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「reward(直×大)」
1:戻った日常

1-3

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直希は大河から奪った荷物をサイドテーブルに置くと、つられるようにそこに視線を移した彼の体を一気に引き寄せて抱きしめた。

「うわっ。直希、ちょっと…」
「俺はさ、そんなマメじゃないよ、大河」
「え?」
「大河にだけでしょ」
「…いやぁ、お前はマメやろ」
「仲間相手にだって、そんなことしない。俺が他の奴らに、マメなことしてるの見たことある?どっちかっていうと無頓着でしょ」
「…ん~、そう言われれば…」
「大河だから、チキンとクリスマスケーキつけただけだよ」
「…え?」
「好きな人と祝いたかっただけだって」

夜には恋人の元へ行ってしまうことを知っていても、どうしても彼と2人で過ごしたくて。

「ちなみに当日は、俺んちで鍋食ったよね?」
「え?」
「朝、プレゼント持ってきてくれたよね」

『モテすぎてフリーの直希くんに、大河サンタやで~』

直希の意中の相手が自分であるなんて夢にも思わなかったであろう大河は、そう言いながら陽気に訪れて。
そんな彼は前日と同じ服で、そして知らないシャンプーの匂いがした。彼女の家に泊まった帰りに寄ってくれたであろうことは、一目瞭然だった。彼女は平日勤務だから、夜だけ過ごして彼女を仕事へ送り出し、自分の所に寄ってくれたのだろうと。
あの日大河がくれたのは、直希が以前彼に冗談で強請ったヘッドフォン。自分が欲しがったものを覚えてくれていたのは素直に嬉しかったが、あの日彼が身にまとっていた"前夜の名残り"に、現実をつきつけられてもいた。
しかし、あの日……

『大河、なんかあった?』

笑顔の大河が何となくいつもと違う気がして、そう問いかけた直希に彼は、

『朝っぱらからケンカしてしまったわ』

視線を逸らして苦笑いをした。
そう。大河はあの頃、当時付き合っていた彼女とギクシャクしていたようで。クリスマス・イブというイベントの力を借りて巻き返そうとしたものの、結局ケンカしてしまい、余計に関係をこじらせてしまっていたのだ。

「不謹慎だけど、俺、チャンスだと思ってさ」
「……」
「だから帰したくなくて、すぐ帰ろうとした大河を引き止めたんだ」

午後の仕事に備えてさっさと帰ろうした彼を昼ご飯に誘い出し、どうせ一緒の現場だからとそのまま仕事に向かい、ついでに夕飯もと鍋に誘った。
仕事帰り、クリスマスムード一色のスーパーで一緒に買い出しをしながら、周囲の視線を引くかのように大河との距離を縮めて。自分たちを知るファンでも居てくれたらいくらでも写真に写り込んでやるから、願わくばそれがどこかのSNSにでも載ってくれやしないかと、大河の彼女に対して失礼とは知りつつズルいことを思った。
見知らぬシャンプーの香りが嫌で、さりげなく彼を風呂に入らせた。
泊まらず帰るという彼を酔わせて、結局泊まらざるをえない状況にした。
そう、あの頃の自分は、"正当な理由"付きでの引き止めしかできなかった。ストレートに"帰らないでくれ"と言えない状況にあった。
それは一昨年も去年も、同じ。大河に新しい彼女ができるのを黙って眺めながら、それでも諦めきれずに、自分はメンバーや相棒という立場を使って彼を引き止めていた。

でも今年は違う。
去年までは夢にも思わなかった幸せな大どんでん返しが、5ヶ月前に起きた。
先日はそれが壊れる危機を迎えてしまったが、乗り越えた今となっては、2人の絆はより濃く深くもなって。
そして今年の自分は、片想いだった去年までの自分よりも更に強く彼を想っているから、

「夜は夜として、今も少しだけ、こうさせて」

彼の体調についてやっと安心できることが、それをこうして当たり前のように触れて確かめられることが本当に嬉しいのだと、腕に力を込める。
また少し痩せた体を優しく撫でて首筋に顔を埋めれば、

「直希…」

大河がギュッと抱き返した。
それだけでまたたまらなくなって。
直希は、大河をベッドに座らせると、

「え…?」

戸惑う彼を尻目に、ゆっくりとその体を押し倒した。

「な、直希、何して…」
「しっ。隣、居るから」

部屋に入る前、隣も使用中であることは気づいていたので、人差し指を口に当てて声を潜める。しかも隣は陸だ。…というのは、大河をこれ以上動揺させたくないので、直希は言わずにいた。
目を丸くして肩を押してくる大河の片手をベッドに縫い付けて指を絡め、もう片方の手で、その白い頬を撫でる。

「大丈夫、俺だってそんなバカじゃないよ」

しかもあと50分もすれば収録が始まる。昼ご飯だってまだだ。いくら"お預け状態"とはいえ、そこは分かっている。

「だから、キスだけ」

それだけはもう我慢できない、と直希は目の前の唇を塞いだ。
大河も素直に目を閉じて、キスを受け入れる。
宣言通りそこまで深いものではないが、それでも想いだけはしっかり伝わって。
自分の手が無意識に大河の体を撫で上げていくことで、直希は、彼を押し倒してキスということすら3週間ぶりであることを実感した。

「ん…はぁ…」

互いから出ていく吐息も熱く、自然に舌を絡めてしまう。そっと目を開いた直希が見たのは、少し苦しそうに眉を寄せながらも舌を差し出して応えてくれている大河の、色っぽい顔。しかもそんな彼の首元のネックレスでは、自分が約10日前にプレゼントした指輪がキラリと光る始末。

「ハハっ…、ヤバイ」

思わず直希は唇を離して、大河の額に自分の額をくっつけた。

「ダメだ、俺」
「直希?」
「考えれば考えるほど、スイッチ超ゆるくなっていく」

何もかもが久しぶりなのだと実感する度に、いちいちたまらなくて。
そしてその全てが、去年までの今日の自分には手に入れられなかったことだと思えば、尚更だ。

「楽屋、戻ろうか」

このままだと本気で暴走しそうで、直希は体を離し、大河の腕も引いて体を起き上がらせてやった。
この短い時間で、突然抱きしめられて押し倒されてキスされて、そしてまた起き上げさせられた大河は、状況についていけないのかぼんやりとしながらポリポリと頭を掻いている。小動物か子供のようなその仕草に、直希は思わず笑った。

「大河大丈夫?」

肩を抱いて覗き込むと、大河がゆっくりと顔を向けてくる。
そして、

「思い出した…」

ぽつりと呟いた。
その意味が分からず直希は首を傾げるが、大河はその先は何も答えずに、そのまま彼を見つめて。
そう、思い出したのだ、あの日の会話を。

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