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「極夜(直×大)」
5:決意

5-1

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【5:決意】

12月11日。金曜日。
直希は、地方でのロケのために朝いちの新幹線に乗り込んでいた。
陸からは特に連絡はなく、直希も、特に何も連絡しなかった。なぜなら自分は、陸に、大河との関係をもう一度考え直せと言われている身だ。いちいち気にしてることを気付かれたら、何を言われるか分かったもんじゃない。

大河からもまた、連絡はなかった。
仲間たちはそれぞれ、大河の負担を考慮して"返事は要らない"という言葉と共にメッセージを送っており、直希も然りだ。読んだ形跡さえあれば、それが彼が意識を戻してスマホを開く元気は出た証拠なのだから。
しかし、今の段階ではまだ、彼が読んだ形跡もない。

「ホントに大丈夫なのかよ…」

新幹線の窓を眺めながら、直希はポツリと呟く。
すると、ミニテーブルに置いたスマホが突然振動して。
慌てて手に取るが、それは大河ではなかった。

『日曜日、午後ならいつでも大丈夫です。待ってますね~(^^)』

それは、例の女性からだった。

『ありがとうございます。また明日にでも連絡します』

それだけを返して、直希はまた大河のトーク画面を出した。
やはり、まだ読まれていなかった。





大河は、ベッドの上でスマホを握りしめていた。
昨日の件でみんな心配していたから、少し調子が戻ってからでいいから連絡してやれと、高瀬に言われたのは今朝のこと。事務所に向かう前にわざわざ寄って着替えを持ってきてくれた高瀬は、昨日より少しだけ生気を取り戻して目の焦点も定まっている大河にホッとした顔を見せ、頭をぐりぐり撫でながらそう言ってきた。
だからとりあえずスマホを開こうとしたのだが、

「充電器も…持ってきて欲しかったなぁ」

真っ暗な画面のままうんともすんとも言わないスマホに、大河は苦笑いをした。





現地に着き、打ち合わせとリハーサルを終えた直希は、そのままスタッフらと夕飯を摂り、20時過ぎにホテルに入った。
部屋に入ってすぐ、ベッドにボスンと仰向けに倒れ込む。
明日、直希が出演するのは、先輩俳優との即興劇番組。以前ドラマで共演したその俳優から指名を受け、今回ゲスト出演するのだ。

『頼むね』

番組プロデューサーがそう言いながら肩に置いてきた手が、やけに重く感じた。
自分がメンタル的に弱いことは、じゅうぶん分かっている。デビュー時代から言われてきたことだ。リハーサルの天才、と揶揄されたこともある。
それは現在でも直希の課題で、そこを克服できれば、ユニットでもバンドでもグループ自体のステップアップに繋がるだろうと。

―――まだまだだよなぁ、俺…

大きなため息が出る。

―――大河も陸さんも、このプレッシャーと闘ったってのに…

この即興劇には、大河も陸も出演したことがある。だから当然、この緊張感を味わっていて。それに打ち勝った2人は、どちらも高評価を得ているのだ。
自分だって、このプレッシャーに勝たなければいけないのに。

そこで、不意に。

『プレッシャーになんて、勝つ必要ないで』

そんな声が、頭に浮かんで。

『勝てるわけないし』

そういえば、あれは―――

直希はベッドから飛び起きて、バッグを漁った。
あれからずっと、必ず持ち歩いているもの。

それは、バッグの内側のミニポケットに入っていた。
事務所のロゴが大きく入った、手帳型の小さなメモ帳。事務所の備品のひとつだ。
表紙を開くと―――
1枚目のページに書かれた、少しクセのある文字。

"プレッシャーを感じるのは、成長の証!
 プレッシャーをかけられるのは、期待されてる証!!"

そして、隅に小さく書かれた"Taiga"。

あれは確か、直希がPOLYGONに加入して1年が経った頃。バンドにはまだ加入していなかった頃のことだった。
インディーズデビューを果たしたRAGING THIRSTのミニライブに、サポートミュージシャンという形でベースを担当することになった直希は、今日と同じように緊張していて。前日のリハを終え、外のベンチでひとりぼんやりしていた直希に声をかけてきたのが、大河だった。
どこをウロウロしていたのかは分からないが突然現れた彼は、もしかしたら自分が一人になるまで時間を潰してくれていたのかもしれない。そう思えるほど、絶妙なタイミングで現れて。

『大丈夫か?』

何を緊張してるのだと喝を入れられるかと覚悟した直希の予想に反して、肩に置かれた手も声も、ひたすら優しかった。
そんな彼の温かさに引き出されるように、気が付けば直希は、全て話してしまっていた。
そんな直希に大河は、

『プレッシャーになんて、勝つ必要ないで。勝てるわけないし』

その言葉を吐いて。

『プレッシャーを感じるのは、成長してる証や。力が無ければ最初から諦めるやろ?
それだけの力があるからこそ、プレッシャーも強くなる。周りからも期待される』

押し付けがましくない、いつもの軽い口調と笑顔で、そう言って頭を撫でられた。
自分だって、プレッシャーに押し潰されそうになることは何度もあるのだと。

『プレッシャー感じるたびに、そう思ってごらん。めっちゃやる気出るで』

その瞬間、直希は、やっと笑顔になれた。
大河の言う通り、"やってやろう"という気持ちにもなれた。
だから、

『大河、さっきの言葉、ここに書いて』

車で送ってくれるという彼と歩きながら、このメモ帳を大河に渡した。

『俺がいつでも思い出せるように』

すると大河は、車に乗り込んですぐ、窓を台がわりにしてサラサラっと書いてくれた。
それが、このメッセージだ。それ以来、このメモ帳は直希の宝物となって。一切手をつけずに、いつもバッグに入れて持ち歩いている。

「大河…」

メッセージを見つめて、呟く。
いつでも彼は、こうして自分に光をくれる。
いつでも彼は、自分の欲しい言葉をくれる。
だからあの時だって、しみじみと思ったのだ。

好きだな―――と。

もうあの時は自分の気持ちなんてしっかり自覚していたし、それが叶わない恋だとわかっていた。
まさか彼と想いを通わせ合うなんて、夢にも思っていなかった。
それでも改めて、そう思ったのだ。
この人をちゃんと好きになろう、と。

メモ帳の文字をひと撫でしてから閉じてまたしまうと、直希はおもむろにスマホを開き、メッセージを打ち始めた。
相手は、あの女性。

『日曜の夜に行きます。よろしくお願いします』

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