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「極夜(直×大)」
4:極夜

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それから、陸と別れた直希は、そのまままっすぐ帰宅した。
夕飯になりそうなものを探して冷凍庫を開けると、中に入っていたチャーハンに目がとまる。
それは、先週大河が作ってくれたもの。食べきれない分を冷凍しておいたのだ。
チャーハンを皿に移して、レンジで温めながら、あの日のキッチンでの光景を思い出す。
そういえばあれは、木曜の出来事。ちょうど1週間前。
キッチンで邪魔をする直希に文句をつけながらも、大河は手際よくたくさん作ってくれて。
彼はよく笑い、そしてとても元気だった。
まさかこんなことになるなんて、

『俺たち、しばらく距離を置かんか?』
『しばらく離れて、考え直してみいひんか?」』

そんなことを言い出すなんて、微塵も感じさせなかった。
だってあの日、

『来月の半年記念は忙しくて無理そうだけど、1周年記念はさ、温泉でも行こうな』
『休みやったらな』

ベッドの中で抱き合って、そう約束したはずなのに。
そこで思い出す、帰り際の陸の言葉。

『大河が、"それはマズい"って…』

それは、大河が倒れたときにとった直希の言動で、大河と直希の関係が、ユニット内の大部分の人間に確信されてしまっただろうと。疑惑ではなく、確信に。そう陸に告げられた大河が、焦ったように言った言葉だという。

『直希には、引き返す道が必要やって。兄貴何とかしてくれ、って、必死に…』

戸惑う直希に、本当に言い辛そうに陸は眉を下げて、

『まるで、別れるつもりみたいな言い方やった』

はっきりとそう言った。

「俺が引き返す道って、何だよ…」

チャーハンに八つ当たりするように、レンゲで乱暴に掬って口に運ぶ。大河の愛情が感じられる手料理は、いつも自分を幸せにしてくれるはずなのに、今夜はただただ胸が痛い。
すると、

Prrrrrr♪

スマホが突然、着信を告げて。
画面を見た直希は、表示された相手に首を傾げながら出た。

「はい」
『あ、直希?』

こんな時間にごめん、と、電話の向こうの相手が珍しく素直に謝ってくる。

「いいよ、どうした?幸樹」

直希はチャーハンを食べつつも、電話の相手―――幸樹に話を促すと、

『じつは俺、大河のことで、直希に謝りたいことがあって』

言いにくそうに、幸樹がそう切り出した。
"大河"という名前と"謝りたい"という言葉に、直希は思わず食べる手が止まる。

「謝りたいこと?」
『あのさ―――』





自宅に戻った陸は、途中で買った夕飯を食べながら、直希の言葉を考えていた。

『まるで、別れるつもりみたいな言い方やった』

病院の談話エリアに並んで座り、大河が目を覚ましたときにした会話を陸が打ち明けると、直希は戸惑いを見せて。
明らかに動揺しながらも、彼はどこか思い当たるような表情も見せた。
だから、

『何か、揉めとることでもあるんか?』

そう問いかけると、直希は静かに首を左右に振り、

『でも大河は、俺にも"距離を置きたい"って言ってきました』

途方に暮れたようにため息を吐いた。

『心当たりは?』
『ありません。でも、何かに怒ってるとかじゃなく、俺を遠ざけるような言い方でした』
『遠ざける?』
『なんていうか、必死で俺の視界から逃げるように。今思えば、自分の体調が悪いこと、悟られたくなかったようにも…』

それは、あまりにも大河らしいと陸は思った。

『ありえるな。お前に負担かけたくないんやろ。自分の健康管理に集中すべきやし』

だからそう答えたのだが。
直希が返したのは、意外な言葉で。

『でも俺に、サインをくれてたかもしれないんです』
『え?』
『ここ何日か、大河は俺に、何か言いたそうな顔することがあって。でもそれはほんの一瞬で、無意識にというか……だから、すぐにパッと変えるんです。今思えば絶対におかしいのに、俺は他のことに夢中で気付いてやれませんでした』

そう言って、直希は悔しそうに唇を噛み締めていた。
直希の言うことが本当ならば、大河がそんな事をするなんて貴重なことだと陸は思った。
体調不良を、自己管理も出来ない恥ずかしいことだと考える大河は、誰にも気付かれない様に一人で解決しようとする。だから多くの人間は大河がタフだと思っていて、本当はそこまで丈夫ではないことを知っているのは限られた人間だけなのだ。
それが、無意識に直希を頼るなんて…
本当に、直希は大河にとって大切な支えなのだと、陸は痛感した。
それなのに、その直希を遠ざけようとするなんて……

『メンドくさい奴でゴメンな?』

きっと直希なら、大河に言われるがまま引き下がるわけはないと信じている分、そんな言葉が出る。
しかし、

『まあでも直希、ホンマにこの際、距離を置くのもええかもな?』

少し酷な言い方かもしれないことを承知で、陸はそう言った。
案の定直希は眉をひそめて見つめてきたが、陸はそれでもはっきりと告げた。

『アイツのことでお前がいちいち動揺しとったら、必ず破綻がくる。それはお互いにな。お前が思う以上に、大河は複雑な奴や。ありえへん角度で、突拍子も無いこと考えたり行動したりする奴や。それにいちいちお前が振り回されてたら、それは良い関係とはいえない』

付き合いだして5カ月、そろそろこの2人は、この先の付き合いを考える時を迎えている気がする。

『お前はアイツのことずっと好きで、思いが通じた嬉しさで突っ走ってきたんかもしれんけどな?ホンマにお前の相手はアイツなんか?もしかしたら大河は、お前を見てて何か感じたんやないかな。だから、引き返す道が必要やって思ったんやないか?
客観的に、考えてみた方がええ時期やと思うで』

2人が互いを想い合っているのはじゅうぶん分かるが、その行く末に何か懸念事項が大河には生まれているのだろうと陸は確信していた。

『時間はいくらだってある。よく考えろ』

その言葉に、直希は何も答えず、頷きもしなかった。

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