2-5

「大河は、彼女と居るときと俺と居るときと、どっちが楽？」

こんな言い方よくないかもしれないけど、と言いつつも、そう訊ねられて。
答えるまでもなかった。
実際、彼女と居るのが辛くて、直希や仲間に逃げていたのだから。
そんな大河の沈黙を、正確に読み取った直希は、

「ねえ、大河」

言葉なく俯いてしまった大河の顔にそっと触れて、自分の目線に再び向けさせる。
大河は、既に思考回路が停止していた。
完全に直希のペースだと、どこかで警告音が鳴っていることは分かっているのに、頬に触れる彼の手の平から伝わる熱が、大河に反論の余地を与えてくれなかった。

「俺のこと、まだそういう対象で見れなくていいよ。しょうがないし、それは。俺と居るのが楽だって言うなら、今はそれでじゅうぶんだよ。
でも、これからのことまで、ここで決めないで欲しいんだ」
「……え？」
「俺なら絶対、大河を大切にできる。いつも一緒に居るから理解だってしてあげられる。
だから、俺と試してみない？」
「試す……？」
「俺をそういう目で見れるか、これからはそういうつもりで、傍に居てみない？それでダメなら、それは仕方ない。俺も諦めるから」

要は、試しに付き合ってほしいと。

「彼女と別れて、俺を見てくれない？」

はっきりと、そう言われた。
そして大河はやっぱり、直希を見つめるしかできなかった。
だからそのまま彼に抱きしめられても、一切拒めなくて。

「付き合おう、俺たち。絶対うまくいくから」

そんな断言をされてしまえば。
誰よりも信頼している相棒が、そう言うのならば、なんて。
自分の答えは、彼の望む方向へと進んで―――

「―――」

気がついたら大河は、頷いていた。