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「白い恋人(直×大)」
後編:白い恋人

後編-2

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ホテルの外に出てすぐ、直希は辺りを見回し、大河の姿を探した。
外は本当に真っ暗で何も見えなくて、不安だけが募っていく。
やがて、降り注ぐ白い雪の中から、人影が見えた。
細いシルエット。独特のチンピラ歩き。あれは間違いない。

「大河……!」

雪と同じぐらい白いセーターに身を包んだ大河が、片手はスマホを耳に当て、もう片方の手を寒そうにポケットに手を突っ込んで、こちらに歩いてくる。

そして直希の前に来て、大河が立ち止まった。
2人、見詰め合う。

「直希……」
「ったく……こんなカッコで何してんだよ」

通話を切ってポケットに入れた直希は、持ってきたコートを大河に掛けてやる。そしてそのまま抱き締めた。こんなとこ誰かに見られていたらまずいが、でも今はそれどころじゃない。大河の方が大事だ。
抱き締めた反動で、大河が持っていたスマホがその場に落ちた。
ホテルの入口に、大河のスマホが、クロスのチャームを揺らしながら……

「どうしてこんなムボーなこと……」

抱き締めた大河の体は氷のように冷たくて、ガタガタ震えていて、触れた髪は硬くなってしまっている。

「こんなに寒くてよく寝れたよな。もう少し寝てたら凍死してたよ?変わり者なのも大概にしろよバカ」
「いや、俺もそんなつもりなかったんやけどな。つい寝てしまって」
「それ、体温下がって眠かったんじゃないの?」
「アハッ」
「笑ってんなよ」
「……すいません」
「心配したんだからな」
「うん、ゴメン」
「死なれたら化けてでも出させてやる」
「意味わかんないんですけど」
「うるさい」

人の心配をよそにのん気に笑う大河がムカつくから、本当はホッとして嬉しくて仕方ないということは、直希は意地でも教えてやらないと思った。
公園でひとり、雪の下で恋人に記念日祝いの電話だなんて、ドラマだったら見せ場的なシチュエーションかもしれないが、現実はそうはいかないのだから。現実に待っているのは、死だ。

「何で実とタクの部屋とか、行かなかったんだよ」
「え、行って何すんの」
「いやだから、俺への愚痴でも何でも言ってくりゃよかったじゃん」
「だって別に愚痴無いし」
「愚痴る要素になること十分されただろーが。ムカつかないわけ?」
「別に。ムカついとったんは直希やろ?」
「………」
「どうでもええケンカやったらお前の機嫌直るまで避難しとることもあるかもしれへんけど、今回はちょっと違う気がしたし。余計に怒りを煽るだけっていうか。こじれるの嫌やから。日付け変わるまでに何とか仲直りしたかったんやもん」
「……大河ねぇ」

大河という男は、何でこう真っ直ぐなんだろう。直希はしみじみと、そう思う。
普段は"好き"とかたまにしか言ってくれないし、照れ屋だから愛情表現も薄いくせに、愛情表現だという自覚がなければドストレートに言葉を投げ込んでくる。自覚が無い分、それを涼しい顔して言ったりやっちゃってくれるから、タチが悪い。
人とのコミュニケーションに計算の無い大河は、いつだってこうして本能で動いてくる。そしてそれが本能ってところか、直希の心臓を綺麗に貫く要素なのだ。そうやって、ちゃっかりと相手の心を鷲掴みにしてくる。ある意味、恐ろしい男だ。

「もういい。とりあえずホテル戻ろう。風呂入って体温めないと」

落ちたスマホを拾って大河の手を繋いで、直希は歩き出した。





部屋に戻ると、直希はとりあえず大河を風呂に入らせた。
温かい風呂で体温を戻したおかげですっかり鼻歌まじりの大河を見ていれば、本当にコイツは何なんだろうと、直希は拍子抜けしてしまう。しかも窓をチラチラ見て、

「積もるかなぁ」

なんて目を輝かせて。積もったら早朝の撮影が相当過酷になるってことは、頭に無いんだろうかと。
そもそも、雪と風呂でご機嫌だなんて……

―――偏差値低っ…

バカというか子供というか。
とはいいつつ、そんなバカすら愛しくてたまらないと感じている自分の方がよっぽどバカなんだろうとも、直希は自覚している。

「ねぇ、大河」

ベッドの上で髪を拭いている大河の傍に近寄り、後ろからそっと抱き締めた。
そうやって、今彼がここに居ることを確認する。
彼の感触をしっかり感じて安心すれば、さっきまで感じていた不安や恐怖を思い出し、素直に言葉が出ていって……

「あのさ……マジでゴメンね」
「え?」

いきなりそう謝罪で切り出した直希に、大河がきょとんと顔を向けた。

「俺、大河が思ってる以上に頭悪いし、ガキだし、きっと優しくも無い」
「?」
「大河が思ってる以上に嫉妬深くて、すっげぇバカで、心が狭いよ、俺」
「何言うてんの」
「今月号の『PATa・PATa』でさ、大河の里帰りに実が同行してただろ?それ知らなかったってことと、しかも、すっげえ親密って感じの会話してて、それでムカついてた」
「……え、あれ?」
「大河は悪気なんて全くないんだから、気付くわけないよな?なのに、気付いてもらえないのが悔しくて……」

直希は、言っててバカらしくなってきた。
こんな些細なことに、自分はあんなに嫉妬して。大河を寒空の下に放っぽり出すようなことになってしまって。
でも……

「大河は呆れるかもしれないけど、でも、俺はそういう奴なんだ」
「………」
「大河と話したくなかったのは、部屋に帰っても無視してたのは、今の俺じゃ、大河に何するかわかんなかったから。きっと酷いことしちゃう気がしたからなんだよ。本当に大河を嫌いになったわけじゃないし、嫌いになれるわけない。別れる気なんてさらさらない」
「…………」
「大河のこと、好きだから。愛してるから。小さいことも許せなかったんだ。ごめんな」

自分の愛情が重くても、それでいいと言ってくれた大河に、それでも好きだと言ってくれた大河に、甘えすぎてしまったのかもしれない。
何だか、ホント、バカだ。

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