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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
4幕-31:穢れなき青

PERFECT BLUE 31-03

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「ふあ……」

マンションを出てコンビニに向かっていた榊は、大きな欠伸をひとつした。
ここ最近はずっと徹夜続きだったせいか、眠くて仕方ない。今日ようやく休みをもらえたが、どうやら一日中眠って終わりそうだ。

「眠そうだね~~」

不意に、背後から声がして。

「え?」

馴染みのあるその声に振り返れば、眩しいほどに爽やかな笑顔の宇賀が立っていた。

「宇賀君?」
「ちわ~」
「え、何で?」

自分のマンションなど知らないはずのに何故ここに来れたのかと、榊は間の抜けた声を出す。それを察して、宇賀が答えた。

「智司にね、聞いたんだ」
「智司?」
「うん。今日からアイツ、学校行ってるんだけどね?でも俺は今日は大学が休みでさ。バイトは夕方からだし、遊んでくれる人が居ないって嘆いてたら、榊ちゃんが休みだって教えてくれて」
「ああ、そういえば俺、アイツにそんなこと言ったかも」

昨日、川口への挨拶で病院に訪れた町田と皆藤に、そんな話をしたことを思い出す。
ちなみに朝ご飯中に皆藤が町田に言った、"宇賀に良いヒマ潰し場所を教えた"とはこのことである。
しかし、榊には疑問がもうひとつ。

「何でここ、分かった?」
「え?榊ちゃんに教えてもらったんだけど?」
「へ?」
「この前メシ食った帰り、送ってくれながら、"このコンビニ曲がったら俺のマンションだよ"って。階数までご丁寧に」
「あー、確かに言ったかも」

忙しい毎日に忙殺されて忘れてしまっていた何気ない会話を、ようやく榊も思い出して納得した。それをまた、宇賀が「疲れてるね」と笑う。

「でさ、榊ちゃん徹夜続きだったんだよね?だから、出張サービスに来た」
「出張サービス?」
「そ。自称"料理の申し子"な宇賀さんが、丼もの屋と弁当屋を愛する淋しい独身男を救いに来たんだよ」

優しいでしょ~?と、宇賀が笑う。すでにコンビニへと足が向いていた榊は、あまりにもタイミングのいい彼に笑みがこぼれた。
2人、近くのスーパーまで並んで歩き出す。

「悪かったね。料理のひとつも作れなくて」
「ホントだよ。医者なんて不規則な生活の代表みたいな職業なんだから、栄養ぐらいはきちんと摂りなって」
「しょうがないだろ。1人分のために料理作るほどマメじゃないんだよ」
「ダメだね、それじゃ。お兄さんは心配だよ」
「お前、いつ俺より年上になったんだよ」
「いいじゃんいいじゃん。ね、何食いたい?」
「何作れんの?」
「何でも」
「ホントかぁ~?」
「ホントだって。俺に作れないメシは無いね」
「その笑顔が不安だなぁ」

のほほんと会話をしながら、眩しい太陽の下で笑い合った。





「皆藤~、メシ行こ」

4限の授業が終わって昼休みに入った途端、桜沢がそう声をかけてきた。今まで皆藤は宇賀と昼休みを過ごしていたのだが、彼が卒業したために1人で屋上で食べようかと考えていた矢先のことだった。

「早くしないと学食混むで」

そう言う桜沢の隣には、真鍋と木下もいる。どうやら石原が色紙に書いていた通り、彼らは本当に宇賀の代わりをするつもりのようだ、と、皆藤はぼんやりと思った。

「ほら、早く~~」

強引に腕を引く木下に流されて、皆藤は仕方なく立ち上がった。宇賀ではない誰かと昼ご飯を摂るのは初めてだが、悪くない気がしていた。
そんな、久々にDOQが並んで歩く姿を、生徒たちが楽しそうに見つめている。同じ机でパンを食べていた石原と浜島は、DOQという場にいる自分たちの恋人の生き生きとした姿を見ながら、顔を見合わせて微笑んだ。




「お。DOQのおでましじゃん」

すでに学食で昼食を摂っていた串崎が、4人の姿を目にして笑った。彼と一緒に食事をしていた町田と諏訪も、顔を上げる。

「何かさぁ、この学校の伝説として語り継がれそうだよな。あいつら」

他の生徒たちには無い独特なオーラを無意識に出す彼等の構図を見ながら、串崎がしみじみと笑えば、

「俺たちも負けてませんけどね」

DOQの次に有名な自分たちを指差して、諏訪が笑った。町田と串崎も、"確かに"と笑う。

「語り継がれるかね、"バカ教師トリオ"って」
「それを言うなら"美形教師トリオ"でしょー」
「いや、"不良教師トリオ"じゃないすか?」

串崎が言えば町田が言い換え、それを諏訪が言い換える。

「トリオといえばさぁ、諏訪のクラスの関西トリオ?アイツら、マジで芸人目指すらしいな」
「ええ。先月の進路希望調査で、3人揃って同じ芸能事務所の名前書いてきたんですよ。アイプロだったかな。ほら、POLYGONとか安藤陸がいるとこですよ。あそこ、芸人養成にも積極的みたいですからね」
「へー、マジ?っつうか何で串崎は知ってるの?」
「だって俺、今年は3年生の進路指導輔佐だもん」
「ああ、そっか。でもさ、マジでアイプロ行くの?アイツら」
「この時期に冗談は書かないでしょう。養成所の試験、夏休み中にあるみたいなんですよ。合格すればそのまま入るし、しなくてもまた冬にチャンスがあるらしいです」
「へぇ。まあ確かに、面白いけどねアイツらは。ちょっと楽しみではあるよな」
「真鍋と桜沢は分かるけど、浜島がその決断したってのが俺は驚いたね。アイツ、ノリは抜群にいいけど、基本的に真面目人間だからさぁ」
「俺も驚きました。でも、去年の文化祭とか見てると、浜島ってセンスありそうな気がしません?俺たちは素人だけど、何となく、何かを感じませんか?」
「まあ、芸人丸出しにしてた諏訪が言うんだからね、そうかも」
「保健室にハリセン置いてる町田さんに言われたくないですよ」
「問題は親がどうするかってことだよな?」
「なんか、平気みたいですよ?この間三者面談したんですけど、3人の親が口を揃えて"真剣だと言っているのだから悔いのないようにやらせてみます"って。そりゃ心配でしょうがないだろうけど、まだアイツら若いし。彼らの親が言う通り、本当にやりたいことなら、悔いのない選択して欲しいですからね」

生徒の進路を語り合う3人は、いつの間にか教師の顔になっていた。
しかし当然、そのまま真面目な話で終わるわけもなく。

「俺たちもさ、3人でデビューしようか?」

脱線の一番乗りは、やはり町田だった。

「いいっすねぇ、やりますか」
「何やる?」

諏訪と串崎も、当たり前のように乗り出す。

「やっぱアイドル?」
「はあ?何言ってんの町田。お前が一番似合わない職種だろ」
「俺たちはじゅうぶんアイドルでいけますけど、町田さんみたいなサディスティック顔のアイドル嫌ですよね」
「腹黒フェイスの諏訪が良く言うよ」
「それを言うなら、串崎さんの顔も違うんじゃないすか?正統派すぎて、逆に違和感あります」
「確かに。詐欺師に多い顔っつーの?偽善者まる出し系?」
「どんな"系"だよ。俺を詐欺師と一緒にすんな。俺ほど老若男女に好かれるイケメンいないよ?」
「あ、諏訪。そのエビフライ1個ちょうだい」
「いいですよ。町田さん、から揚げ1個もらっていいすか?」
「いいよ~」
「ちょっとお前ら、無視すんなよっ!!」

他人のフリを決め込むほかの教師たちを尻目に、3人は騒がしく暴走していく。

「おいコラ、串刺し、お前の服の裾が俺の冷奴に付きそうなんだよ」
「串崎だ」
「町田さん、だんご野郎の服の裾がどうかしました?」
「だから発展させんな。"野郎"って言うな」
「だんご長男がね?」
「俺は次男だっ」
「「次男かぁ(笑)」」

そんないつもの光景を、生徒たちが楽しそうに見つめている。すでに彼らがDOQと同様に妹尾学園の伝説となっていることは、まだ当人たちは知らない。




「ホンマに賑やかやねぇ。あの不良教師たちは」

彼らと少し離れたテーブルに座っていた4人のうち、真鍋がそう言って笑う。木下と桜沢も、教師というよりは生徒と同じような、寧ろ生徒よりもヤンチャな3人の姿を笑った。
皆藤も、3人の教師を見ながら思わず微笑む。

「あのドSのガリガリ白衣野郎が元凶だな」

箸でチョン、と町田を指しながら言えば、3人が爆笑しだす。

「口が悪すぎだって皆藤。でもちょっと分かる。ドSのガリガリ……アハハッ」
「そうやで皆藤。他校の女子なんて、マチルダのこと"氷の美貌"て言うて崇めてるんやで?」
「あの美形をそんなこと言うのジブンだけやで。いやぁ、そのフレーズ、俺らのネタにもらってええか?」

木下も桜沢も真鍋も、皆藤が口にした町田の愛称で盛り上がっており、それを笑って眺めながらも皆藤は、相変わらず悪ノリをし続けている教師トリオに視線をやった。
何があっても友情が壊れることのなかった彼ら。それは、串崎の心配り、そして何よりも諏訪の強さと優しさのおかげだろうと思える。自分はもちろん、町田も弱いところがあるから、彼らの強さにたくさんのことを教えてもらい、支えられ、救われたのだ。

「つうか、お前らは負けてられないんじゃないのか?あんなド素人に」

定食の唐揚げをつつきながらボソリと言った皆藤が、向かいに座る桜沢と真鍋にチラリと視線を預けて、優しく笑う。
そんな皆藤に2人は一瞬キョトンとした後、また笑顔になった。

「おう、任せろ!あんなド素人に負けへんわっ」
「そうやそうや。湯水のようにネタを考えてくれるナベが居る。俺らの暴走を絶妙なタイミングで止めてくれる、ハマというブレーキが居る。可愛い可愛い俺が居るっ」
「お前のポジション要らねーだろ、留加」

木下が思わず口を挟み、桜沢や真鍋らと盛り上がりだす。
皆藤は、やはり定食を黙々と食べ進めつつも、そんな彼らに時折思わず笑ってしまいながら見つめていた。
離れた席で騒いでいる教師トリオ、そしてこうして自分を受け入れてくれる仲間たち。彼らの温かい気持ちを素直に受け入れて、これからは自分も前向きにいこう。少しずつでも、確実に歩いていこう。笑顔という大きな宝物を、決して失うことをせず―――皆藤は、心の中でそう決意した。

それからの毎日、皆藤はたくさんの人に囲まれて、笑顔で過ごした。

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