、認めてくれたのだ。

『自分に正直に生きればいい』

最後はそう言って、見送ってくれた。
その時皆藤は、両親とともに笑顔で手を振ってくれるノブを見た気がした。

「行ってきてよかった。これでまた、アイツに会いに行ける」
「そうだな。お前が行ってやらなきゃ、アイツからは来れないからな。俺に憑りついてくれたら、たまにはここに連れてきてやるんだけどなぁ」
「ノブを地縛霊みたいに言うな」
「え?ああ、ごめんごめん。そういうつもりじゃなかったんだけどね」

無意識のうちに話を脱線させてしまった町田は、苦笑いで誤魔化す。
皆藤も呆れたように笑いながら、立ち上がった。

「風呂?」
「違うよ。メシ作る」
「え?」
「もう20時」
「…あ、ホントだ」

時計はすでに20時を指していて、それで町田も、自分が空腹なことに気付いた。
皆藤はそんな町田にまたフッと笑って、キッチンに向かう。冷蔵庫の前にしゃがんで中を見つめた。町田が仕事復帰を前に平日分の食材を買い込んでおいたせいか、いろいろとおかずになりそうなものがある。しかし料理など滅多にしない皆藤は、手際だって良くないしレパートリーも数えるほどしかない。

「この材料だと俺は野菜炒めしか作れないけど、いいよな?」
「え?あ、うん……あ、俺、豚汁リベンジしようか?」
「いいよ。それは、今度功輔さんが来たときにでも作って」
「でもさぁ……」
「お仕事帰りのマチルダ先生は、そこ座ってな」

淡々と言い捨てて、皆藤は冷蔵庫からミックス野菜と豚肉を手に取った。

「うわっ。宣言したわりには手抜きだね」
「いいだろ。いちいち野菜切るのメンドいんだよ」

ケラケラ笑う町田を皆藤は気まずそうにギロッと睨んで、短い時間でそれなりの料理など作れないことをアピールする。そして、背後からの横やりを気にしない風に、さっさと準備をはじめた。
準備をしながら皆藤は、煙草の箱を軽く振り、1本取り出す。それを咥えようとして……

「祥」

箱に戻しながら、ソファに居る町田を振り返った。

「ん?」

やっぱり手伝ってくれとでも言うのだろうかと、町田がダイニングに向かってくる。
皆藤は彼に向って、煙草の箱を放り投げた。
それは綺麗なラインを描いて町田の手に落ち、続いて皆藤が投げたライターもそこに落ちる。

「……っと、何だよ、危ないだろ」
「それ、処分しておいて」
「え?」
「俺もう、要らないから」

彼特有のやはり淡々としたトーンで、表情も変えずに皆藤が言う。
その意味が一瞬分からず、町田はポカンと皆藤を見つめた。

「お前に、受動喫煙で死なれたら困るからさ」

そう言って皆藤は、ニヤリと笑った。

『俺絶対、受動喫煙で死ぬな。お前ら禁煙しろよ』

いつだったか町田が皆藤と榊に言った言葉を、覚えていたようだ。

「ベランダで吸うのも最近メンドくなってきたと思ってたし。なんか村山さんも、先週から禁煙始めたみたいだし。ちょうどいい」

吸える場所がどんどん少なくなっている今の機会に辞める、と皆藤はまたニコリと笑うと、今度こそ食事の準備を始めた。
町田はそんな彼の姿をジッと見つめていた。
そして皆藤から引き取った煙草を掲げて、ジッと眺めてみる。すると、

「お前が吸うんじゃねぇぞ?」

空気を察して顔を上げた皆藤が、今にも1本手に取ろうとしていた町田に、ビシッと指をさしてきた。
あまりにもベストタイミングな彼らしさに、町田はやっぱり笑みがこぼれる。まだ半分以上残っているそれを"ちょっともったいないな"と思いつつも、ポイっとゴミ箱へと放った。

「じゃ、早く作って」
「出たよ、町子ルール」
「何だよそれ」
「お前、自分だけのルール作って、人を顎で使うの好きじゃん」
「功輔とか?」
「そうそう」

キッチンとダイニングで笑い合っていれば、やがて部屋には白米と野菜炒めの良い匂いが広がり始める。
何てことのない時間の中で、2人はただ、心に広がる温かい温もりに安らいでいた。
たくさんの人の支えで、自分たちがやっと手を取り合い歩き出せたことに感謝して―――

「あれ?智司、これ、甘みつけた?」
「言うな。醤油とめんつゆを間違えたんだよ」
「いやでも、これ美味いよ。醤油だけより寧ろ美味くない?」
「ケガの功名だな」
「アハハ。ミスであることは潔く認めるわけか」

どんなに苦しんだ後でも、最終的には必ずこうして笑っていられる自分たちでありたいと、心から思い、そして誓った夜だった。


第31章へ進む

ようやくお話が(それなりに)まとまりましたw 多少の力技はありますが。
次回第31章は7/11(日) 6時からスタート予定です。


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