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「痴話喧嘩(直×大)」
3:溺愛と協力

痴話喧嘩 3-1

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【3:溺愛と協力】

「確かに危険……」

その光景を見た幸樹は、ぼそりとそう口にした。

「え、何?」

隣の栗原が首を傾げて聞き返してくるが、「なんでもない」と首を横に振り、監視をしつつ仲間との会話に入って誤魔化す。
その幸樹の監視ターゲット2人は、

「大河~、これ食うか?取ってやろうか?」
「あ、カルパッチョや♪欲しい欲しい。ミキも食うか?」
「え?…あ、大河さん袖が皿に付きそうすよ」
「気が利くじゃん冴島。で、これ食うんだろ?ほら、皿貸しな」
「あ、すいません」
「お。史孝さん、社長自らお取り分けやん。男前は懐もデカいね」
「だろ~?」
「あ、史孝さん、その粒々は俺要らん」
「"とびこ"な?魚卵系嫌いだなぁ、相変わらず」

大河を挟んで3人で何やらベタベタしていて……目も当てられない。
端に座る大野の前でそれを眺めている元凶の風見は、楽しそうに見守っている始末だ。
だから幸樹は仕方なく、

「大河、選り好みするなら自分で取れよ。そこなら手ぇ届くでしょ」

他事務所とはいえ社長にそんなことやらすなと、的確にそうツッコんでやるのだが、

「でも俺よくこぼすし、史孝さんに断って手ぇ伸ばして、結果史孝さんにこぼしたらどうするん」

確かにそうですと頷かざるをえない反論に、幸樹は撃沈した。それを相変わらず楽しげに笑っている風見が、何も分かっていないとはいえ、大先輩とはいえ、一瞬イラっとしたのは仕方のないことだと幸樹は思う。

都内の多国籍料理系居酒屋。
風見御用達で彼の知り合いが経営するその店は、バレンタイン当日かつ日曜日という繁忙日にもかかわらず、気兼ねなく過ごせるようにと2階フロアを貸しきりにしてくれていた。突然の人数追加にも柔軟に対応してくれ、短い時間でもコース料理を人数分(+後で追加の直希の分も)しっかり用意してくれている。
個室3部屋をぶちぬきにし、テーブルを3つくっつけてくれている部屋は、広々としていて。フロア自体が貸しきりだから他に客もいないし、コース料理だから店員が来るタイミングは決まっているし、追加注文もタッチパネルだから、まるで自分たちだけのような空間で最高の居心地だ。
しかしそれは逆を言えば、狼たちには格好のハンティング環境。だから、"冴島と大野をマークしろ"という直希からの使命を受けた幸樹は、2人から大河を離す気マンマンだったのだが、

―――で、出遅れた……

事務所に寄ったついでに居合わせた仲間と呑気に立ち話をしている間に、幸樹が着いたときにはこの構図が出来上がっていたのだ。
別に直希に『任せろ!』と宣言したわけでもないし、『出来る限りね』と答えただけなのだからいいだろうと、そもそも冴島と大野なんて大した危険人物ではないだろうと、幸樹は過剰な心配をする直希を寧ろ内心バカにしていたのだが、

「ふあぁ…」

ここ数日の疲れなのか大きな欠伸をして、大きな大野(188cm)に若干もたれた大河を見れば、

「何だよ、もう眠いのかよ?お前ビール1杯すら飲みきってないじゃん」

呆れたように笑いながら頭をガシガシ撫でて、そのままにしてやる大野を見れば、

「アハハ。大河さん、俺で気を紛らわせんでよ」

眠気を飛ばそうと冴島にちょっかいをかけて楽しそうな大河と、それを口ではそう言いながらも止めないどころか嬉しそうな冴島を見ていれば、

―――直希、ゴメン…

直希の懸念も、頷けるというもので。大野に『眠いなら送ろうか?』と言われれば『うん』と言い出しかねないし、冴島に『一緒に帰る?ウチ泊まってく?』と言われても『うん』と言い出しかねない。だからせめて、直希が来る前に大河が"持ち帰られ"ないよう見守るぐらいしか、自分はできないと思う。
まあもちろん、危険といっても直希ほどではないので大丈夫だろうが。
そもそも冴島も大野も、決して直希のように邪な思惑を抱いているわけではなく、単純に大河を気に入っているだけなのだ。いわば、立花兄弟と同レベル。
そう言い聞かせてはみたものの、

―――実さんは、ときどき怪しいんだよな、あの人……

さすがは幸樹も大河の側近。あの男の危険さにはある程度勘付いている。だからこの2人だって、可能性は否定できないと思えてきた。
そもそも、直希の危機センサーは意外と鋭いところをついていると、幸樹は思っている。さすがは、付き合う前は大河の隙を狙いまくっていた(らしい)男、過去の自分と同じ匂いに鋭いのだろうと。実際、幸樹はあんなに大河とべったりでも、直希から警戒心を向けられることは一切なかったのだから。直希のセンサーが唯一誤作動したとすれば、千田ぐらいだろう(←千田の場合は大河の方が下心目的だった事実を幸樹は知らない)。
とにかく直希さえ来れば万事解決だと、普段は大河と居るだけで暑苦しいあの男が、今日に限っては幸樹はだいぶ恋しかった。
すると……

「ん?」

うつらうつらしていた大河が、不意に体を起こして何かに気付いて。のろのろとポケットからスマホを出すと、どうやら電話がかかってきているのか、スマホがブーブーとバイブ音を鳴らしている。

「あ……」

画面に表示された名前を見た大河は、一瞬キュッと眉を寄せた。
しかし周りに気を遣いすぐに表情を戻し、電話に出る。

「もしもし?…おお、終わったんか?お疲れ」

普段どおりの声を出していても、どうしてもつっけんどんな言い方になってしまう。しかしそれは、殆どの人間はあまり気付いていない。幸樹でさえ。気付いているのは、数時間前に事の顛末を盗み聞きしてしまった栗原ぐらいだ。
だがその栗原が盗み聞きをした事実を知らない大河は、誤魔化しきれていると思い込んで、その人物―――直希に、対応をしてやる。

「外?なら中に入ってきたらええやん。2階やで。涼太さんの名前言えばええから」

それだけ告げるとプチっと電話を切って。

「直希のアホが来るでぇ~」

そう言いながら、またもや大野にクテンと、今度は完全に寄りかかった。
すると今度は幸樹だけではなく、栗原も風見も春海も、いわゆる"知ってる"人間が思わず焦った。大河の電話からして、すでに店に入ってきているはずだろう。
直希が既に下に居て階段を昇ってくる―――これは、この状況においては怪談話並の怖さだ。

「ほ、ほら大河、起きようよ。鈴野が来るんだろ?」
「…た、大河、直希の相手してやってよ」

風見と幸樹が焦りながら大河を何とか大野から引き離そうとするが、大河は不貞腐れたように大野の肩に寄りかかって目を瞑ろうとする。その"不貞腐れ"の原因を知る栗原は一層焦り、幸樹の肩を叩いた。

「幸樹、ちょっと何とかしろよ」
「無理だろ。本人がくっついてんだもん」
「直希君が怒るだろ。そしたら幸樹、ちゃんと上手に説明できんのかよ」
「は?勘弁してくれよ。あれ(大河)絡みだとアイツ面倒くせーんだってば」

その状況に、何も知らない拓郎&冴島&大野はポカンとするばかりで、ついでに大野に関しては、自分に寄りかかる大河の肩を思わず抱いている始末だ。
これには春海も焦り、

「ああもうミキ、大河ちょっと起き上がらせろやっ」
「え?あ、はあ…でも眠そうやし」
「おまえなぁ。だぁぁ、もう、早よぅっ。つーか史孝さん何してんすかっ」
「は?どうしたハル」

キョトンとする冴島と大野に、春海はたまらずテーブルをいったん離して隙間を通って3人に近づき、大河の腕を引いた。

「ほら大河、頼むから起きてくれや」
「痛い~~。何やねんハルのアホっ」
「ほらほら、ハル。大河痛がってるから」
「史孝さんは黙って。それから手を離せっ」

元は大河と同様に弟のように可愛がってくれていた先輩とはいえ今は所属事務所の社長相手に、春海は強引に手を引き離す。そこに幸樹やら風見や栗原も加わって。4人は、拓郎が"何だか楽しい"と野次馬のようにそれを後ろから見て笑うのを無視で、ついでに大河を冴島&大野の間から抜け出させようとした。
だが、

「う゛~~痛い~~(。>_<。)」

予想外に力が強かった春海や幸樹に、若干の酔いと眠気でお子チャマモードに突入してしまった大河の破壊力はものすごく、

「「「「「「「………」」」」」」」

―――可愛いじゃねーか…

と、思わず見入ってしまっているうちに。
ガラリとドアが開いてしまい―――

「……何してんの?」

悪魔――じゃなくて直希のご登場である。

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