「reward(直×大)」
4:reward

4-3

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「ヤバイ、超嬉しい」

ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる腕から、そこから伝わる体温から、彼の想いを感じる。予想外に喜ばれて大河は驚いたが、直希のその反応が嬉しいのは事実だから、その背中を優しく撫でてやった。
その温もりが、直希の心にまたじんわりと愛しさを滲ませてゆく。
大河の性格的に、この鍵を渡すまでにはきっとそれなりに悩んだであろうことは、直希は察しがついていたから。だから余計に嬉しかった。
この人は自分に、誰にも踏み込ませないテリトリーさえ許してくれたのだと。

「大河は誕生日とクリスマスで2つプレゼントってのはわかるけど、俺、クリスマスだけなのに3つももらってない?」
「3つ?」
「ピアスと鍵と、あとそれよりも前に」
「?」
「プレゼント、もらったじゃん」

―――さっき…ここで。

そう耳元で囁いてやれば、

「…ア、アホ////!」

大河が耳まで赤くなった。
だからてっきり騒ぎ出すかと思ったのだが、

「か、鍵は…プレゼントではないから」

自分がどうという部分は流して、大河は腕をつっぱねて少し体を離しながらそう言った。

「たとえばあの部屋に、俺よりお前が先に帰ってたらとか、俺が居ようが居まいがお前が普通に出入りしてきたらどうなんやろって…ちょっと考えてみたんやけど」
「ん?うん」
「そしたら、意外と普通にありそうやなって、思って」

当たり前のようにあの部屋に出入りする直希の姿が、大河には容易に想像できたのだ。
おもしろいぐらいに普通に、あの空間に馴染んでいる彼の姿が。
必要最低限のものしか置かない部屋の殺風景さに文句を言いながら、大河の知らないうちに好みのフレグランスやらクッションやらを増やしていく直希の姿が目に浮かんで、思わず笑ってしまうほど。

「そう考えたら、お互いに壁が無い方が、俺らには合ってるのかなって…」

どこかで相手と一線を引こうとする自分の恋愛スタンスではなく、平気で垣根を越えて距離感をゼロに近づけようとしてくる直希のスタンスに乗っかった方が、自分たちらしいのではないかと。

「遠慮するなって言われても俺はいろいろ考えてしまうタイプやけど、お前は言われたままを受け取ってくれるから、お前に好きなだけガンガン来てもらえば、俺らはその方が上手くいく気がしたから」

そしてそれは決して、彼に流されているわけではない。

「それを今回、お前に教えてもらった気がする」

そう。
自分のスタンスを貫こうとしたせいで、今回、直希を大きく傷つけショックを与えてしまったのだと大河は自覚したのだ。
彼の為を想ったとはいえ、距離と沈黙を貫いたことで、大きな破綻を生んでしまったから。

「もちろん今回みたいなことは俺だってもうするつもりないけど、もしまた別の何かが起きて、俺がお前を締め出そうとしたら…そのときは、これで勝手に入ってきてええから」

迎えすら拒否して彼を遠ざけた、先週の自分。その結果があれだ。
そして自分の性格的に、また何か勝手に思い込んでひとりの世界に閉じこもるかもしれない。
そのときこの鍵さえあれば、自分の意思とは関係なく彼はあがり込むことができるから。

「そしたらきっと俺は、お前には嘘つけないから、洗い浚い白状するはずや」

直希という心地よさを知ってしまった自分にはもう、心から彼を拒絶することなんてきっとできない。縋ってはいけない、頼ってはいけないとどんなに目を逸らそうと、差し伸べられた手を一度見てしまえば、自分の手はそこへ伸びるはずだ。
そんなことを思いながら、大河は、鍵を握り締めた直希の手に自分の手を重ねる。

「お前みたいな距離感の相手って初めてで、どうしてええか迷うこともあるけど…
俺が迷って足踏みするのは、決して、自分とかお前の気持ちにではないってことだけは知っておいてな?
俺が迷うのは、そういう恋愛をしたことがないからってだけやから」

ここまでストレートで、ここまで距離の近い恋愛なんて初めてだから、どうすればいいかわからなくて戸惑うのだ。
どこまで許していいのか、どこまで教えていいのか、と。

そしてそれは、直希も同じだった。
自分がここまで真っ直ぐに気持ちをぶつけたくなるのも、ここまでいちいち介入したくなるのも、ここまで独占欲が膨れ上がるのも、大河が初めてなのだ。
だから、

「俺も、迷うことたくさんあるよ」
「ん?」
「鍵、くれって言えなかったのもそのひとつ」

彼のテリトリーに入りたいのに、いまいち二の足を踏んでしまうことだってあるのだ。
どこまで許してくれるのか、どこまで教えてくれるのか、と。
いつだって勝ち気で積極的な性格の自分を、ここまで消極的にするのも彼ならば。

『お互いに壁が無い方が、俺らには合ってるのかなって』

たった一瞬で、自信を与えてくれるのも彼だ。
完全に尻に敷かれている自覚はあるが、そういう恋愛は直希はあまり得意ではなかったが、それでもこの恋が自分史上最高で唯一だと思える。これ以外の恋の形なんて、欲しくない。
だから、手探り状態のこの恋を、それすら楽しみながら、大切にしていきたい。

「ホント、ヤバイな」

ビールで少し赤くなった大河の顔に手を伸ばし、唇を優しくなぞる。
数時間前にさんざん堪能したそこだが、いくらだって足りないほど欲しくて。

「明日も仕事あるのに…」

苦笑いをしながらゆっくりと顔を近づければ、目の前の瞳がスッと閉じ、直希も目を閉じて口付けた。
そして大河の下唇を軽く食んでから離し、抱きしめ、首筋に顔を埋める。くすぐったさに少しだけ身を捩った大河だが、

「直希…」

呟くように名前を呼びながら、背中に腕を回して、抱き返してくるものだから。
自分の発言がどんな意味をもってるかぐらい、彼だって分かってるはずで。その上でこんなことをしてくるなんて……

「そんなことされたら、止まらなくなりそうだよ」

意外な反応にまたもや苦笑いをしながら、でも正直なところは大河のその反応が嬉しいから、理性の足りない直希には彼から離れることができない。
すると大河は、明らかにアルコールのせいではない赤い顔を軽く逸らしながら、

「ま…まぁ、ええんちゃうか?」

今日ぐらいは、なんて。
そんなことを言われたら、直希が自制できるか否かなんて、言うまでもなく。

「優しくする」

それだけを宣言し、しかしそれすらどこまで守ってやれるかは分からなかったが、

「ベッド行こう」

相変わらずの手早さで、直希は大河の腕を引いて寝室へと直行した。
そのとき不意に、先日姉と妹からもらった"クリスマスプレゼント"を思い出して。

「あ、そういえば。この前、知り合いからいいのもらったんだ」
「ん?」
「いいもの♪」
「……(不安)」



一週間前、地獄を味わった自分に待っていたのは、とてつもないご褒美。
それをありがたく受け取った直希は、愛しい人をたっぷりと味わわせてもらった。

「…っ!あっ……っ!」
「気持ちいい?」
「ん…あぁ…こ、こんなん……誰に…?」
「ん?男の恋人がいる知り合い2人」(←嘘ではない)
「どんな知り合……っぁあ!」

その全てが夢でないことを確認するかのように。
彼がくれた言葉ひとつひとつを頭の中でリフレインしながら、それが、いま目の前で自分に貫かれて感じてくれているその最愛の人から発せられたものだと噛み締めて。

とはいえ、である。

いくらご褒美をたっぷりもらえるとはいっても、2週間前のようなことはやはり心臓に悪いので、二度と起きて欲しくないのも事実。
だから直希は、

「んぅっ…ぅああっ…はぁっ…あっ」

足を開いて乱れる姿さえ綺麗なこの人が、いつでも自分の腕の中だけでその姿を見せ続けてくれるようにと。
どんなに迷っても、いつでもこの胸に飛び込んできてくれるようにと。

「んぅっ…っ!あっ…!」
「く…っ!」

ひたすらそう願いながら、彼の一番奥へと、ありったけの想いを吐き出した。


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