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「短編作品」
大いなる理由(陸×千)

大いなる理由-1

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素直に、カッコいいと思った。
若くしてタレントとしての一線を退くという潔さと自己分析力もさることながら、エネルギッシュで信頼も厚いその人を、知り合う前から尊敬していた。
野心的という声も高いが、それは物怖じしない堂々とした立ち居振る舞いからくるものもあるのだろう。
頭の回転も早く、駆け引き上手で口達者。生意気だと揶揄されることもあるが、持ち前のユーモアでカバーしている。
プロデューサーとして専念すべく表舞台からは身を引きがちな彼だが、その華やかさは周りが放ってはおかず、何かとメディアの前に呼ばれる。いわば、天性の主役キャラ。
それが、千田にとっての『安藤陸』という人。

対して自分、『千田有介』はといえば……

馬鹿正直で隙だらけ。
駆け引きが下手だから、すぐに心を読まれて先回りされて損をする。
癒し系だのワンコ系だの言われて可愛がられるのは得かもしれないが、それは同時に、"都合の良いペット"と同じようなもの。学生時代から、常に脇役として、友人の中でも恋愛においても、千田は盛り上げ役だった。
そんな役割を嫌だと思ったことはないし、主役になりたいと思ったこともない。自分にはこれが合っているし、役割だと思っていた。
だから、大学のイケメンコンテストとやらに参加したのも、執行部員として責任を取っただけの、要は"数合わせ"。それがきっかけでモデルにスカウトされたのは想定外だった。
しかし、そのモデルとしても、常に2番手や3番手で。誰にでも出来るような仕事はいつも漠然としていて、そこにはどこか限界を感じていた。唯一の収穫は、仕事を通じて知り合った幸樹という友人。彼のおかげで、既に人気ユニットと化していたPOLYGONへの加入が決まり、ようやく自分らしさを生かした仕事にめぐりあえたのだ。……とはいえまだ加入したばかりだから勝手が分からず、気付けば仲間の影に隠れてしまうのが現状だったのだが。

だから、そんな自分を陸が気にかけてくれていると知ったときも、千田は本当に信じられなかった。
いくらユニットのプロデューサーとはいえ、一番目立たない自分に声をかけてくるなんて、嬉しい反面、隙だらけの千田だってさすがに警戒する。
しかしそんな千田の警戒なんて物ともせずに、気さくに誘ってきた陸。
仕事の話をしたのは最初の2回ぐらいで、そのあとは、いつも関係のない話ばかり。
とはいえ互いに忙しい身で、会えるのは月に2回程度が限度。でもその分、メールをくれたり電話をくれたりと、とにかく陸は友達のように気軽に連絡をしてきた。
自分からすることは何となくできなかった千田だが、たまにすると、忙しいのに必ず返事をくれた。彼が千田の故郷の青森に滞在したときには、『懐かしい故郷やで~』なんて、動画を送ってくれたりもした。

そして。
気が付けば、親しくなって半年近くが経とうとしていた。

"いったいどうして?"

その一言が、何故か千田は訊けなくて。
訊くのが怖くて。
それは、自分が面白がられているだけだと思っていたから。
事実を本人の口から聞くのが怖かった。
そう、

好きになった……から。

所属ユニットの生みの親ともいえるプロデューサーを、10歳近くも年上で頭も良い大人の陸を、ありえないことに、千田は好きになってしまったのだ。
本当に、救いようのないバカだと思う。
仲間たちに『なんか悩んでる?』と訊かれても、相談すらできない。
しかもそれを隠し通せず、個人マネージャーの川口に勘付かれて問い詰められて、白状する始末。
その川口は、決してバカにせず反対もせず、仲間たちには秘密にすることも約束した上で、簡潔で鋭い警告をくれた

『あの人は一緒に飲んだこともあるけど、気さくで感じのいい人だし、悪い人ではないと思う。どんなジャンルでも話せるから話してて面白いし、慕う気持ちも分かるよ。POLYGONの連中がみんな彼を信頼してるのは、単に彼が大河君の兄ちゃんだからってわけじゃない。
でも、駆け引きも上手い。何考えてるか分からないところもある。
怖いのは分かるけど、ちゃんと目的を確認した方がいいかな。千田は素直で純粋な奴だから心配だな。みんな、最近のお前を心配してる』

担当のタレントとはいえ恋愛話なんてものに、真剣にアドバイスをくれる。それが千田には心からありがたかったし、川口に余計な心配も手間もかけたくなかったし、何よりやっぱり自分としても聞いておくべきだと思い直して。

そして、その日。
関東でその冬一番の寒さを記録した、2月のある夜。
当たり前のように電話をくれて、近々食事にでもと誘ってきた陸に、千田は思い切って切り出したのだ。

「どうして、俺を誘ってくれるんですか?」

と。
すると電話の向こうの陸は一瞬言葉を止めてから、

『嫌やった?』

遠慮がちに、そう訊いてきて。
だから慌てて千田は「違います違いますっ」と否定してから、理由を話したのだ。

「俺は楽しいです。ホントです。でも立場的に、はっきり聞いておきたいって思ったんです。
俺と陸さんって、プロデューサーとタレントっていう立場で、周りか見たらその…特別扱いとかみたいに、見られるんじゃないかって。いや、他のみんなとも個人的に会ったりとかしてるのかもしれないですけど、みんなからあんまりそういう話聞かないし。
あの、だからその、今さらであれなんですけど……どうして俺に、個人的に、こうやって良くしてくれるのかなって…思って。
すいません俺、ホントにこういうの気づかないんです。楽しくて嬉しいと、疑問とか沸く余裕すらなくて。それで今さら、いいのかな?って感じちゃって。
すいません。陸さんカッコいいし憧れてるしちゃんとした大人だから、俺のせいでまずい立場になったりとか…その……事務所の人に怒られたりとか…しないです……か?」

最後は、千田はバカみたいに声が小さくなっていた。
そんな千田の言葉に対し、陸はしばらく沈黙していたが。
やがて、

『アハ…』

少しだけ、笑った声が聞こえて。
本気で呆れられたのだと、千田は思った。
だが―――

『カッコよくてちゃんとした大人、ね』

オッさんて思われてなくて良かった、なんて。
自分の言葉にこうやって笑う感じがまた、大人の男なんだと千田には思えてしまう。
ただいつもと違ったのは、その後少しだけ声が硬くなったこと。
そこに疑問を感じ千田が首を傾げていると、

『そうやな、俺は大人やから、ちゃんと話さなあかんね。
―――今度の日曜、会おう』

陸は、サラリとそんなこと言い出した。
今度の日曜といえば、世の中はバレンタインだ。
陸になら恋人ぐらい当然いるだろうし、その人を優先しなくていいのだろうか。そう考えて、千田は思わず口ごもった。
そんな千田の心を読むかのように、

『あれ?もしかしてデート?』

陸がそんなことを訊いてくるから、

「まさかっ。そんな人いませんっ」

こっちの気も知らないで、と、少しだけムキになって千田は返した。
するとまた陸が、楽しそうに笑って。

『アハハ。そーかそーか。俺も予定ないから、な?会おう』

千田が陸に訊きにくかったことをあっさり応えてくれると、

『大河たちの舞台、観に行くんやろ?俺も行くから、終わったら待ち合わせよう。他の奴らに見られるの気になるなら、会場近くの喫茶店とかにしようか。俺は車で行くから、千田はタクシーで来な』

いつものように慣れた口調で、でもやっぱり少しだけ緊張感のある声で、彼はそう言った。

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