「短編作品」
大いなる理由(陸×千)

大いなる理由-3

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「……え?」

思わず間抜けな声を出した千田に、陸はチラリと隣を伺って。予想通りの反応と思ったのか苦笑いをして、そしてまた視線を落とす。

「最初に千田を知ったのは、社長が面接した直後かな。社長から、ユニットの追加メンバーとして入れたいってもちかけられて、話聞いてるうちに、確かに面白そうな奴やなと思った。新加入の千田とテツを含めたユニット内のメンバーでSQUAREを結成するっていう考えも、自然に思いついたっていうかさ。そのぐらい、お前はいい素材やと思ったよ、すぐに。
そうやって注目してるうちに、千田そのものが気になってきて。仲間たちに愛されてる姿見てるうちに、俺まで楽しくなってきて。気づいたら、仕事とか抜きにして話してみたくなって……あの日、誘ってた。
会えば会うほど千田を知りたいと思ったし、次の約束を取り付けたくなった。
子供やないしそれなりに恋愛重ねてきたから、この気持ちが何なのかは分かってたよ。現に、気が付いたら彼女とも別れてた。
でも、俺は言動に裏を疑われやすい性格で、それなのに純粋に俺を慕ってくれる千田の存在が心地よすぎて、それを失いたくなくて言えなかった」

そんな告白に、千田は、呆然とするばかりだ。

夢を、見ているのかと思った。
振り向いてくれるはずないと思ってた人が、そんな風に自分を評価し、タレントとしても1人の人間としても気にかけてくれていたなんて、と……

放心状態の千田に、陸はまた苦笑いをひとつして、ワインを口に運ぶ。

「ホンマはな、もっとちゃんとした告白にしたかったけど。千田が思わず流されてくれそうなムードとかね(笑)
でも、大河とのこと知らなくて、思わず動揺して……ごめん、柄にもなく焦った。
大河は確かに俺以上に社交的な奴やけど、初対面で家に泊めるとか、さすがにそこまでするのはよっぽど気に入った奴にだけやと思うから。その辺りの見極めとか線引きは、むしろきっちりやる奴やし」

大河本人、もしくは大河の当時の思惑を知る直希ならば「その通りです陸さん!」と言うところだろうが。
もちろんこの2人は何も知らないので、真剣なムードも告白ムードも続行中だ。そして、陸の若干の"諦めムード"も。だから、

「あ、俺のことは断ってくれて構わないよ。
千田は俺と、そんなつもりなかったもんな?覚悟してるから大丈夫や」

千田の反応を、思ってもいない告白に戸惑っている、と捉えた陸が、明るくて軽い声音に変えてそう笑った。その見解自体は当たっているのだが、戸惑いの意味がまるで違うことに気付かず。

「仕事は今までどおり、これからもよろしくな。大河とも、仲良くしてやって。俺のことは気にせず…」
「そんなつもりあります!」

気づいたら千田は、そんなことを言っていた。
夢見心地で、というか頭が飽和状態だったが、必死でそう答えた。

「陸さんの電話もメールも、食事の誘いも……良いのかな?って思いながらも訊かなかったのは、怖かったからです」
「……怖い?」

今度は陸が目を丸くして、千田を凝視する。

「はい。訊いて、"ただお前が面白いからだよ" って言われるのが、事実をつきつけられるのが怖かったんです。
……俺も、陸さんが好きだから」

言ってはいけない、言う機会などないだろうと思っていた、その言葉。
それを吐き出した瞬間、千田は心にとどめていたものを、一気に吐き出した。

「会ってもらえるだけで良いはずなのに、気に留めてもらえるだけで嬉しかったのに、事実を受け止める余裕ないぐらい貴方が好きで……
諦めなきゃいけないって分かってても、気持ちが、後戻りできなかったんです。後戻りできないぐらい、好きになってました。
だから、ずっと訊けなかったんです。俺はそういうとこが子供だから、逃げるどころか目をそらすしか…」

その後の言葉は、呼吸ごと全て陸に呑み込まれた。
覚えているのは、仄かなワインの香り。
自分はまだ一滴も飲んでいなかったのに、その香りだけで千田の脳は麻痺した。

「ありがとう。最高の返事やね」

すんなりとした綺麗な指が、千田の唇や頬を撫でる。

「好きや、千田」

高くてハスキーな、独特な声。
兄弟でそっくりだと言われる、安藤兄弟独特のその声は、千田は陸からも大河からも何度も聞いたことがあるのに。自分に好きだと囁いてくれたそれは、千田は初めて聞くトーンだった。
熱くて優しくて……そして切なくて。

「これからも…いや、これからはもっと会いたい。
大丈夫。俺たちはお互いプロなんやから、そこは割り切れるよな?俺は仕事上でお前に贔屓したことはないし、ええもんはええって言うし、悪いもんは悪いって言う。
職業柄もちろん慎重に付き合うべきやし、ユニットの奴らにも、ベラベラこっちから喋る必要はないけど。バレたらバレたでええと思う。そんなことでうるさく言う奴らやないよ。
それでも俺たちが会うことで状況がまずくなるというなら、まずくないようにすればええ」

頼もしい、陸の言葉。
どんな相手でも納得させられる力を持つ、口調。
導かれるように千田が頷けば、
優しく、抱きしめられた。

「陸さん……」

夢のようで信じられなくて、千田はぼんやりとその名を呼びながら、彼の背中に腕を回す。
そうすれば改めてギュッとだきしめられて、頭を撫でられて。
ホッとして、千田もようやく笑顔が出た。
どちらからともなく腕を緩めて、もう一度、キス。
見つめあい、また微笑みあったのだが、

「それにしても、初対面で泊めるって…」
「え?」
「大河や」

ぶつぶつと、またもやその話を蒸し返してきた陸が、

「どんだけ距離縮めてんの、アイツ」

なんかムカつく。と口を尖らせるから。
何だか彼が急に愛しくなって、千田はまた笑った。

「大河と仲良くしてもええけど、あいつもなかなか危険やから気をつけて」
「さっきと言ってること違いませんか?仲良くしてやってくれって…」
「事情が変わったの」

可愛い弟にまで嫉妬した彼は、"知的で大人でミステリアスな安藤陸"ではなく、自分と変わらない、どこにでもいる一人の男。
もしかしたら9歳年下の自分よりも幼い部分があるんじゃないかと思えるほどのその素顔に、千田は彼への想いが一層深まるのを実感した。

安藤陸と千田有介。
バレンタインの夜に始まった、秘密の関係。

それは、誰が気付くこともなく、静かに始まった、直希と大河とはまた違ったタイプの"社内恋愛"。互いに真剣で、決してこそこそするわけではないが、かといって公にするわけにもいかない。
理性的な陸だから慎重かつ賢く付き合うことができるし、良妻タイプの千田だからそんな陸に素直に従う。どこかの鈴野直希と安藤大河とかいう、喧嘩っ早いお騒がせバカップルとは違うわけで。
だから自分たちならきっと上手にやっていけると陸は確信していたし、千田はそんな彼についていけばきっと大丈夫だと確信していた。
本気の恋愛というものはそんな簡単なものじゃないということは、これからの付き合いの中で知っていくことで。
それはまた、いつか機会があれば―――


Fin


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