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「reward(直×大)」
1:戻った日常

1-1

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【1:戻った日常】

『もうバッチリ。今、高ちゃんの運転でそっち向かってるで。
予定通り、今日から復帰するよ』

久しぶりの、POLYGON特番収録スタジオの楽屋。
同じ局内で仕事をこなしてから楽屋に訪れた直希は、1時間ほど前に送られてきたらしきそのメッセージを何度も見返し、思わず笑顔になった。

『待ってるよ。俺も最初の仕事がちょうど終わったとこ』

そう返すと、

「何、大河か?」

隣の幸田が、ニヤニヤと覗き込んでくる。

「な…っ、見んなよアキさんっ」
「いーじゃん。どうせ"これから行くわよ"コールだろぉ?」

ちょうど2週間前、このスタジオで救急車&入院騒ぎを起こした大河もすっかり回復し、今日は念のため病院で診察を受けることになっていた。
大河のメッセージにあった"バッチリ"とは、病院からも復帰OKをもらったという意味で、今日から撮影に参加する。どうにもならないスケジュールに関しては今回は仕方なく大河抜きで撮影がされたものの、敏腕マネージャー陣のおかげで大部分のスケジュールは組み直され、大きな影響も受けなかった。

「お騒がせ大河クンが復帰か。お前の部屋に入り浸ってたみたいやけどな?いや、それともお前が連れ込んだのか?」

直希のSNSを見ていたらしき誠が、ニヤりと笑いながらせんべいを齧った。それをまた、鹿野と幸樹が笑っている。
大河本人からも今日から戻る予定であることは仲間たちに知らされていたせいか、直希はこんな風に、いちいちみんなに"よかったね"という言葉とともに冷やかされ続けている。そしてくどいようだが、拓郎と千田は気付いていないので、純粋に"よかったよかった"と笑っているだけである。
そんな鈍感コンビはさておいて。直希がそうやって冷やかされるのは、バレる行動をとってしまった彼本人のせいだ。もともと直希は、この仲間にだったらいつ知られても構わないと思っていて、慎重にいくべきだという陸の助言と大河の希望によって黙っていただけだが。
そんな自分たちの関係が自分のせいで仲間にバレてしまったことは大河にも知られたし、特に彼からお叱りは受けなかったものの、

「俺はいいけど、大河のことはあんまり刺激すんなよ?」

顔を真っ赤にして慌てる姿は可愛らしくて好きではあるが、恥ずかしすぎて大河がキレたりでもしたら大変なのは自分なのだ。少しずつ慣れていってもらわないと、仕事中は一切自分に近寄ってくれなくなる危険性がある。
彼の周りに他の男が群がるなんてとんでもないとばかりに直希が釘を刺せば、幸田が楽しそうに笑いながら頭を撫でてきた。

「はいはい。ヤンキーには逆らいませんよ~」
「誰がヤンキーだっ。つーか、ヤンキーと思ってんなら頭を撫でんな」
「じゃあチャラ男か?いずれにしても、違った意味でヤンチャ者同士のカップルなんてな、怖くて誰も手ぇ出さないから安心しろ」

と、最高のおもちゃを見つけたかのような幸田に直希がさんざんいじられていると、また大河からメッセージが入った。

『俺らはこれから昼メシ食って行くつもりやけど、直希どうすんの?ちゃんと食ったか?』

そんな、相変わらず自分を気遣う彼らしい文面に、またもや笑みが漏れる。
直希は、鹿野まで巻き込んでスマホを覗き込もうとする幸田から体を離すと、さっと返信した。

『楽屋に弁当あるよ。だから大河たちもまっすぐおいで』
『あ、そうなんや?俺の分もあるの?』
『もちろんあるよ。廉が前の現場でメシ食ってくるらしいから、もしよければ高さんも弁当どお?』
『オッケー。りょーかい』

「え、大河、何だって?」
「だから見るなっつーの」

遠慮の無いツッコミを入れると、幸田と鹿野が「やっぱヤンキーだよ~」と笑いながら去っていく。何かと鬱陶しいがいざとなれば強い味方の仲間たちに、直希がやれやれと苦笑いをしていると、また着信。

『弁当って、何系?』

大河だ。

『チキン南蛮だよ。クリスマスだけにチキン』

と返してやれば、なんだかよくわからないスタンプが返ってきてまた笑った。
そんな大河が、

『俺、めっちゃお前が好きや』

しみじみとそう言ってくれたのは、11日前の夜。彼の誕生日前夜のこと。退院した彼を待ち伏せて指輪を渡した自分に、彼は笑顔で受け取るだけでなくそんな言葉もくれた。
その数日前に、大河から"距離をおこう"と別れを匂わす発言をされ、話し合う暇も無く彼が倒れてしまったあの一件。それを一気に巻き返すような、幸せな一夜だった。あのとき交わしたキスも抱きしめた彼の感触も、全てが直希の目頭を熱くした。
とはいえ、彼は病み上がりで熱もあり、それ以上のことをするわけにはいかなくて。
翌日の大河の25歳の誕生日も、もちろん安静状態だった大河とは、結局2人で家でのんびりオフを過ごした。
だから、やっと彼とこれまでどおりの生活に戻れるであろう今夜は、奇しくもクリスマス・イブ。恋人同士になって初めて迎えるイブだ。

―――あ~、早く帰りたい

今日こそは、大河ときちんとした食事を満喫して、それから…

―――やっばいな、俺…

懸命に仕事モードに頭を切り替えようとしても、さっきから気がつくと大河のことを考えている。
ごっそり大河に気持ちを持っていかれている自分を改めて自覚していれば、

「直希、顔」
「直希、表情管理。陸さんにシメられるぞ」
「ニヤけるとさらにチャラいで直希」

幸樹やら幸田やらライバルの実(←勝手に警戒中)にまで注意され、直希は一度両手で大きく頬をパチンとはたいた。





車を降りた大河は、2週間ぶりになるスタジオを見上げた。
2週間前のちょうど今日、自分はタクシーで収録に訪れ、それから数時間後には病院送りになっていた。
今考えればほぼ無意識に動いていた体だったせいか、あの日のことははっきりとは思い出せない。
とはいえ、視覚的な光景としては覚えているわけで。

―――みんなに迷惑かけたよな。何て言えばええかな。

久しぶり?……ていうほど離れていないし。
元気やったか?……それは自分だ。
寒いなぁ?……だから何だ。

普通に"ごめん"といえば済むことなのに、ぐるぐると考え込んでしまうほど、あの一件は大河にとって猛反省すべき出来事。仲間だけじゃなくスタッフにだって心配も迷惑もかけてしまって、それでもみんな嫌な顔せずに対応してくれるから余計に申し訳ない。

「何してんだ?」

車を駐車してきた高瀬が、立ち尽くす大河に声をかけてきた。
振り返った大河は、そういえばこのマネージャーにも相当の迷惑をかけたと実感して。

「ごめんなぁ、高ちゃん」

何の脈略もなく、眉を下げてそう謝れば、

「バカ。何言ってんだよ」

長い付き合いのせいか大河の思考を理解した高瀬が、軽く笑ってその背中を叩く。

「ほら、こんな寒いとこ居たらまた風邪引くぞ」

中に促され、大河はようやくスタジオに入った。

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