「reward(直×大)」
3:聖なる夜の思い出

3-4

 ←3-3 →『reward』第3章アップ完了
「………へ?」

思わず直希は、目を丸くして硬直してしまった。
しかし大河は当然自覚がないので、当たり前のようにキョトンと見返してくる。

「お前も俺も細いし、何とかなるやろ」
「えっと……大河、あの…」
「ベッドシェアやん。たまにやったりせえへんか?友達とかと」

何てことを言い出すのかと思うと同時に、この男はどんだけ危機感が無いのかと心配にもなる。
もちろん大河は自分への下心なんて疑っていないから、こんなことを言い出すことは分かるが。逆に言えば、男からの自分への下心を微塵も疑わないこの人は、常に危険と隣り合わせということで。

「俺はしたことないけど、大河あるの?」

いちおうそこは確認しておこうかと訊ねると、

「うん」

あっさりと頷かれて。

「俺、いびきも歯軋りもせぇへんし寝相もエエから、評判ええねんで」

ヘヘヘと、またもや呑気に笑う。

「ヤじゃないの?」

重ねて問えば、

「別に。寝てしまえばわからんやん」

あっけらかんと、日常茶飯事だとでもいうかのように頷く彼は、本当に今までよくぞ無事だったと思えるほどだ。ある意味、強運の持ち主なのかもしれない。

「あんまりしないほうがいいよ、そういうの」

だからさりげなく直希がそう忠告をしても、大河はいまいち理解していないようで、

「そんな嫌かなぁ?そんな変?」

直希が嫌がっていると捉えたらしく、首を傾げる始末だ。
そして、

「まあ、なら今の話はナシってことで。俺、ここで…」
「いや、大丈夫」

引き下がろうとした大河を、直希は慌てて遮った。

「わかった。シェアしよう」
「へ?」
「そしたら大河はベッドで寝てくれんでしょ?」
「いや、でもお前、シェアは嫌やって…」
「誰も嫌とは言ってないよ。ほら、体起こして!」

大河を隣にして安眠できる自信はなかったが、それでも彼の方から転がってきたチャンスを拒否する理由はないので、直希はその腕を引いて背後のベッドに引き上げた。

ベッドに入った瞬間すぐに眠りに就いてしまった大河は、本人が宣言したとおり静かに寝息をたてるだけであまり寝返りも打たず、肩まで布団を被って気持ち良さそうに眠っていた。
そしてこちらも予想通りなかなか寝付けなかった直希は、そんな彼のあどけない寝顔をぼんやりと見つめて。
自分よりも幼く見えるその顔を眺めながら、それでも思い出すのは、先ほど仕掛けたキス。そのキスに小さく唸った大河の、妙に色気のある声。

「ヤバイって、大河…」

そっと髪を撫でながら、どこまでも自分を引きずり込んでくれる彼に、言葉を漏らす。

『大河がフリーで、俺に告白されたら、どうにかなる可能性ある?』

自分のそんな質問を笑い飛ばした大河だったが、そんな彼からは明確な拒絶の言葉が出なかったといえばそれも事実。
大河の性格からして、本来なら、『あるある』と冗談で答えるか、もしくは『ありえへんやろ』とか『何で男やねん』という否定的な言葉が出ていいようなものを。

『お前って、ホンマ変な奴やな~』

そう笑うだけだった。
そんなことだけでも期待してしまう自分が居て。
それは、ただのぬか喜びだと知りつつも、

「なぁ、聞いてる?」

僅かな期待に賭けてみたくなるほど、諦めきれない想い。

「好きだよ」

この言葉を、起きている彼に向かって言える日はくるのだろうか。
そして彼が、それに頷いてくれる日はくるのだろうか。
現時点では可能性はゼロに等しいかもしれないが、それでも諦められないのだから、やれることをやるしかない。
自分だけの特権も彼の性格も、使えるものなら何だって利用してやる。焦らず、しかし一瞬の隙をも逃さぬように、虎視眈々と狙いを定めて。どこかに隠れているチャンスを、見つけてみせる。
そう心に決めて。
同じシャンプーの匂いに変わったその頭にキスを落として、直希も布団に潜り込んだ。


*****


「直希~~」
「ん?え?あ、何?」

気がつけば、スマホをいじる大河を眺めながら回想にふけっていた直希の頬を、大河が首を傾げながら引っ張っていた。

「お前、何ヒトの顔見てボーっとしてんの?」

大丈夫か?と心配そうに覗き込む彼は、既に3年前の鍋写真には飽きたようで、スマホは真っ暗になっていた。
そんな彼を見ていたら、ふと直希は、心配事が出来て。

「大河ってさ」
「ん?」
「いまだに友達とベッドシェアとかすんの?」

そういえばあの日彼は、そんな危険なことを言っていたと思い出したのだ。

「ベッドシェア?」
「ほら、俺の家に泊まったときさ、言ってたじゃん」
「は?」
「だから、お互いに"ベッド使え"って押し問答になって、大河が"シェアしよう"って」
「…。ああ、なんかそんなこと言ったかもな。ていうか俺ら、いつもシェアしとったやんか」

確かに、あのクリスマスの一件以降、互いの部屋に泊まる度に同じ押し問答が繰り広げられて同じ結果になり、そのうち当たり前のようにシェアして眠るようになっていた。

「いや、俺はまた別として。他の友達とってことだよ」
「他の友達って言われても…ここ数年で泊まったとこなんて、お前も含めてメンバーか、ハル(←幼馴染で元POLYGONメンバーの北山春海)か、もしくは兄貴ぐらいやしなぁ。まあ、兄貴は友達ではないけど」
「まさか兄弟で一緒に寝てんの?」
「そんなわけあるかっ。兄貴のとこは客用の布団があるから」
「ああ、そういうのちゃんとしてそうだもんね。で、実とタクとハルさんは?」
「実んとこのソファはベッドになるから。で、アパート時代は…どうやったかな。そもそも実って当時はベッド使ってなかった気がするから、適当に床にゴロ寝してたかも」
「(ホッ…)。じゃあ、タクは?」
「アイツは最初から"ソファか床で寝ろ"って言ってくるからそのとおりにしてる。だから昔は床に寝てたし」
「ハルさんは?」
「アイツは小さい頃から一緒やから普通に」
「するの?」
「え、何やねん。怖いなぁ」

さりげなく直希のチャーハンを盗み食いしながら、大河がビクリと肩を震わせる。
直希も大河のあんかけ焼きそばを拝借すると、ズイッと顔を近づけた。

「もうさ、それだめだよ」
「は???」
「大河が気にしなくても俺が嫌だから。わかった?」

詳しい理由を話したところで大河が理解するはずもないと、直希はだいぶ省略してそれだけを告げた。
危険だなんだと言っても分からないだろうから、とにかく嫌なものは嫌なのだからやめろ、と。
すると大河も、釈然としない表情で首を傾げ眉を寄せつつも、

「まあ、お前が嫌なら…」

わかったよ、と頷いた。

「ハルともアカンの?」
「ハルさんは…まあ、あの人ならいいよ」(←直希の中では論外の男)
「…はあ(他の奴らとの違いがわからん)」


第4章へ進む

関連記事
スポンサーサイト
↓ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL恋愛小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png 短編作品
総もくじ 3kaku_s_L.png ★Engagement(直×大)【準備中】
総もくじ 3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編作品
総もくじ  3kaku_s_L.png ★Engagement(直×大)【準備中】
総もくじ  3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【3-3】へ
  • 【『reward』第3章アップ完了】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【3-3】へ
  • 【『reward』第3章アップ完了】へ