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「極夜(直×大)」
6:親愛

6-1

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【6:親愛】

12月13日。日曜日。

3日間の仕事を、直希はしっかりとこなした。
土曜日の即興劇も上手くまとまり、先輩俳優からも番組プロデューサーからも喜んでもらえて。そして今日も、その俳優がパーソナリティーを務めるラジオへのゲスト出演でも、収録は大いに盛り上がり。またぜひ一緒に!なんていう嬉しい言葉ももらい、直希は手応えを感じながら天野マネージャーと共に帰りの新幹線に乗り込んだ。
新幹線に乗り込んですぐ、直希は大河にメッセージを送っていた。

『退院できた?もし帰れてるなら、寄ってもいいかな』

大河は熱さえ下がれば退院できると、高瀬経由で直希は天野マネージャーから聞いていた。昼間の段階では退院できるまで熱が下がりきらなかったようで、明日になるかもしれないとのことだったが。
スマホが告げた、大河からの着信は…

『帰るで。だから、直希が大変じゃなかったらエエよ』

意外にもアッサリと、承諾するもので。
あんなにも自分を遠ざけた彼とは思えないその返事が、逆に、直希を不安にさせた。
まるで彼が、何かを"決意"したような。

―――でも、俺だって、決めたんだ

そう、自分だって決意したことがある。

『少しだけ寄り道していくけど、20時半ぐらいには行けると思う』

東京駅に着くのは18時予定で、それからタクシーでいったん事務所に戻ってスケジュールを確認し、例の女性と会ったとして、恐らくそれまでには着くだろうとメッセージを送った。





高瀬の代わりに来てくれた陸の付き添いで、大河は退院した。事務所内の会議でどうしても抜けられなくなった高瀬は、病院に頼んで時間を遅らせてもらっていたのだが、いつまでも終わらなそうな気配を察し、ちょうど事務所内に居た陸に頼んでくれていたのだ。
仕事を抜けて陸が来たのは19時近くて、それから会計をして、病院を出たのは20時近く。どう考えても、着くのは約束の20時半を越すだろう。
大幅に遅れるようなら直希に連絡をするべきかと思いながら、ふと大河は、彼からの返信内容を思い出した。
今日来ると言う直希は、どこかに寄ってから来るらしく。それでも今日のうちに自分と話をつけたいらしい。
別れ話ならば、確かに引き延ばすべきではないだろう。何せあと10日もすれば、世間はクリスマスだ。

「何考えてるん?」

運転している陸が、不意に声をかけて来た。

「ん?別に何も」

大河は適当にはぐらかしたものの、そんな言葉で負けないのが兄で。

「何もって、何かしら考えとるやろ」

確信犯の笑みで、そう返される。
大河はそれを、沈黙という手段で逃げた。
すると陸はフッと笑い、

「これは俺のひとり言やけど」

だから聞き流してもええで、と話し出す。

「もう少し、直希を頼ったらどうや?」

その言葉に、大河はゆっくりと顔を向けた。
陸もチラリと視線を向けてくる。

「今回の件で、誰よりもショック受けて動揺してたのは、間違いなくアイツや。
お前にもしものことがあったら、アイツはおかしくなるかも分からんぞ?」
「……そんなこと…」
「お前は見てなかったからそう言うんや。お前より死にそうな顔しとったで」
「…………」
「俺らがお前に付き添って居なくなった後も、アイツ、はっきり言ったらしいわ。お前は特別、って。無意識になんやろうけど。
誠とか実が、ああいう考え方もありなんやなって、笑ってたで」

大河の気遣いも分かるけれど、直希の言い分ももっともだと、彼らはそう言っていたという。

「直希を苦しめたくないなら、仕事に集中して欲しいなら頼れ。そうすればお前も楽やし、直希も嬉しいやろ。
負担とか迷惑かけたくないのも分かるけど、お前はストイック過ぎるで」

そして頭を撫でられた。
しかし大河は、何も答えられなかった。
今日で自分たちは終わるかもしれないとは、さすがに言えなかった。





直希が大河のマンションに着いたのは、予想通り20時半だった。
しかし、部屋のインターホンを鳴らしても返事はなく。電話をかけても、大河は出ない。
こんな時間まで病院にいるわけはなく、とっくに帰っているはずなのに。
退院したばかりの大河が寄り道をするはずは無いし、直希が来ることを承諾しておいて逃げるはずもない。そもそも大河はそういう人間ではない。

何かあったのだろうか。

そんな思いが沸き起こると同時に、不安が押し寄せて。
急に熱がぶり返したとか、退院が伸びたとか。でもそんなことが起きたなら、連絡が来るはずだ。
ならば、ここへ向かう途中で何か…

扉の前で立ち尽くし、思うのは、最後に見た大河の姿。固く目を閉じて青白い顔で、ピクリともしなかった彼。
あれから自分は彼とはメッセージのやりとりだけで、目を覚ましたところを確認したわけではない。
本当にあのメッセージは大河だったのかと、それすら疑わしくなってくる。自分が見ていた、都合の良い幻なんじゃないかとすら。
そう思うと、これまでのメッセージのやりとりを確認することすら怖くなってきて。
そんなものもし存在していなかったら、そんな現実が待っていたら、なんて……

「どこいるんだよ……」

ポツリと、そう呟いた時だった。
奥のエレベーターが、この階で止まった音がして。
誰かが降りてくる足音がして、何となく顔を向けると―――

「あ…」

直希の視線の先で立ち止まったその人物は、直希が会いにきた相手に間違いはなく。
これも幻なんだろうかと、まだ半信半疑の状態で見つめていると、

「ごめん、待ったか?」

申し訳なさそうに眉を下げた彼はこちらへ近づいてきたが、ジッと見つめてくる直希に、不審感たっぷりにまた立ち止まってしまった。

―――大河…

縮まらなくなった距離が、直希をまた不安にさせて。
目の前の彼が、瞬きをした瞬間に、消えてしまうような気がして。

「直希?」
「大河…」

―――ああ、だめだ…

「大河……っ」

―――この人しか、愛せない

幻でなんてあってたまるかと、たとえそうでも捕まえてみせると。
気付けば直希は、駆け出していた。

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