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「Beyond Silence(W大)」
3:Jealousy in Silence

Beyond Silence 3-1

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【3:Jealousy in Silence】

その姿を、俺はどんな表情で見ていただろう。
ちゃんと、笑えていただろうか……

俺の気持ちなど微塵も知らずにさらりとショッキングな言葉を吐いた君の顔は、今日も変わらず美しい。
少しずつでも確かに輝きを増していく君を縛り付けてはいけなくて、そもそもそんなのは俺のキャラでも流儀でもないのに。

"ひどいよなぁ、大河って"

軽くそう返したいのに、声が震えて無理だ。
どうしたんだろう。わかってたことなのに。
俺たちの"ルール"を、守っているのは君の方なのに。
俺は勝手に、酷く裏切られた気持ちに苛まれている。

「ま、どうでもええことやん」

―――よくねぇよ。

「で、何の話やったっけ?」

―――何だよ今さら。

「史孝さん?」

―――お前は俺だけ見てろよ。

……なんて。
それを言うのはルール違反だから、

「………」

叫びだしたい気持ちを、苦い物でも飲み込むかのように、薄くなったブランデーで一気に喉の奥へ流す。
グラスに映った顔は妙に余裕が無くて、思わず苦笑いした。





それは、1時間ほど前のこと。

馴染みのクラブのバーカウンター。
声をかけてきた、これまた馴染みの女の子・リサと30分ほど一緒に飲んでいた俺。
その彼女が何かを視界に捉えて振り返り、俺の肩をトントンと叩いた。

「ねえ、あの子……」
「え?」

俺もつられて振り返ると、そこには、見知った人物が1人。

「安藤たいちゃんじゃない?」

彼女独特の言い回しで、楽しそうに俺と大河を交互に見る。どうせなら一緒に遊ぼうと言いたげだ。
ボックス席の大河は、1人で何やらつまらなそうにビールを飲んでいる。

「何してんだろ、あいつ」

顔を知られ始めたタレントにしては無防備に、帽子もサングラスもしていない大河。しかしふと顔を上げた瞬間、俺を視界に捉えて視線を止めた。

「あ、気づいたよ」

彼女は嬉しそうに俺の腕を引く。
俺がヒョイと手を上げると、大河も同じように手を上げこちらに向かってきた。

「よお、史孝さん。オネエさんも」

彼女とは大河も何度か一緒に同席したことがあるため、名前は覚えていないまでも挨拶は交わす。

「ひどぉい、オネエさんだって。リサよ、リサ」

名前ぐらい覚えてよって抗議するリサに、大河も楽しげに手を合わせる。そして俺に視線をよこすと、不思議そうに首を傾げた。

「2人きり?」

大河は、彼女が何かと俺を誘ってくることも、そんな彼女に俺が若干引いていて2人きりにならないようにしていることも知っている。だから、かなり不思議だったのだろう。

「いや、こっちも偶然会ってさ、さっき」
「そうなの。史孝ってば1人でしんみり飲んじゃってるから、誰かに誘われる前に誘っちゃった」

ユーモアもあり明るい彼女のことは好きだが、それはあくまで女友達としてであって。強引に節操なしに近づく彼女のことは、恋愛対象としては俺は苦手だった。
だから大河も、見えないように苦笑した俺を気の毒そうに笑い、労うように背中を叩いてくる。

「今日の史孝さんは哀愁漂わせちゃってたんや?」
「そんなんじゃないけどね」
「今日は憂いの表情で堕とす作戦?」
「何だよ、それ(笑)」
「何してもカッコええもん、史孝兄さんは。30代に入ってから更に磨きがかかっちゃって」
「惚れ直した?」
「アハハっ。かもね」

そんな、いつもの軽いやりとりで、俺も思わずいつものように大河の肩を引き寄せる。
その瞬間。
鼻をかすめた香水の香りに、ギクリと手が強張った。
そう、これは……

"ベビードール"

最近大河がよくつけられているらしき、移り香。

「ちょっとぉ、2人がそういう会話するとマジっぽいからやめてよね」

完全に存在を忘れられていた彼女が割って入り、大河も笑いながら俺から離れたが、俺は笑えなかった。
そして……

「大河」

甘い、鼻にかかったような独特な声が、更に俺の心を貫く。
嫌だという心とは裏腹に首が動いて、その姿を視界に捉えた。

「おお、こっちこっち」

手を上げた大河に、お待たせと駆け寄ってきた女性。
俺もよく知っている子だった。

「あ……」

その子も俺に気づいて、顔を向ける。

「大野さん」
「久しぶりだね、エリコちゃん」

人気女優のエリコちゃんだった。
エリコちゃんは、最近大河と噂されている子だ。
CMにドラマにと、立て続けに彼女の恋人役で大河が抜擢されたこともあるかもしれないが、高校時代の同級生でもある2人はプライベートでも仲が良く、何度か互いのSNSに登場していることが、噂に拍車をかけているのだ。

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