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「極夜(直×大)」
6:親愛

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カップを置いてソファを掴む大河の横顔は、何かを言い出そうとしている。
それは決して、口にさせたくないのに。

「直希は、そんな事しなくてエエよ」

諦めたような声で、笑みすら浮かべた大河に。こんなときでもやっぱり笑う大河に。
胸が痛くて、直希は情けなくも声が出ない。
無言の直希に、大河は視線を預ける余裕は無く。ソファの上で拳を握り締めながら、必死で自分の言い分を続ける。

「今回のことでホンマに反省したし、二度とこんなヘマはしない。
お前に心配かけるようなことにならないようにする。約束するから」

だから、

「だからもう、勘弁して…」

声が、小さく震えた。
これ以上優しくしないで欲しい、自分のことで心を痛めないで欲しい。こんなの、自分だって惨めだ。
潔く、切り捨てて欲しい……

しかし、直希には大河の言葉が分からなくて。

「何が…?」

自分の言い方が彼を追い詰めたのかと、顔を覗き込む。
こちらを見ない大河だが、彼の覚悟は、その横顔からも感じられて。

「嫌だよ」

直希は、そっと大河に手を重ね、そのままぎゅっと握りしめた。

「知ってなきゃ、何も対処できない。そしたら俺は、動揺するだけだ」

自分の知らない事態が起きた時、またこうしてショックを受けるだけで。それではダメなのだと、陸からも言われた。
大河の複雑な性格も、意外とヤワな体も、理解してドンと構える余裕を身につけなければ、続かないのだと。
無理なら、これを機に別れろと―――

「ねぇ大河。何も考えず、ただ素直に答えて欲しいんだけど」

そっと頬に触れて、顔を上げさせる。
やっと合った揺れる瞳は、先ほどの突き離すような言葉とは裏腹に、自分を求めてくれているようで。この数日自分が見逃してきた大河の瞳も同じだったと、直希は改めて確信すると同時に、見逃したことへの後悔も感じた。
もうこんなことがないように、お互いの関係を、絆を、変えていくことが必要だ。
だから、

「大河は、俺が好き?」

ストレートに、そう問うと。
ビクッと肩を揺らした大河は、分かりやすく動揺を見せたが、

「好き?5ヶ月前、俺に言ってくれた時と変わってない?」

切実な想いを込めてもう一度問えば。
小さく、しかししっかりと、大河が頷いて。

「じゃあ、俺の気持ち、信じてる?」

今度はそう問うと、

「…………」

視線は逸らされた。

「俺に、何か訊きたいこと、あるよね?」
「…………」
「俺が、女に心変わりした。って?」

その言葉に、大河はまた肩を震わせ、そして直希を見上げた。

「それで大河は、身を引こうとしたんだよね」

何故直希がそこまで知っているのかと大河は思ったが、きっと幸樹だろうとすぐに勘付いた。自分にも詫びのメッセージを送ってきた奴だ、きっと直希にも、大河という相手が居ながらどうしてだと責めたのかも知れない。
もしもそれで幸樹と直希の仲に亀裂でも入ったらと、また余計な心配が沸き起これば、

「幸樹か?アイツから聞いた?」

思わず、そこを気にしてしまう。

「誰からだっていいだろ。どちらにせよ、そうなんだよね?」
「幸樹は、何も知らんかっただけで、アイツには俺からちゃんと話を…」
「何の話?」
「いやだから、アイツのことは責めるなって…」
「誰もそんな話してないよ」

まるで別れる前提のような話に、直希もすぐに気付いて。

「だいたい、何で幸樹庇うの」

幸樹がマズイ立場にならないようにと庇う姿が、何だか苛立った。
そもそも、だ。

「身を引くつもりだがなんだか知らないけど、勝手に俺の次の相手の話なんてするなよ。
俺以外の奴と2人で、何話してんの?相手が幸樹だから良かったけど、もしもそれが大河に気のある奴だったら、どうなってたか」

直希自身が大河の心の隙を狙っていた過去がある分、そういう人間が少なからず居ることは知っている。そういう奴らを出し抜けて、あの頃の自分は大河の隣を死守してきたのだから。
もちろんこのユニットには実という危険人物以外には該当者は居ないし、その実だって自分たちの関係を本気で邪魔しようとしているわけではない、寧ろ何かと見守ってくれている。千田に関しても、大河の方にやましい過去があるとはいえ、それなりに解決はしている。
しかし、友好関係の多い大河だ、いくらだって可能性はある。直希が思いつく限りでも数人は。

「相手が男だろうが女だろうが、恋愛に優劣なんてないだろ。
じゃあ大河は、女の子好きになったら俺を捨てんの?俺に"身を引いてくれ"って言うってこと?」
「そんなこと…」
「ほら。なのに何で俺だと、大河が引き下がるわけ?」

正論で問えば、大河は黙り込んだ。

「体調悪いのに、人の心配ばっかして。
その結果、俺を遠ざけるなんて、一人を選ぼうとするなんて、どうかしてるよ」

辛い時ほど、傍に居てあげたい。自分の知らないところで苦しむなんて、絶対にさせたくない。
そうだ、自分は…

「大河、俺さ」

言うべきことがある。

「わかったことがあるって言ったよね」

直希は大河の両腕に触れて体を少し傾けさせ、自分も傾け、向き合った。

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