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「reward(直×大)」
3:聖なる夜の思い出

3-3

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忘れられない、あの日の秘密。


*****


3年前。クリスマスの夜―――

「直希、お前またデカくなったか~?」

縦にばっか伸びてるな~と隣に立つ直希を笑いながら、料理をテーブルに置いてくれた大河と、"アンタに言われたくねーよ"というツッコミを必死で呑み込んで彼を手伝いながらその横顔を眺めていた、あの日の直希。
惚れ惚れするほどの手際で、食器も極力使わずキッチンも大して汚さずに作ってくれた料理は、これで女が落とせるんじゃないかというほどの出来栄えだった。
幼い頃に母を亡くしたらしき安藤兄弟は、父子家庭という環境もあって大河が料理を作るようになったことが理由らしいが、大河が上達しすぎたから兄の陸はきっとあのざまなのだろうと直希は思った。陸は、"輪切り"と言わてドーナツを想像するような料理オンチなのだ。
同じ家庭環境でもここまで違うんだなと痛感しながら、思わず写真を撮った直希に、

「写真なんてええから食え」

苦笑いをした大河は、器にバランスよく具材までよそってくれた。

「何これ、超美味い!」

それは、好きな相手の手料理だからという理由を抜きにして、とにかく美味しくて。
兄の陸も"悔しいけど定期的に食いたくなる"と手離しで認める大河の腕前は、以前拓郎が"喫茶店のバイト時代は大河のまかないがピカイチで美味かった"と言っていたのが、決して大げさなのではないことがすぐに分かった。

「俺こんなん毎日食ってたら超太るかも」
「おお、なら毎日作ってやるから金払えや」
「え~。ちなみにいくら?」
「払う気かいな」

ハハっと豪快に笑う大河は、

「気が向いたらまた作ってやるわ」

いちいち"美味い"と感動して食べる直希の頭をグリグリ撫でながら、そう約束してくれた。彼にとって仲間にご飯を作ることは当たり前のことだったかもしれないが、直希にとってはそれが何よりも嬉しい約束だった。

そして、作ってもらったお礼に洗い物はやる、と宣言した直希が食器を片付けている間に、大河は床に寝転がったまま眠ってしまって。直希が20歳を迎えたことで一緒に酒が飲めたことが嬉しかったのか、大河は強くもない酒をそれなりに飲んだせいもあって、ぐっすりと眠りこけていた。
そんな彼の傍でベッドを背もたれ代わりにして腰を下ろした直希は、地震が起きても目を覚まさなそうな大河の安心しきった寝顔をジッと見つめて。
そしてしみじみ思うのは―――

―――い、胃袋まで掴まれた////

どんどんドツボに嵌まっていく自分の気持ちだった。
困ったなと眉を下げながら、少し伸びたその前髪をよけてやると、大河が小さく身じろぎをする。
そのまま思わず頭を軽く撫でれば、なんだか無償に切なくなって。
規則的な呼吸に吸い込まれるように、直希は無意識に大河へと顔を寄せていき、

―――頼むから起きないで…

それだけを祈りながら、鼻と鼻が触れ合うほどの距離まで近づける。
初めての、キスができるほどの至近距離に。
心臓が、大きく跳ねた。
形の良い眉、閉じた瞼、少し開いた口から香る微かなアルコールの匂い、少しだけ赤らんだ白い肌。その全てに対して沸き上がる欲望は、今にも飛び出していきそうだった。

この人に、自分が抱いている感情を知られたらどうなるのだろうと、ふと考える。
純粋に自分を信頼してくれる彼が、この事実を知ったらどうなるだろうと。
そこにあまり良い結果は生まれないはずだから、思いとどまらなければいけないのに。
次に考えたのは―――

せめて、今だけでも。
今だけでも、勘違いしたい。

そんなもので。
そう考えたら止められなくて、直希は大河の唇へと、自分の唇を寄せていっていた。
もちろんそれは触れるだけのキスだったが、予想よりも柔らかい感触のそれは、一気に直希の体を熱くしていって。

「……ん」

息苦しさを感じたのか大河が小さく唸って顔を背けた瞬間に、直希もハッとして体を離した。

「た、大河、ここで寝たら風邪引くから」

気付かれたわけでもないのに何故か焦りながら、取り繕うように彼の体を揺する。
しかし大河は眉を寄せて、起きようとしない。
そもそも、泊まることが決まった時点で、彼は"床で寝る"といってきかなかったのだ。家主のベッドを使うわけにはいかない、と。
とはいえ彼をこんなところで寝かせて風邪でも引かれたらたまらないし、そもそも自分の方が彼よりも丈夫な体をしていると思うから、

「ねえ、やっぱベッド使ってよ」

もう一度大きく体を揺すれば、やっと目を開いて、

「嫌や。お前が使え」

大きく首を左右に振って、また眠ろうとする。
しかし彼に劣らない頑固者である直希も、譲らなかった。

「大河が使えって。大河が風邪引いたら、責められるのは俺だよ」
「大丈夫や」
「あなたの"大丈夫"はアテにならないんです。なぁ、ほら」
「なら帰る」
「タクシーなんて捕まらないよ、クリスマスの夜なんて。そもそもタクシーは深夜料金だよ、そんな金どこにあるんだよ。俺も酒飲んじゃったから車出せないし」
「う゛~~~」
「唸ってもダメ」
「なら……」

これ以上はエンドレスだと察したらしき大河が出したのは、

「一緒に寝るか?」

とてつもない爆弾。

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