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「Beyond Silence(W大)」
1:Dilemma in Silence ~Side Fumitaka~

Beyond Silence 1-1

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【1:Dilemma in Silence ~Side Fumitaka~】

出逢ったときから、なんともいえない個性や存在感を持っていた子、それが大河だった。
元来人に執着しないし興味を持った人間にしか近寄らない俺だが、人懐っこくて物怖じしない態度と、どこか頼りなく感じさせる危うい空気に、何となく放っておけなくて近づいた。
それに、大親友の陸が手放しで溺愛している弟だというのも、恋人にすらとことんクールな陸(←それでも女のコたちは列をなして順番待ちするのだからトンでもない)の唯一の弱点がまさかの弟だというのも、興味を持った。その陸を追いかけて、たった15歳で上京までしてしまった大河にも。

『君が陸の弟か。はじめまして。"史孝"って呼んでくれていいからね』

陸のようにツンデレというわけでもなく、かといってだらないダジャレでスベり倒すわけでもなく、俺は自分の感情に素直に、その体を抱きしめた。思っていた以上に華奢なその体は一瞬強張ったものの、まんざらでもないのか抗うことはなかった。

あの日、気付いたこと。
大河は、人の温もりに飢えている。
そして大河は、俺の腕に"安らぎ"を見つけた。

幼い頃に母を亡くし、忙しい父を一緒に待ってくれていた兄も東京へ行ってしまった大河。しかしその寂しさを口に出すことはなく、大好きな父と兄のために我慢し続けてきたのだろうと、俺はすぐに分かった。そして陸もそこに気づいていたからこそ、陸も陸で必死で努力を重ね、自分を追いかけてきた大河のことも受け入れたのだろうと。
底抜けに明るい性格と芯の強さが故に全てを隠す、いじらしくて孤独な少年。でも俺の腕の中に居心地の良さを感じたらしく、そっと目を細めた少年。小さな頃、公園で子犬を拾ったときのことを思い出したりして、何だかわからないが無性に愛しさがこみ上げたのを覚えている。

あの日から俺は、大河の"飼い主"となった。
大河の仕草ひとつひとつがツボで、可愛くて、愛しくて、面白くて、本当に大好きで。大河も俺を『史孝さん大好き』と尻尾を振って無邪気にジャレてきては、甘えてくれる。甘やかしすぎるから陸や実やハルに怒られることも多々あった。
俺たちは誰もが認める"ペットと飼い主"。立花兄弟と大河のような"兄弟分トリオ"とも違う、ひたすら体温を与え合うような関係。

それなのに……

この気持ちに気付いたのは、3年前。
大河や立花兄弟らタレント養成所のメンバーで、ユニット"POLYGON"が結成された頃。何より、アイプロの社長の息子・伊集院薫と当時人気タレントでもあった陸が共同プロデューサーとして手掛けるユニットということでも注目を浴びた。
そして、陸とは親友コンビとして知られているせいか、事務所は違うがPOLYGONの初イベントにゲスト出演した俺。何かの話の流れで、大河と俺は恋人同士のようなやり取りが始まって。会場は盛り上がるし、反してステージ脇で睨みつけてくる陸が面白くて、俺はふざけて小芝居をエスカレートさせてしまったのだが。

『史孝さん、好き』

と、囁くような声と共に大河に顔を近づけられた瞬間、思わず俺は息を呑んだ。
あどけなさの中に見えた、確かな成長。それは18歳という年齢と大河本来のキャラクターを忘れさせるような、妙な色気を放っていた。
身長が伸びたとはいえまだ15cm近く高い俺の腕の中にすっぽりと納まり、子犬のように尻尾を振って無邪気に笑う彼とは違う、年齢や性別とは別世界にあるその空気は、いとも簡単に俺の心を捉えた。
あの時思わず口にした『マジで大河に惚れたわ』なんて発言がリップサービスではないこと、知っているのは本人の俺だけだろう。
あと数か月で30歳なんていう大の大人が、女には不自由していないはずの俺が、未成年の男に恋してるだなんて笑い種だけど。でも堕ちてしまったものは仕方がないのだ。

しかし俺は、気持ちに気付いても敢えてこれまでのスタンスは崩さなかった。
女の子への態度も、恋人(たち)には変わらず抜けぬけと"好きだ"と囁くし、誘ってきた子は美味しく頂く。伝えるつもりもないのに女断ちしてまで片想いを貫きますだなんて不健康なこと、俺はしない。そこまで健気じゃない。
割り切るのは得意。歯の浮くような台詞も得意。他の恋愛で気持ち誤魔化すのも得意。好きじゃない相手で欲望満たすのも得意。それが俺だ。

そして大河も、好奇心旺盛なのは恋愛に対しても然りで。恋を知る度に洗練されていく彼の魅力は、女性に留まらず同性の気も惹いた(もちろん当の大河は男は相手にしなかったが)。
とはいえ大河は俺や陸と違って真面目ではあるから、特定の彼女を作れば不特定多数の付き合いはしない。しかし何故かいつも長続きせず場数ばかりをこなしている大河は、本人は気づいていないようだが、いつからか惰性の恋愛ばかりを繰り返しているように見えた。
でもそんな中でも俺にだけは変わらず15歳の頃のまま、無邪気に尻尾を振って慕ってくる大河が、俺はやっぱり大好きで大切だと思った。このままで良いと思った。
思ったはず、なのに―――

最初に、つけいるようにして足を踏み入れたのは俺。
以前から感じていた事務所への不信感に耐え切れず、独立することを決めた俺は、タレント業の休業を余儀なくされて。ならばこれを機に、自分は陸と同様にタレントの育成に関わろうと決め、フリーになっても細々と舞い込んでくる仕事をこなしながら新事務所設立の準備を始めていた。
大河は大河で、POLYGONの活動が増えたとはいえまだまだバイトが必要な身だったし、バンドの活動も地道に続けている。それに数か月前に加入した鈴野直希と急速に親しくなったらしく、彼がバンド加入を希望しているとかで付きっ切りで応援している始末。互いに互いの道に向けて、俺たちの接点はほとんど失くなっていた。
大河と俺を、繋ぎ止める確かな"何か"が欲しいと思った。だから、

『大河、次の恋人候補、いいの紹介してやるよ』

ちょうど彼女と別れたばかりの大河に、そんなことを言った。
彼が不審に思わないよう努めて軽い口調で、好奇心旺盛な彼が興味を惹くような口ぶりで、彼が好きだと言う悪戯な笑顔で。自室のソファでわざとらしく隣に座って肩を抱き、ワインを注ぎながら(陸には絶対内緒だけど)。

『ていうか俺なんだけどね』

大河が大親友の弟だとか、俺には彼女が居るだとか、そんなことは一切無視。そもそも俺だって、誠実な純愛などする気は無かった。男と恋愛だなんて、そもそも自分の中では有り得ない。
とはいえ偏見は無いし、別に同性の恋愛っていうのは有るとは思う。周りを見ていてもそう思うし、何より俺が大河に恋した時点で否定は出来ないだろう。

『ねえ史孝さん、恋愛は自由でええと思うけど、俺は女の子好きやねんけど』
『俺も』
『俺男やで』
『知ってる。俺も男』
『知ってる。なら何で?』
『ん~、興味?』

そう、単なる興味だった。
男を好きになって、自分はどこまでその相手と出来るのか。どこまで欲するのだろうか。女の子と恋愛するのとどう違うか。

『なんか、大河と恋してみたいな~って思って』
『俺は史孝さんにジャレてたいけどな~』
『ジャレてよジャレてよ。ベッタベタで面白いじゃん』
『バカップル?』
『そうそう。バカップル』
『でも史孝さんの彼女たちに刺されそうやしねぇ。俺に割く時間を別の彼女に与えたらええやん』
『たくさんの女の子に割いている時間の一部を大河に割いてみたいんだけどね、俺的には』
『なんで?』
『面白そうだから』
『何が?』
『ん~、大河と恋するのが、かな?』
『は?』
『人生ってさ、意外性の連続だから面白いんだと思わない?その意外性のひとつを、大河と味わってみたいんだけど』

どうして俺は、あんなに必死で君を口説いたのだろう。
単なる興味のはずなのに。
同性の、しかもひと回り近くも年下の未成年相手に、何を必死になっていたのだろうか。
ただ、そんなに必死でも、それを全て隠して冷静に笑って彼をまっすぐ見つめていた俺は、相当の役者だと自分でも感じる。

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