「★reward(直×大)【連載中】」
1:戻った日常

1-2

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温かいスタジオ内にホッと息を吐いた大河は、エレベーターを降り、楽屋へと続く廊下を高瀬とともに歩く。
その時だった。

「大河!!」

背後から呼ぶその大きな声に、大河と高瀬が同時にビクリと肩を揺らして。
そしてやはり同時に振り返った瞬間―――

「!!」

大河は、大好きな体温に、ぎゅうっと抱きしめられた。

「ななな、直…」
「おつかれ大河」
「あ、うん、お、おまえも…」

ていうかここはマズイぞと、大河は直希の背中を軽く叩く。
すると直希もスッと体を離したのだが、

「これならいいよな?」

今度は肩をがっちりと抱きこんできた。
そんな直希は、高瀬のことが見えていなかったようで。

「あれ、高さんこんちは」

大河の視線でようやく気付いて、傍で頭を抱えている高瀬にペコリと挨拶をする。

「はいはい、こんちは。ずいぶんと熱烈なお出迎えだな」

高瀬は口の端を上げながら皮肉たっぷりに笑うと、自分の弁当も用意されているという楽屋へとさっさと先に行ってしまった。

「いちゃつくなら場所考えろよ」

まったく…と溜め息まじりに、しかしやっぱり彼も冷やかしの言葉を吐くことは忘れずに。
当然大河は顔を赤くして、

「お前、何してんねん」

嗜めるように直希を見上げる。
すると直希は突然、眩しそうに目を細めて、

「だって、大河がここ戻ってきたって思ったら嬉しくてさ」

そうしみじみと告げた。

「よかった、元気になって」

廊下に現れたその後ろ姿を見た瞬間、やっと心からホッとしたし、何だか分からないが胸が熱くなったのだ。幸いひと気のない廊下だったとはいえ、大河が止めなかったら、あの場で躊躇なくキスするところだった。

―――危なかったぁ…

抱擁だけならまだ誤魔化せるとはいえ、キスしたら誤魔化しなんてきかない。
仲間内だけではなく世間に知られるのはさすがに現状はまずいだろうと、直希は自分の抑制力の弱さに今一度自分を戒める。
それなのに、である。

「お前のおかげやろ」

目の前のこの人は、またもや無自覚で困る。

「大…」
「また助けられたな」

ところ構わず、真剣な自分には真剣に返してくれるものだから、優しい眼差しと素直さを出してくるものだから、こっちの抑制力が弱まるのは当然だ。

「大河、とりあえず移動しよう」

ここでこれ以上刺激されるわけにはいかず、直希は大河の腕を引いて歩き出した。

「ああ、そうやな、チキン南蛮やもんな」

と、好物がメインの弁当を思い出して目を輝かせた大河に、食べ物相手に嫉妬してはいけないと思いつつも直希がイラっとしてしまうのは、不可抗力だった。


しかし。


楽屋には入らず、荷物を置きたがる大河を制して、直希はスタジオ内の仮眠室へと向かった。
2週間前に大河が利用した大部屋の他に、この撮影スタジオには個室がある。スタッフ専用であり出演者は本来使えないが、今日のように閑散としている日は、解放されていることもあって。
だから直希も、このスタジオを利用する日は、休憩時間には大河を連れて2人で籠もったりしていた。もちろん当時は付き合っていなかったから、大河にはそれなりに適当な理由をつけて、2人きりという特別な空間を必死で作っていたのだ。
そういえば3年前のクリスマスも、直希は大河を連れて2人で昼ごはんを食べた。あのときもこのスタジオで一日中収録があって、休憩時間を使って彼を連れ込んだのだ。仕事の後は彼女と会うと言う彼と、自分だけの中とはいえクリスマスを祝いたくて。もちろん大河はそんなこと覚えていないだろうが。
……だが。

「けっこう前やと思うけど、そういえばクリスマスにお前とここでメシ食ったな」
「え?」

意外な言葉が背後からして、ドアを開けかけた直希は思わず振り返った。

「覚えてんの?大河」

当時は自分の気持ちなど微塵も疑っていなかったはずの彼が、そんな些細な出来事を覚えているはずがないのに。
そう思って首を傾げると、大河はフフッと笑って。

「だってお前、クリスマスやからって、売店でチキンとケーキ買ってきてくれたやん」
「………」
「昼メシ頼んだだけなのに、ちゃんと買ってきてくれて。マメやなぁって、コイツモテるやろなぁって、俺思ったもん、そのとき」
「……覚えてたんだ」
「けっこう強烈やったで、あれ。なかなか豪華なやつで驚いたし。いっくらクリスマスとはいえ、仕事の休憩中に、仲間相手にあんなケーキつけるってすごいやろ。
あれってイブやったっけ?クリスマス当日やったっけ?」

どうやらそこは忘れてしまったようだが、あの日の直希の行動はしっかりと覚えていたらしき大河が、おかしそうに笑いながらそう話す。
しかし、ところどころ彼は思い違いをしているようで。

「イブだよ。3年前のね」

それだけをまず教えてやると、直希はドアを開いて大河を中に入れた。

「あ~イブやったかぁ」

3年も前やったかぁ、と、呑気にまだ笑っている大河は、直希に手を引かれるまま室内に入る。

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