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「極夜(直×大)」
3:報い

3-4

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大河の体が、突然ガクンと崩れ落ちて。

「大河!」

陸を筆頭に、その場に居た多くの人間が、その名を呼んだ。

「大河、おいっ、分かるか?」

大河を抱きとめながらしゃがみ込んだ陸が優しく体を揺すっても、大河はピクリとも反応しなくなっていて。
額に手を遣った陸は、あまりの高熱に顔色はさらに青ざめた。
まだすぐ傍に居た直希は、自分も跪き、ダラリと下がっている大河の右手に手を伸ばす。

「大河、ねぇ…」

手首を軽く揺すって、震える声で呼びかけるが。
やはり、大河の反応は無かった。

「陸さん、そこに寝かせてあげてください」

駆け寄った番組プロデューサーが、前室に置かれた長椅子を示してそう指示をして。

「救急車呼んで!」

スタッフの一人に告げる。
その言葉が、自棄にスタジオ内に響いて。
駆け寄った誰もが、無言になっていた。

陸はそっと大河の体を寝かせると、自分が着ていたジャケットを大河にかけてやった。
動かなくなった大河の顔に血の気は無く、直希の心に、言いようの無い恐怖が押し寄せくる。

何故ここまで、自分は気付いてやれなかったのか。
何故ここまで、彼は言ってくれなかったのか。
寧ろ、あろうことか、自分と距離を置こうだなんて……

「どこが風邪だよ…」

そっと、頬に手を伸ばす。
瞬間、全員の視線が直希のその行動に集中した。

「直希…おい」

スタッフも大勢居る場でそれはまずいと、陸が小声で直希を制する。
しかし、動揺と恐怖と後悔に苛まれた直希には、何も聞こえない。

「どこが大丈夫だよ」

開かない瞼を、親指でなぞって。

「ぜんぜん大丈夫じゃないじゃないか」

髪を撫でながら額に手を遣り、その熱さに震えるようなため息を吐いて項垂れて。

「バカ…」

彼の手を、祈るような想いで握った。
そして何度も何度も、その髪を撫でていた。

―――大河…




救急車はそれから間も無く現れ、直希の手から大河は引き離された。
付き添う陸と高瀬が立ち上がり、そのまま去って行く。
直希は跪いたままそれを見送るしかできない。

大河が、自分の知らない所へ行く。
そんな、漠然とした不安が押し寄せて……

―――置いていくなよ…

「直希…?」

誠が、気遣うように隣にしゃがんできた。
同じように、傍に居た幸樹も近づいて、

「大丈夫か?」

肩に手を置くと、ようやく直希も2人に顔を向ける。

「あいつは大丈夫や」
「………」
「ったく、どこまでも騒がしい奴やなぁ?」

この場にはそぐわないことは十分承知していたが、直希の悲痛な姿を見ていると、誠はどうにかして空気を和らげてやりたかった。
だから幸樹も、力なくはあるが合わせて笑う。
しかし。

「何も言ってくれなかったんだ…」

直希にはやはり、それは野暮だった。

「俺が、何かおかしいって、本当は調子悪いんじゃないかって、何度も訊いたのに」
「…え?」
「いつも"大丈夫"って」

また俯いた直希の顔には、どこか悔しそうな色も混じっているように、誠には思えた。

「俺には頼れって、言ってるのに……」
「直希…?」
「俺には頼っていいんだって、そうしてくれって、何度も…」

その顔を見れば、その言葉を聞けば。
幸樹ですら、大河と直希の"ただならぬ関係"を確信するというもので。
もちろん、それでも気付かない人間は数人居るが。少なくとも幸樹は、気付いた。

「直希」

誠が、直希の頭を撫でる。

「それはお前が、アイツと同じ立場やからやろ?」

誠の言葉に、直希が顔を上げた。

「体を気遣ってもらうことはあっても、気遣うなんてありえへん。俺たちの仕事は、そういう仕事なんや」

もちろん大河は極端だけどな、と少し笑って。

「お前を、認めてる証拠やろ」

敬意を持って対等に見ている証拠だと、そう諭した。
それは、本来ならば何より嬉しい言葉かもしれないが。
今この状況下では、直希はそうは思えなかった。

「でも俺にとっては、たった一人の人だ」

仕事なら取り返しがつくけれど、大河は違う。

「大切な人を守れなければ、何の意味も無い」

誤魔化しようの無い言葉を、訴えるように直希は吐いた。
誠は、何も言い返せない。
すると、

「そうやな」

すぐ傍で聞いていた、誠と同じ顔はしているが別人の実が、しゃがんで直希の頭を撫でながらそう言って、

「お前らは、ちょっと例外なのかもな」

正々堂々と宣言した直希に、大した奴だと小さく笑えば、

「なるほどな」

誠も口元を片方だけ上げて、こういう表情はやっぱり双子だと言われるその笑い方で、呟いた。


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