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「優しい嘘(直×大)」
4:それぞれの言い分

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「直希ゴメン」

足りないだなんて、ありえないのに。
自分の軽はずみな行動が、いまだに彼に不安を抱かせていた。
その誤解は、解いてやらなければいけない。

「違うから」

その言葉が、どう捉えられるかなど、もう大河には考える余裕などなかった。

「まずは、チダちゃんのことは、ホンマにもう何とも思ってないし、そもそもあのときやって、そこまで本気じゃない。この先そんな風に思うこともない」

たとえ2人きりになったとしても。

「でもその理由は、お前に気を遣ってるわけじゃないよ」

寧ろ、

「もう、わかったから……」
「わかった?」
「そう。俺が、チダちゃん口説けなかった理由も、彼女と別れたきっかけも」
「……?」
「俺あの日、別に彼女と別れるつもりなんてなかった。早くケリはつけようとしたけど、直希に言われたから別れようとしたわけではなくて、ちゃんと話し合って決めようと思ってた」

そう、あの日大河は、単純に彼女とのんびり過ごすだけのつもりだった。
直希に告白されたからとはいえ、ちゃんと向き合うことを約束したとはいえ、具体的にいつ別れるか話したわけではない。2年近く付き合った彼女に対して、冷めていく一方だと知りつつもそれなりに情もあった。

「今思えば、あの日もそうや」

自分の肩を掴む直希の手を静かに下ろした大河は、真っ直ぐに向けられる彼の視線に、自分も合わせる。

「チダちゃん家にあげて、玄関あがってくるその姿見た瞬間、直希の姿が頭に浮かんだんや」

付き合っているはずの彼女ではなくて、仲間の顔が。
千田とは似ても似つかないタイプのその顔が、何故かオーバーラップして。

「そしたら急に気分が萎えて、ものすごく悪いことしてる気分になって」

千田に何か言ったわけでもないのに、必死でその場を取り繕うと、兄や仲間の話をして笑いをとる自分が居た。

「あの日、彼女と会ったときもそうや。
彼女に名前を呼ばれる度に、直希の声がして、頭から離れなくて……」

高くも細くもない、“万年変声期”とよく言われる独特なその声ばかりが、頭に響いて。

「彼女に抱き着かれたとき、直希やったらもっと安心できるのにとか…思って」

その何の膨らみもないはずの硬い胸が、ふんわり香る男物の香水の匂いが、恋しくなって。

「彼女の顔近づいて、直希の顔がちらついて」

明るい笑顔が、浮かんだ瞬間―――
思わず、顔をそらしてしまっていた自分。

「気が付いたら、彼女に"別れよう"って、言ってた……」

千田に関しては、今思えば、どうにかなる可能性は最初からゼロだった。と付け加えて。

「キス拒んだ上に別れ話やろ?思いっきりビンタくらって、めっちゃ痛かったわ」

別れが近いことは彼女も知っていただろうが、大河から切り出されたことが悔しかったのか、"こっちから別れてやる"というような言葉も吐かれた気がする。

「そしたら急に直希に会いたくなって……電話かけてた」

何度も思い出してしまうその人が、夜にも関わらず、翌日は朝早いにも関わらず、真っ先に迎えに来てくれて。
"会いたい"なんて言ってはいけないと躊躇した自分の迷いなど、あっさり吹き飛ばしてくれた。

「それでもあんな風に逃げようとしたのは、」

『ごめん直希、俺はお前を、そういう風には見れない』

そう言ってしまったのは、

「怖かったから。それを言った瞬間、何かが変わってしまうのが、怖くて……」

自分が答えた瞬間に、この関係は引き返せないものになりそうで。
もしものために、ギリギリのラインで自分が踏みとどまらせてやるべきだ、なんて。

「絶対変わるって、確信しとったし。自分が…どういう風に見てるかなんて、そんなん……」

『キスしようよ、大河。
俺として、嫌じゃなかったら、可能性はあるよ』

しなくても、本当は知っていたけど。
それを理由にすれば、彼はしてくれるのだと思ったから、拒まなかった。

「彼女とできなかったことが、直希とならあんなにあっさりできて…それがもう、答えやんか」

そう、本当は知っていた。
自分の気持ちなんて、もう分かっていた。

「だから、直希の告白に流されたとかやないで。自分が自覚してなかったこと、自覚しただけや」

そう言って大河は、とってつけたような笑い声を漏らした。
自分がとんでもないことを言ってしまったことにも気付かず。

「チダちゃんのことも、そういうことで。俺…」
「…ちょちょ、ストップストップ!」

黙って聞いていた直希が、突然大きな声で大河を制した。

「今…何て?」

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