「reward(直×大)」
3:聖なる夜の思い出

3-2

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暴れる大河をまた「ごめんごめん」と笑いながら抱きとめた直希が、真っ赤になった大河の耳に唇を寄せてくる。

「ありがとう大河」

そのままキスをしてくる彼の、吐息が耳にかかった。
それはとても熱くて…優しくて。

「そんなこと言ってもらえるだけで俺、片想い続けた甲斐あったよ」
「……え?」
「大河のこと好きだって人はきっと他にもいるのにさ、俺は大河の相棒だっていう特権利用してズルいことばっかしたから。さすがに天罰下るかなって、ビビることもあったからさ」
「天罰?」
「そう。俺がフェアじゃないことばっかしてるうちに、たとえばそれが大河にバレて、嫌われるんじゃないかとか」

正直に告白できないくせに、恋人から取り上げる勇気も自信も無いくせに、周囲の目を引く行動をとり続けるなんて良くないと、本当は分かっていたのだ。

「もしくは大河が、俺の気持ちに気付かないまま、別の人と結婚とかしちゃうんじゃないかって…。
ずっとさ、大河が幸せなら良いなんて言い聞かせてたけど、そんなの片想いの自分を慰めるだけの強がりで、本当は全然そんなこと思ってなかったから。大河が俺以外の人と幸せになることが、本当はすごく怖かったから」
「直希…」
「たぶん大河が知ったら引くぐらい、ずっと俺、心の中じゃ大河の彼女たちにえげつない嫉妬ばかりしてた」

そう言いながら、大河の、今は塞いでしまったピアスの穴を軽く食んで。
小さく声を漏らした彼を、強く抱きしめる。

「俺がそこまで大河を想うことに、理由なんて無いよ」

先ほどの大河の発言を拾って、直希は言い聞かせるように告げた。

「自分に価値が無いとか想われる理由がわからないとか、勿体無いだとか。そんなの、俺だって同じ。だから考えるだけ野暮だよ」

好きな相手は自分にとって特別で。だから自分よりもずっと素晴らしい人だと思ってしまう。特に、自分自身に厳しい大河には尚更だろう。
それに、その人の価値なんてものは、相手によって状況によってそれぞれ違うのだ。
そもそも恋というものは、そんなもので推し量って相手を選ぶものではない。

「理屈じゃないだろ、この気持ちは」

気がついたら心が惹かれていて、理由なんて後付けにしかすぎない。
その人だから、全てが愛おしいのだから。

「俺には大河だけ。だから余計な心配してないで、俺のこと好きでいて。俺の傍に居て」

それだけでいいから、それが最高だから。
そう願いながら、彼の右手を取って、薬指に光るリングを撫でる。
すると大河が吸い込まれるように顔を向けてきて、

「そうやな」

頷き、微笑んだ。
そして互いに引き寄せあうようにまた唇を重ねて、大河が上半身を少し捻ったのを合図に抱きしめあう。

「大河、少し横になる?」
「いやホンマに大丈夫。それより腹減った」
「はは、じつは俺も」





風呂からあがって、直希が持ってきてくれた着替えを着て大河がリビングに戻ると、いつのまにかそこは、何事もなかったかのようにいつもの空間に戻っていた。
ソファが汚れることを気にしていた大河のためなのか、直希は余裕がなかったとはいえしっかりとタオルを敷いてくれていたようだ。本当に行動の早い男で、思わず感心してしまう。
そして直希に促され、ソファに腰を下ろす。直希がこの場所の"余韻"を一掃してくれたおかげで、大河は多少の気恥ずかしさを残しつつも、すんなりとそこに収まることができた。

それから、クリスマスらしくピザを注文しようとしたものの、さすがにイブだけあってかなり待たされるとのことで。
結局、クリスマスなんて関係のないラーメン屋の出前で妥協した。

「ん~、やっぱ大河が作ったチャーハンの方が美味いな」

これも悪くはないけど、と、迅速に持ってきてくれた店に失礼なことを言いながら直希が笑う。それを、あんかけ焼きそばを頬張りながら大河が苦笑いで頭をはたいた。

「そういえば、大河の手料理初めて食ったのも、3年前のクリスマスだったかも」

ふと思い出して、スマホをいじり出した直希は、

「ほら」

と、写真データを差し出してくる。
そこには、メインの寄せ鍋と、他に何やらおかずらしきものが並んでいた。

「これ、たぶんイ●スタとかにも載せた気がする」
「何お前、こんなんまで載せてたん?」
「だって超美味かったんだもん。記念記念」

もちろん別の目的もあるが、いちいち言っていたらきりがないので、さすがに直希は言わずにおいた。

「俺さ、鍋なんて市販のスープに具を入れるぐらいしかしたことなかったから、スープの味から自分でつけるなんてすげぇなって思って。しかもこの肉団子とか、超美味かった」
「あ~、これなぁ。最後雑炊とかにしたんかな?」
「それさ、リゾットにしてくれたんだよ。あれ美味かった~」
「リゾットええやろ。で、これ何やったっけ」
「それはね、確か、余った材料できんぴらだっけな、作ってくれたやつだと思う」
「オバはんみたいなもん作ったんやな、俺。あれ、こっちは?」

写真を拡大しながら「こんなん作ったっけ?」と楽しそうな大河を眺めながら、直希は当時の自分を思い出していた。
そう、自分だけの秘密にしている、あの夜のちょっとした出来事を。

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