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「極夜(直×大)」
1:裏切り

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「友達…と、約束しちゃってるんだ」

幸樹とご飯に行くことすら打ち明けず。
そうすれば幸樹も誘おうと大河なら言い出しかねないとでも思ったのか。

「ていうか、病み上がりなんだから大人しくしてなって」

そんな、それらしい言い訳までつけて。
日曜日は、マンションまで行くと言っていたくせに、一人で寝ていろだなんて……

「……そうか」

大河が言えたのは、それだけだった。
何で嘘をつくのだと、普段の自分なら言えるのに。
やっぱり、こういうことになると、急に何も言えなくなる。

「そうやな。ぶり返しでもしたら、まずいしな」

代わりにそう笑顔で取り繕って、大河は動揺を隠すように缶に口をつけた。

もしも―――と、大河は考える。

直希が女性に恋をして、自分への想いが突然変わってしまっているのだとしたら。
自分に伝えてくれた言葉も誓いも、全てが嘘に変わってしまっているのだとしたら。
引き止める理由はあるのだろうか、と。
そしてその答えは簡単だ。

してはいけない、絶対に。

それはこの5ヶ月、少なからずどこかで感じていた不安かもしれなくて。
そんな不安を感じさせないほど想われていたから気付かなかっただけで、もしくは自分が無意識にそこから目をそらしていただけで。
女性という、決して対抗できない相手が現れたら、自分は出る幕などないと。

―――俺は、引き下がるしかないやんか…

どんなに突然であれ、その時がきたらあっさりと受け渡さなければいけない場所。
彼がまだ女性を愛せるなら、きっと―――





おかしい―――
大河がそう感じたのは、その日の収録が中盤を迎えた頃だった。
薬のおかげで軽くなった体は、体を動かすことの多い収録にも問題なくついていけて、メンバーからも安心した顔が見えていたのだが。
テープチェンジの際、大河は椅子から立ち上がろうとして、

―――あ…れ?

目の前が、微かに歪む感覚に襲われた。
思わず一瞬体が止まって、

「…ん?」

すぐ近くで見ていた実も、その姿が気になって首を傾げた。
しかし大河はすぐに立ち上がり、その後は何事もなくはけていって。実も、あまり気にも止めずにまた視線を戻した。
大河もまた、いったん目を瞑って開いたら戻った景色に、特に気にすることはなかったのだが……

その後も、それは時々訪れた。
時折目の前が歪んで、僅かに体がフラついて。
それでもやはり、一瞬でまた戻る症状は、発熱後の体にはよくあることにも思えたから。
もしかしたら幸樹の言う通り、風邪が治りきっていないのかもしれないと。
今日も大人しくしているべきなのかもしれないと。
思ったのは、その程度だった。





やがて収録は終わり、全員また楽屋に戻った。
ワイワイと騒がしい中で、大河はただ、幸樹と直希の行動を気にしてしまう。
自分のすぐ傍で着替えている幸樹は、先程からメール返信にも忙しく。それは当然、今夜の約束の相手だろう。

「あ、そういえば大河」

あ、と気づいた幸樹が、声を潜めてさらに近づいてきた。

「朝の話なんだけど…」
「ん?」
「あれ、俺が話しちゃったこと、直希には言わないでくれる?」

バツが悪そうに、両手を合わせてくる。
また、大河の心臓が早鐘を打ちだした。

「な、なんで?」

訊いてはいけないと、頭の中では警告が鳴っているのに、言葉に出てしまって。

「じつはあれ、誰にも知られたくなかったっぽくて」
「……え?」
「大河にも言うな、って、釘刺されたんだよね、さっき」

訊いてから、大河はやっぱり後悔した。

『幸樹、誰にも言うなよ?』
『え、大河にも?』
『バカ、絶対ダメだよ』

直希は、そう言ったという。
恐らく彼は、大河の耳に入らないためにも周りの誰にも知られたくないのだと、大河には分かった。

「さすがに俺、もう言っちゃいましたとは言えないからさ」

頼むね?と、また両手を合わせて頼まれる。
これでもう、直希本人にすら聞き出せない、と大河は理解した。

「うん、わかった」

それだけを返すと、ホッとした表情を見せた幸樹を置いて、

「お先~」

大河はさっさと楽屋を出た。
とにかく、早く帰りたかった。

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