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「極夜(直×大)」
3:報い

3-1

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【3:報い】

12月10日。木曜日。

ベッドに寝転がっていた大河は、カーテンの隙間から差し込む光に、もう朝が来たことを理解した。

「……しんど…」

予想通り悪化した体は、大河を寝かせてさえくれなかった。
昨日の夕方までは無かったはずの熱も、夜になる頃には一気に上がって。深夜には、高熱へと変化した。
昨日からは食事も摂らずに薬ばかり飲んでいたせいなのか貧血のせいなのか、夜中じゅう酷い吐き気に襲われて。
やっと落ち着いたと思ったら、朝だ。

「しごと……」

これではどうせ、薬を飲んだって治るわけが無い。ならばさっさと病院へ行った方がいい気がするが、今日の収録は自分たちの歌撮りもある。みんな忙しい時期だというのに、スケジュールを変えるなんてわけにはいかない。
今日の収録を乗り切って夕方こっそり病院へ行くべきだろうか。それなら直希への断る理由もできるし、いっそのこと今夜は兄のマンションに転がりこめばいい。

『寝てるよね。明日、必ず話そう』

昨夜改めて送られてきたメッセージを見る限り、直希は本気で今日、何としてでも話をつけるつもりだろう。
この体でまともな話なんて出来ないし、直希にこれ以上心配も迷惑もかけてはいけない。自分の体調管理で目いっぱいなほど多忙だと分かっているのに、その彼に気を遣わせるなど、ありえない。

『迎えに行く』

そう付け足された直希からのメッセージは、当然、今日これからのことを指していて。
入り時間に合わせたタイミングで出ようとすれば彼は必ず来てしまうから、さっさと行くべきだ。

「よしっ」

吐き気も治まったし、気休めかもしれないが薬も飲んで、早く行って向こうで休もう。
そう決めて、大河はゆっくりとベッドから起き上がった。





『ゴメン、今日は早く起きたから、もう出た』

なかなか寝付けなかった割に早く目が覚めた直希が見たのは、大河からのそんな返信内容だった。
着信時間は早朝で、起きるという時間にしては早すぎる。
入り時間まで3時間近くも早く行って何をするつもりだろうかなんて、考えるだけ野暮で。
自分に来られては困ると、大河が本気で自分と距離を置こうとしているのは明らかだった。

「何で避けるんだよ……」

髪をぐしゃぐしゃと掻き回しながら、直希は途方に暮れる。
一体自分が、何をしたのだろう。もしくは彼に、何があったというのだ。
昨日だって、あんなことを言われてからずっとそればかり考えて。

『大丈夫?なんか今日の直希さんは、上の空ね』

会っていた相手からも、そう心配された。
最近知り合ったばかりのその女性は幸樹の友人で、忙しい合間を縫って時間を作ってくれている。だからこそ、約束を変更してもらうなんて、申し訳なくてできなかった。日曜日に体調を崩した大河の体は恐らくまだ回復しておらず、傍に居たかったのに。
そう。
大河は日曜以降は、仕事以外は家に居たはずで、自分が何か彼の地雷を踏んだとは思えない。日曜日も月曜日も、寧ろ"伝染るから絶対に来るな"と言われたほど。仮にそれが既に自分を遠ざけていたのかとも思ったが、一昨日は大河の方から自分を誘ってきたのだから、それもおかしい気がする。

いや、もしかして…

ふと思いついたのは、昨日の去り際に見せた大河の顔。
直希を遠ざけながらも、あの瞬間だけは、縋るように見つめられた。確かそれは、一昨日の去り際も……
彼が自分を誘ったのも、本当は食事目的じゃなくて。焼肉なんか本当は、どうでもよくて…
そこで直希は、何故か恐怖を感じた。
もし大河に何か起きていて、彼が自分に救いを求めてくれていたとしたら……
この2日間、自分は何も気遣ってやれなかった。いや、月曜日もそうだ。寝ていたのを知っていたのに連絡すらしてやっていない。
ひとつのことに夢中になっていたがために、彼のサインを見逃していたのかもしれない。
それが、自分が"やらかした"ことではないかと。

「また、やっちゃったか…」

何度もこれでトラブルが起きていたのに、大河の気持ちを気遣うことをいつも忘れてしまう。
しかしこれは何故か、異様な危機感を直希に感じさせている。
頑なな大河の態度が、何か他の意図を含んでいるようで。
決して自分を近づけない、意図とは…?

昨日のあの悲痛な表情は、どこか危機感すら感じさせた。
大河があのまま、どこかへ消えてしまいそうに見えて。
何故か無性に気になって仕方ない。
あの姿を思い出す度、得体の知れない不安が募って、なかなか眠れなかった。

とにかく自分も早く出て、彼に会おう。
直希はそう決意して、ベッドから勢いよく降りた。


しかし。


楽屋に入った直希が見たのは、誰も居らず静まり返った室内だった。
念の為に少し奥に入ってみると…
そこには、確かに大河の荷物が置かれており、コートもかかっていた。
確かに大河は来ている。メッセージの時間を見る限り、3時間近く前には。

そしてふと思いついたのは、ある場所。

早く着いたならば、恐らくあそこに居るだろうと。
3時間も早く楽屋ですることなどない。自分の予想が正しければ、大河が早く来た理由は、自分の迎えを避けるためなのだから。
きっとそこに居るだろうと直希が楽屋を出ようとすると、
ガチャっと、ドアが開いて……

「わぁ!直希?!」

一番乗りだと信じて疑わなかったらしき拓郎が、驚きの声をあげた。

「あ、おはよ…」

バッドタイミングだと内心ため息を吐きながら、直希は曖昧に笑った。

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