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「痴話喧嘩(直×大)」
3:溺愛と協力

痴話喧嘩 3-3

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そして、オトナ2人がそんなコソコソ話を繰り広げているうちに……

「大河、バンバンジー少し食う?」
「んあ…?要らんよ。俺食ったし。それお前の分やんか」
「いいよ、好きでしょこれ、半分あげるよ。つーか、そのビール温くなってない?俺が飲み物頼んだときに一緒に頼めばよかったのに」
「……ぅ…」←図星
「俺の飲む?俺今日車だから、ノンアルのビールだけど」
「……ちょっともらう」
「いいよたくさん飲んで」

こちらのコドモ2人は、直希の空気が果てしなく甘くなっていた。
それはいつも以上というべきか、確信犯的なあからさまさというよりは、滲み出る隠し切れない甘さのようで。事情を知らない冴島と拓郎すらも、唖然状態だ。そして大河本人すらも戸惑っているようだが、直希が気付いていないのか、さりげなく空気を戻そうとする大河の努力も虚しく空気は変わらない。

それは、直希が他の人間と喋っていても同じだった。
直希の体は終始大河に密着状態だし、どう見ても片腕は大河の背中を超えて腰付近に回っているように見える。目に入る場所に座る風見&大野&幸樹あたりは、誤魔化すように直希にバカな話題を振ってやることでやり過ごしてやるが、大河が何気に挙動不審だからひどく滑稽で。
誰も入り込めない雰囲気に、最初は誰もが口を開けてその光景を見守っていたのだが……見ているうちにこのバカップルが何だか面白くて愛おしくなるのは、必然だった(事情を知らない冴島&拓郎を除く)。特に栗原は、数時間前の痴話喧嘩がそれなりに丸く収まりそうなことに肩の力を抜き、ホッとしたら笑いが止まらなかった。
それにしても、

―――大河さんてホント…可愛いよな

可愛いヤキモチの言葉や捨て台詞を思い出すと、思わずキュンとしてしまうのは、男として当然。さっき直希が来るときの駄々っ子のような仕草も然り。5つも年上で普段は頼れる兄貴なのに、やっぱり可愛い人だと思う。直希がここまで夢中になって心配する意味が、よく分かる。
だから思わず、

「俺も恋したいなぁ~」

思わずそんなことを言えば、大河がビールを吹き出しそうになって慌てて冷静に戻った。
それをまた栗原が笑うと、このタイミングでそんな発言を堂々とかましてきたその最年少に、周りが呆れた笑い声をあげた。

「え、何なに。栗原、まだ新しい彼女できないの?」

やっぱり分かっていない拓郎が、前の彼女と破局して以来まだ独り身らしき栗原に話題を振る。

「ハルも彼女と別れてけっこう経つよな?史孝さんも入れて3人で合コンでもしたら?史孝さんだってそろそろ見つけてもいい時期でしょ、次の離婚相手」

OFA社長主催の合コンとか超豪華~と楽しげな拓郎のおかげで、話題は一気にそっちへと向かって。大野への絶妙なバツイチいじりも、大野本人が楽しげに乗っかるものだから遠慮なく盛り上がっている。
おかげでその輪から自然に抜けた大河と直希は、何となく目が合って……

「大河、もう少ししたら抜けよ?」

直希が小声で、そう耳打ちをした。

「反省してる。フォローさせて」

甘い声で囁けば、大河は肩を竦めるようにして目を泳がせる。さらには、明らかにビールではないであろう赤らみが、頬から出れば―――

「やっぱ今帰ろう」

大河の腕を引いて、突然直希は立ち上がった。
再び全員の視線が、2人に集中する。

「ごめん。大河疲れたみたいなんで、連れて帰りますね。俺車だし」
「な…っ、俺まだ大丈…」
「寝る寸前っぽいんで」

反論する大河の声をかき消すように、直希は早口でそう告げた。
しかしそれが適当な言い訳だということぐらい、ここに居る殆どの人間が理解しているので。

「あ~はいはい。お疲れさん」
「いいタクシーがあってよかったな、大河」

バカップルがバレンタイナイトに向かうのだろうと理解した面々からは、そんな声が口々に飛び交い、

「じゃ、行こうか大河」
「嫌やっ。ミキ~~~ヾ(>A<。)゚。」
「え?あ…」
「ごめんミキ。寝ぼけてるだけだから」

冴島に手を伸ばす大河の腕をグイッと戻して、思わず手を伸ばして答えてやろうとする冴島に直希は笑顔で牽制すると、強引に大河の体を引いた。

「風見さん、これで足ります?2人分」
「え?いやいや、こんなに要らない。ていうかまだ半分ぐらいしか食ってないし2人とも」

万札2枚を渡してきた直希に慌てて風見が突き返せば、

「ああ、今日はここ全部俺が払うからいいよ。それより大河、荷物荷物」

大河の荷物が自分の車に置きっぱなしであることに気付いた大野が、どこまでも男前な発言をしながら立ち上がって、2人を促す。そうすればその場に居た全員が『あざーっす!』と大野に頭を下げた。
そのまま3人は、部屋を出て行った。
階段でもまだ何やら喚く大河の声が聞こえていたが、やがてそれもパタリと消え―――

数分後。

2人を無事見送った大野が帰ってきて、

「トンでもねぇな、鈴野」

2人が居なくなって広くなったその席にドカッと腰を下ろすと、ため息混じりにしみじみとそう呟いた。

「ああいうやりとり初めて生で見たけど、あれはすげぇ」

あの溺愛っぷりはあからさますぎるだろうと、言葉にはしないまでもそんな意味をこめて。
すると思わず風見が、ブハッと笑う。

「でも大河があれだから、仕方ないですよね」
「あれはダメだな」

ウーロン茶を片手に、大野も頷いて笑って。

「陸の弟じゃなかったら俺だってコロっといってたよ」

だいぶ危険なことをサラリと言ってのけるから、さすがに風見も幸樹も苦笑いをした。
すると、直希が登場以降ぽかんとしていた冴島も、

「やっぱそういうことか…」

大野に焼きそばを取って渡してやりながら、ポツリとそう呟く。

「どうかした?ミキ」

風見が問うと、

「いや、あの2人のことで、ちょっと……」

気軽に言える内容ではないので、冴島が遠慮がちにそう口ごもる。
だから大野も風見も幸樹も、揃って頷いてやった。
俺たちも知ってるぞ―――と。
でもうかつに口走るなよ、と。悪気はなくても天然な冴島なので、念のためだ。
それにしても、千田に引けを取らぬ天然フワフワ系の冴島が気付くということは、それだけ今日の直希はとんでもない空気を放っていたということ。そしてそれでも気付かない拓郎は、一体何なのだろう。

「そうかそうか。なんや、やっぱそうなんや……」

若干残念そうに、しかし適わないなとでもいうように、冴島は苦笑いをしている。

「俺、廉とも仲ええから、直希がPOLYGON入る前のこととかけっこう聞いたことあって。ほら、廉と直希って高校の同級生でもあるじゃないですか。だから、アイツから昔の話を聞く度、ずっと不思議やったんすよね。直希が大河さんにだけあんな風に世話焼くの」
「アイツの昔って?」
「割と飽きっぽいし去る者追わないし、そもそも女にクールやった…って、まあぜんぶ廉が言った話ですけど。でもそれ聞いてた直希も否定せんかったし、きっとホンマなんでしょうね」
「へえ、あれで?」
「すごいな大河」
「まあ、あれじゃあそうなるよな」
「「「……(納得)」」」

大野の結論に、幸樹も風見も冴島も無言で頷く。
そしてそれ以上は何となく酒のネタにしてはいけない気がして(大野はノンアルコールだが)、

「それより社長、合コンするなら俺も呼んでくださいよ」

冴島にしては上手な話題転換で、エヘヘと笑う。
しかし大野は、

「ん~、でも俺、口説きたい人いるからなぁ」

長い指でポテトをつまみながら笑った。

「え?!」

幸樹と風見だけでなく栗原までが身を乗り出すと(←何気に聞き耳を立てていた)、

「俺に惚れたことのない相手を惚れさせるのとか、楽しそうじゃない?」

大野はウーロン茶すらサマになる姿で、そう言ってニヤリと微笑んで。

「ぶっ……」

思わずビールを吹き出しそうになったのは、その台詞と共に足をチョンとつつかれた風見であった。
これが大野の本気か冗談か、それを知るのは大野本人のみである。


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