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「Beyond Silence(W大)」
2:Dilemma in Silence ~Side Taiga~

Beyond Silence 2-1

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【2:Dilemma in Silence ~Side Taiga~】

史孝さん―――大野史孝の第一印象は、"都会人"やった。
何て言うか、田舎物な俺の周りには居なかったお兄さんって感じ?身のこなしも言動もひとつひとつがスマートでオシャレ。彼が視界に入れば女の子はみんなうっとりとする。少女マンガってどんなのか知らないけど、絶対こういう男ばっかが出てくるんやろなって思った。

『君が陸の弟か。はじめまして。"史孝"って呼んでくれていいからね』

ものすごくフレンドリーだけど押し付けがましさとか嫌味とかは無くて。ずっと会いたいと思っていた兄貴の親友が予想以上に気さくで良い人そうで、一気に安心した。だから嬉しくて笑顔で見上げた俺を、史孝さんは不意にギュッと抱きしめてきた。
俺を包む史孝さんの腕はあったかくて、不覚にも、安らぎを感じてしまった。なんとなく、自分の落ち着く場所を見つけてしまった気がした。
その後も史孝さんは何かと俺を自分の傍に置きたがり、俺もどんどん居心地よくなっていって。言葉でも物でもなく、ただただ笑顔で抱きしめてたくさん温もりをくれる彼のことが大好きになった。

そんな中で起きた、ある日の出来事。
仕事で何やらトラブルに巻き込まれたらしい史孝さんが、当時俺とハルが居候していた兄貴のマンションに訪れて。兄貴と2人で真剣に話していたから、俺とハルは自分たちの部屋で静かにしていたけれど、不意に史孝さんが部屋に現れ俺たちを呼んでくれて。

『ごめんな、気ぃ遣わせて。メシ、まだだったんだろ?一緒に食おうよ』

そう言いながら出前の注文表を眺める姿が、とても頼りなく見えたから。
たまらず俺は、史孝さんを抱きしめていた。いつも彼がしてくれたように、ギュッと。
それから頭を撫でてやったら、兄貴とかハルは大笑いしてたけど、

『ありがとう大河』

俺の背中に腕を回した史孝さんは、大きく息を吐きながら自分からも俺を抱き寄せてきて。

『お前の温度が、俺はいちばん安心できるな』

微笑みながら軽い口調で言った彼が、何故か泣いてしまうんやないかって思えた。俺より20cmぐらい大きくて年やって11歳も上のはずの史孝さんが、ものすごく小さな子供みたいに感じた。

あの日、気付いたこと。
史孝さんは、みんなに見せているほど強くない。
史孝さんだって、本当は誰かに甘えたい。

そんな、彼の別の一面を知った俺は。
守ってあげたい―――自然に、そう思っていた。

史孝さんが俺を抱きしめる理由。
それは、俺の孤独に気づいてくれていたから。
それは、史孝さん自身が安らげる空間やから。

まるでペットと飼い主のような関係性かもしれないけれど、それでもいいと俺は思った。
俺は史孝さんのことが大好きで、史孝さんの温度に安心する。史孝さんも俺のことが大好きで、俺の温度に安心するって言った。
俺たちはずっと、こんな風な関係でいるんやろなって信じてた。

でも。

変わってしまったのは、2年前。
何の前触れもなく、足を踏み入れてきたのは史孝さん。

事務所独立をきっかけにタレント業を休止することになった彼は、新しい事務所を立ち上げることを決心した。これからの忙しさを考えると今まで以上に会う機会がなくなるからと、史孝さんに誘われたある日。
史孝さんのマンション。お気に入りのワインを手にして隣に座った彼に、当たり前のように肩を抱かれて。グラスに注がれる真っ赤なワインを眺めながら、女の子やったら一発で堕ちるであろうその一連の仕草を"俺には一生似合わんやろな"なんて呑気に眺めていた俺。
でもふと、相手が男でもこんな風にするだろうかと考えて、不思議な感じがした。まあでも史孝さんは優しいし大人やから、するのかもしれないなと思い直してみたり。でも史孝さんが男にこんなことしてるの見たことないよな、なんてまた同じ答えに戻ってみたり。
そんな、いつもの悪いクセで一人の世界に入った俺に『なぁ』と声をかけた史孝さんは、俺に次の恋を紹介すると言ってきた。
突然の提案にキョトンとした俺やったけど、次に彼から投じられた言葉はそれ以上に奇想天外なもので。

『ていうか俺なんだけどね』

史孝さんがものすごく簡単に軽いノリで言ったもんやから、思わず"いいよ"と言いそうになって慌てて言葉を呑み込んだ。
俺は元々、同性の恋愛っていうのも恋愛の一つのカタチとは思っていた。だからきっと史孝さんもそういう考えを持ってたんやろうとは思う。
でも、それが自分たちにも当てはまるなんてことは、一切ないと思っていた。というかそもそも考えたことなかった。何故か、自分には有り得ないことって感じがして。
それなのに史孝さんは、さらりと、"ちょっとコンビニ付き合わない?"みたいなノリで、俺に"付き合おう"と言ってきたんや。
彼女(たち)が居るはずの史孝さんは、彼女募集中の俺との恋を"興味"なんやと、"面白そうだから"なんやと表現した。

『人生ってさ、意外性の連続だから面白いんだと思わない?その意外性のひとつを、大河と味わってみたいんだけど』

この人がどんなつもりでそんなことを言ったのかが分からず戸惑いつつも、すごく楽しそうに、大好きな悪戯っ子の笑顔で言う顔を見ていたら、正直どうでもよくなっていた俺は、

『ええよ』

気付けばそう答えていた。
男に"恋をしよう"と言われて平気で頷けたのも、史孝さんの恋愛必勝法ってやつにかかっただけなのかもしれない。この人はきっと、いつもこうやって欲しい子を手に入れてきたんやろう。史孝さんの口説きテクを目の当たりにして、"なるほどな"って思った。とはいえ、まさか俺にけしかけてくるとは思わなかったけど。
でも、いつも上手くいかない恋愛に若干疲れてもいたし、少し中休みがてらこの人と付き合ってみるのも悪くない、なんて。どうせなら楽しんでやろうっていうのが、俺が下した決断やったから。

『史孝さんの彼氏になってあげるよ』

そして自分も彼の肩に腕を回すと、何だか本当に面白くなりそうな予感がして思わず笑みが漏れた。
それから軽いキスを交わして、あまりに違和感なく出来てしまった自分が可笑しくてまた笑う。

『気軽な恋、しようよ』

史孝さんはあの日、何度もそう言っていた。
いつでも元の関係に戻れるような、そんな恋をしようって。
だから、

『OK!OK!わかったよ』

いつものように自然体でジャレていけば、彼もいつもの笑顔で抱きしめてくれる。
そう、いままでの関係性も、しっかりとこうして続いている。
あくまで"恋"は、その延長線上の楽しみというだけ。
でも―――

本当はあのとき、俺は気づくべきやった。

何度も何度も、俺に"気軽な"と言った彼。
戸惑う俺の顔を見つめる悪戯な笑顔に垣間見えた、どこか不安げに揺れる瞳。
俺が『ええよ』と答えたとき、彼が何故かホッとついた溜め息。
もしかしたら彼すら気付かなかった、それらの小さな小さな仕草の数々。
それは、自分の突拍子も無い発言に俺が引いてしまわないかという不安によるものだったかもしれないけれど、何かが引っかかる。
それなのにあの日の俺は、アルコールのせいなのか、全てをスルーしてしまっていた。

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