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「短編作品」
大いなる理由(陸×千)

大いなる理由-2

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そして日曜日。バレンタインの夜。

同じように舞台を観に来ていた仲間たちの誘いから何とか逃げ切り、千田が電話をかけて間も無く。愛車で颯爽と現れた陸が連れ出したのは、いつも利用するような居酒屋でもレストランでもなく。
彼の、自宅マンションだった。

広々とした部屋に、本棚にはあらゆるジャンルの本。有名大学出身のインテリだけあって、専門書も多い。
音楽CDも映画DVDも多ジャンルにわたり、センスの良さが伺える。
殺風景な部屋だが、掃除や整頓はしっかりされているような、なんというか合理的な無駄のない部屋。マンガ本だのラーメン本だの雑誌だのが乱雑に積まれた、いわゆる独り身の若者らしい自分の部屋とは違うなと、千田は感じた。
ただ、そんな中で存在感をしめす、人気芸人コンビのDVD。それは自分たち共通の趣味であり、最初に意気投合したのもこの話題だった。

「突っ立ってないで座れば?」

何分かりやすく手持ち無沙汰になってんの?と陸に笑われて、千田も慌ててソファに腰を下ろす。
そのふかふかのソファに、千田はふと、陸の弟・大河を思い出した。
仕事に悩んでいた自分に、幸樹が最初に紹介してくれたのが大河だったせいか、ユニット加入後も何かと彼は気にかけてくれる。あの部屋にも、同じソファがあった。

―――こういうとこすら仲良し兄弟なんだな

そんなことを思って笑った千田に、陸は不思議そうに「何?」と首を傾げた。

「いや、大河さんも同じソファだなと思って」
「え?あぁ、これ気に入ったって言うから、引っ越し祝いに買ってやった。……って、何で知ってんの?あいつの部屋にあること」
「幸樹と飲んだとき、大河さん来たんですよ。気付いたら終電に間にあわなくなって、大河さんとこ泊めてもらったんです」
「幸樹のとこに泊まらず?」
「ああ、あんとき幸樹、彼女と同棲してたから」
「それけっこう前の話やん。アイツそんなこと全然言わなかったな。大河んとこ、よく泊まるんか?」
「いや、泊まったのは1回だけですけど」
「幸樹通してって…大河とはいつから知り合い?」
「5月ぐらいかな。俺が前の事務所辞める頃だから。幸樹が、大河さん紹介してくれて」
「紹介?」
「はい。幸樹、大河さんと仲良いじゃないですか。俺の悩み聞いてた幸樹が、大河さんの意見を聞いてみるといいよって教えてくれて、セッティングしてくれて。じつは俺、この事務所にいきたいって思えたのって大河さんのおかげなんです。
それで、いろいろ相談したり話聞いてるうちに時間忘れて、終電逃しちゃって。初対面で泊めてもらって、ホント迷惑かけました。
陸さんに似て、大河さんも優しいですよね。嫌な顔ひとつしないで泊めてくれて。俺が気を使わないように、家でもいろいろ話してくれました。
だから、陸さんが最初に俺を誘ってくれたのも、大河さんから話を聞いたりしてたのかと思ったんですけど…ちがうんですか?
……あ、あの、陸さん?」

説明に一生懸命になっていた千田は、いつの間にか無言になっていた陸に気付いて、覗き込む。そこにいた陸は、怖いくらいに真剣な顔だった。
しかし、すぐに陸はハッと我に返って。

「ああ、ごめん。なるほどね」

いつもの笑顔になると急に立ち上がり、安心させるように千田の頭をポンポンと叩いてキッチンに向かった。

瞬間。
千田は、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
そう、まるで恋する乙女のように。

180cm以上もある男が乙女みたいにドキドキして、バカみたいだ。
こんなこと陸に気づかれたら、間違いなく引かれる。もう会ってくれないかもしれない。
そんなことを考えながら、千田は必死で冷静になろうとするのだが。

―――いや待て…

不意に思いついた可能性に、ゾッとした。

最近の自分がどこかおかしいことは、千田本人も自覚している。
相手が誰だか分からないまでも、仲間たちだって、千田が片想い中だと気付いてる。
マネージャーの川口においては相手すら気付いてる。
ということは、陸だってきっと…

―――ヤバイ、相手大河さんと思われたかな?

ズレも甚だしい結論を、本気で考えた千田が、

―――可愛い弟に邪な感情抱くなとか、言われたらどうしよ…(゚д゚lll)

兄弟愛の強い安藤兄弟ならめちゃくちゃありうると、見当違いの懸念でソワソワしていると、

「どうした?体調悪い?」

いつの間にか戻ってきていた陸が、心配そうに覗き込んできた。
今度はそのいきなりのドアップに、千田は慌てて顔を離して。首を左右にブンブン振って否定する姿は、挙動不審の何物でもなかった。
だが、普段ならそんな姿には確実にツッコミを入れてくるはずの陸は、今日は何も言わずに。

「それならええけど」

何故か彼すら緊張感を漂わせてくるから、千田は余計に緊張が走る。
一体自分は何を言われてしまうのだろう。そればかりをぐるぐると考えて、背筋を伸ばして座っていると。
再び、千田の隣に腰を下ろした陸が、

「こういうの、あんまり俺のキャラやないんやけどね」

と、ワインのコルクを慣れた手つきで開けた。
千田にはワインなんて全く分からないが、すごく高そうなボトルだろうことは分かる。
そして、これまた高そうなグラスに注いで。
その全てが間違いなく、自分みたいな奴には一切無縁だった、自分がやったら確実に似合わないムードだと千田は思った。

「大事な話をするなら、シチュエーションから入るタイプでさ」
「大事な…話」
「電話の話の続き」
「…はい」
「千田には、あまり心地の良い答えではないかもしれんけど、ちゃんと話すから。それで、互いの立場とかそういうの抜きにして、素直に答えてくれて構わないから」

そう言って、千田に顔を向けた陸が言った、"答え"。
千田はてっきり、自分が予想していたような、希望のない答えが来るかと思ったのに―――


「俺が千田を誘うのは、千田に惚れとるからや」


あまりにも自分の都合通りで、耳を疑うほどの答えだった。

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