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「優しい嘘(直×大)」
4:それぞれの言い分

4-1

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【4:それぞれの言い分】

ソファに並んで座り、直希に改めて傷口を手当てしてもらいながら、大河はただただバツが悪くて黙り込んでいた。
同じように黙り込んでいる直希は、怒っているのか、普段から"澄ますと怖い"顔立ちが一層際立っている。

この相棒を、頼りにし始めたのはいつだっただろうか。
知り合ったのは、もう6年近く前のこと。当時ティーンモデルとして注目を集め始めていた直希が、大河たちのユニットPOLYGONのイベントにサポートメンバーとして参加したのがきっかけだった。
そんな彼が、イベントをきっかけにPOLYGONにメンバー入りすることになって、自分たちのバンドにも入りたいと言ってきて、距離はさらに縮まっていった。
1歳半とはいえ年下で、自分と同じように明るくて元気な直希を、最初はただ単に、自分と一緒になって騒いでくれる仲間ができたと、それだけだった。
それがいつの頃からか、その存在にホッとする自分が居て。
自分の僅かな感情の変化に気付いてくれる彼になら、少しだけ寄りかかれるようになって。そうやって、自分がこれまで抱えてきたいろいろな物が、少しずつ楽になって……
彼が正式にバンドメンバーになってから4年、四六時中傍に居るというのに、飽きるどころかそれが何よりの安心になっていた。大ブレイク、とまではいかなくてもそれなりに人気者になった今、たくさんの人間を知り合い友人も増えたが、やっぱり自分の相棒は彼だけで。

「直希…」

呼びかければいつも、傍に居て返事をしてくれる人。
だから今も、

「何?」

当たり前のように、向けられる顔。
こんな風にずっと、傍に居たいのに。

『彼女と別れてくれっていう意味の、"好き"だよ』

あのときもっと、しっかり突っぱねていれば。
直希の言葉に流されて、試しに付き合うなんていう提案を受け入れていなければ。

『ずっと好きだった』

あの瞬間、驚きと同時に感じた、なんともいえない安堵感。
そう。
本当は、知っていた。
自分すら気付かない深い部分で、きっと、直希の気持ちは知っていた。近すぎて気付かなかった、考えようともしなかっただけ。それを、あの瞬間に理解したのだ。
何をどう考えても、彼の自分への振る舞いも言葉も何もかもが、そういう意味での好意だったことを。

ずっと傍で、想ってくれていた人。
知り合ってから彼女が2人変わった大河の恋愛を黙って見守って、彼女の話を能天気に話す大河に笑みすら見せて。
それでも相棒で居ようとしてくれたのだ。

「ありがとな」

それなのに、それを壊したのは自分。
彼女とのモヤモヤを抱えた挙句、知り合ったばかりの後輩を連れ込んで。
それを平気で話した自分の行動が、直希の我慢を限界まで引き上げてしまった。
自分のような人間に付き合わせてしまった結果辛い思いをさせているのだと、あのとき痛感したはずなのに。

「俺、年上なのに、直希に迷惑かけてばっかやな」

口を出るのは謝罪ばかり。
綺麗に別れてやりたいのに、結局ごまかしきれなくて。
このままじゃ、今までの関係すら壊れてしまう。そうしたら、バンドのメンバーにだって迷惑をかけてしまう。

「俺がしっかりしないといけないのに」

せっかく直希が、自分に対しての感情の勘違いに気付いたかもしれないのに。
そしたら今度こそ、自分たちは純粋に相棒でいられるのに。

「俺が、ちゃんと導いてやらないといけないのに」
「…大河?」

自分まで一緒になって、気付いてしまうなんて。

「俺とは、関わらん方がええで。ロクなことない」

本当の気持ちに―――

「もう、放っといてくれへん?」

もう要らないと、切り捨ててくれれば。
秘密を抱えて生きるのは、誤魔化すのは慣れているから……


「何言ってんの?」


今までに無い低い声が、静かに響いた。

「何でそんなこと言うの?」

手当てを終えた手をギュッと握られて、そのまま一気に引き寄せられる。
突然目の前に現れた、その顔は……

「またそうやって、一人で抱えるの?」

怒りではなく、悲しみだけで。
今度は両肩を掴まれて、

「そのロクでもない奴を、誰よりも信頼してる俺は何なんだよっ」

ぶつけられた怒声も、やはり悲しみを含んだ叫びだった。

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