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「シンクロニシティ(直×大)」
4:シンクロ二シティ

4-1

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【4:シンクロ二シティ】

「はい、これ」

大河と直希がホテルに入ると、ロビーで待っていてくれた天野が、大河に部屋の鍵を渡した。

「追加よりも1部屋とっちゃう方が会計もシンプルだしさ、どうせ部屋空いてたから、シングルとっておいたよ」

直希からの急なお願いにも柔軟に対応してくれた天野は、迷惑そうな顔ひとつせず、涼しい顔をして大河に微笑む。

「すいません天野さん、俺の気まぐれでこんな迷惑…」

大河は申し訳なくて、何度も頭を下げるのだが、それすら天野は笑いひとつで済ませた。

「直希がね、大河と全然会えなくて寂しがってたから、逆に良かったよ」

と、直希の頭をひと撫でして、

「だから、新幹線代がわりに夕飯とホテル代ぐらいは奢ってもらいな」

大河の頭もひと撫でして、自分は夕飯に行くからとホテルを出て行った。
そんな天野の後ろ姿を並んで見送り、確かに腹が減ったのとロビーの客に気付かれ始めていることもあって、2人はホテル内のレストランへと向かった。





手早く食事を済ませ、部屋へと向かうべくエレベーターを待つ。
どこまでも気が利く天野は、なるべく近くで部屋を探してくれたようで、大河の部屋も直希と同じ階だ。

「ノープランの行き当たりばったりでも、意外と何とかなるもんなんやな」

フッと笑いながら、大河が呟く。

「エエとこやね、ここ。みんな優しいわ」

わざわざタクシーを呼んでくれた博物館の受付の女性も、カキ氷屋のおばちゃんも、バスの支払いシステムが分からず戸惑っていたら親切に教えてくれた老夫婦も、雷に怯える大河の為にしきりに話しかけてくれたタクシー運転手のおじちゃんも。

「すぐに帰らなくて良かった」

だいぶ不審人物と化していた自分に、この地の人たちは優しかった。
都会で暮らしていると、あまり経験できないことだ。

そんな大河を、直希は黙って見つめていた。
それに気付いて視線を合わせてきた彼に、

「大河、何かあった?」

静かに、問いかける。

「へ?」

自棄に真剣な表情で言ってきた直希に、大河は間の抜けた返事をした。
しかしすぐに、何故そんなことを直希が考えるのか理解できて、視線を彷徨わせてしまう。
それぐらい、自分がしていることは突拍子もないことなのだと。
何か理由が無ければ普通は、こんなことしないのだと。

「ごめん!」

雷が怖いと騒いだ挙句、余計な心配までかけてしまった自分が情けなくて、大河は両手を顔の前でパンっと合わせながら直希に詫びを入れた。

「え?」
「何も無い」
「はい?」
「行けるなぁって思ったら、来てた。そんだけ」

呆れられるのは百も承知で、大河は素直に打ち明けた。
直希は目を丸くして唖然としている。
もしかして今度こそ怒られるだろうかと、大河が恐る恐る目を彼に合わせたところで、

チン♪

エレベーターが到着した。
思わず2人でエレベーターに目を遣ると、降りて来た若いカップルの客と目が合って。

「あれ?」
「あっ」

大河と直希に気付き、"芸能人発見"とばかりに凝視してくるから、

「ごめん、乗りまーす」

ハッとした直希がそう言いながら大河の腕を引いて、さっさとエレベーターに乗り込んだ。
そして、ファンだと困るので、いちおう営業スマイルで手を振りつつ、"閉"ボタンを連打する。直希に続いて大河も彼らに笑顔を向けて、閉まり際には丁寧にお辞儀をしておいた。

幸い、エレベーターには2人きり。
大河がチラチラと直希を伺っていると、直希も気付いて顔を向けた。

「直希、怒った…か?」

ここに来た理由を知ってさすがに呆れたかと、遠慮がちに問う。
しかし直希は少し首を傾げてから、

「何で?怒るわけないって、さっき言ったじゃん」

と大河の懸念を一蹴して、

「何かあったわけじゃないなら、それでいいんだ。それなら安心だし、何も無くてただ会いに来てくれたなんて、寧ろ最高でしょ」

そう言って笑った。
その笑顔は、大河が見たかったそれ。
今朝のテレビを見て恋しくなった、直希の笑顔。
先ほどの駅でも今の状況でも、その笑顔は大河をホッとさせてくれるから……

「よかった」

大河も自然に安心の笑顔が出た。
すると直希が、スッと目を細める。
同時に、エレベーターが2人の部屋の階に到着して。

「行こ」

開いた扉の先に誰も居ないのをいいことに、直希が大河の手を取って歩き出した。

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