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「短編作品」
2度目の夏(直×大)

2度目の夏-2

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「これかよ…」

肩を落として、"やれやれ"と溜め息をつく。

「そう、それや。お前、ホンマにひねくれ者やな。素直に言えば直希も喜ぶのに」
「いや、コレ本心やで。俺、ホンマにそう思ったんやもん」
「それ、直希に言うなよ。言ったら誠さん、殺されるで。才能ある役者をやね、まだ死なせたない」
「俺やって、自分の身が可愛いんですけど」
「は?ワケわからん」
「つまりね、ハルくん」

大河の意味不明な発言を理解しかねた春海に、大河と気が合うだけに正確に理解したらしき幸田が割って入り、助け舟を出してきた。

「つまり、大河があそこで本心を言うと、直希が感動しすぎて明日のハードロケも忘れて、夜、大河の身が危険になるわけだ。だってほら、直希、今日誕生日だろ?"最高のプレゼントだー"って感じで。たとえホテルじゃ部屋が別々だってさ、どこか場所を見つけてだって、直希ならしかねない。
分かるか?な、そうだろ?大河」
「なっ……!何言うてんねん!!俺そこまで考えてへんしっ」
「なるほどな~」
「ちょっ、ハルまで…(泣)」

自分でさえそこまで考えていなかった直希の心理と行動を当てられ、それがありえすぎて、大河はひたすら動揺してしまう。
そもそも、幸田や春海は知らないだろうが、今日は直希の誕生日だけではない。自分たちの、交際1年という記念日でもあるのだから。
しかしだからこそ、ケンカなんてしたくないのに。

―――またこのパターンか…

半年記念といい1周年記念の今日といい、自分の言動が原因で直希の嫉妬を煽り気まずくなるなんて。
でも本心だった以上、どう言えば分かってもらえるのだろうと、大河は頭を抱えてしまった。

「あ、大河さんここに居たんだ。あれ、アキさんまで」

遠慮なく襖を開けて入ってきたのは、春海の相方・栗原歩。
マネージャーと打ち合わせをしてから戻ってくると、部屋に居るはずの大河が居らず、居ないはずの直希が居て。そいつが不機嫌となれば、鋭い栗原なら事情を察するわけで。巻き込まれたくなくて、相方であり兄貴分でもある春海の部屋へと逃げてきたところだったのだ。

「あのさぁ大河さん、俺らの部屋に、ガラの悪い千葉のヤンキーが居るんだけど、あれ何?」

小柄な体で足早に大河の隣に座った栗原が、大河の腕を引きながら部屋の状況を訴える。遠慮のない栗原らしいその表現に、幸田と春海は思わずプッと笑ったが、

「ガラ悪いかぁ~…」

そんなにご機嫌斜めかよと、大河だけはガックリと項垂れた。

「…とにかく、俺ちょっと、部屋戻るわ」

よろよろと立ち上がると、大河はこの先きっとまだ部屋で待っているであろう恋人の機嫌をどう直すか考えて、頭をガシガシと掻く。そして栗原に、

「ごめん歩、ちょっとだけ、ここの部屋に居てくれるか?」

理由は告げずにそれだけを言うと、部屋を後にしようと歩き出した。
首を傾げながらそれを見送る栗原の元へ、代わりに幸田が近付く。

「歩、こっちおいで」
「アキさん、千田君と同じ部屋だよな?置いてきたの?」
「置いてかれたのは俺。俺が寝てる間に幸樹と温泉行ってた。起きたら一人になってたからここ来たんだよ」
「へ~そうなんだ」
「だからさ、少しここで遊んでこ。ここの部屋、ビールあるぜ」
「お。いいね~~」

部屋を"我が物"状態にする幸田に、春海は既に溜め息すら出ない。しかし、栗原をさりげなくこの部屋に引きとめた幸田に今は感謝して、

「ま、これも試練と考えて、頑張れよ」

自分も立ち上がって大河に近づき、そう言葉を掛ける。しかし、

「相部屋の栗ちゃんのこと、追い出すなよ。明日のロケの事、ちゃんと考えるんやで」

思わず余計な事を言ってしまったおかげで、大河がギロリと春海を睨みつけてきた。
しかし言い返す言葉が見つからなかったのか、

「っせぇ、バーカバーカ!!」

偏差値の低い悪態を標準語でついてから、ドカドカと足音を立てて部屋を出て行ってしまった。

一気に、静かになる室内。

「ハル、人が良過ぎ。あのトンチンカンをもうちょっとからかおうと思ってたのに。あれじゃすぐ仲直りしちゃうぞぉ」

3人になった部屋で、幸田がつまらなそうに呟く。
だから春海は、幸田の頭をパコンと叩いた。

「アキは人の仲をかきまぜなくてええねん。仲直りして上等やろ」

そして自分もまた座り、栗原からビールを受け取りながら、出るのは大きな溜め息。

「それにしても、直希はあいつが絡むとホンマに冗談通じなくなるよな…」


『自分が女だったら、メンバーの誰と付き合いたいですか?』

午前中行われたインタビューで、大河たちはそんな質問をされた。
これは、件のテレビ特番には関係なく、ローカル局の情報番組による、POLYGONへの取材だ。北海道といってもあまり有名ではないこの街に人気ユニットの10人中8人が来ているとなれば、必然的に取材依頼がくる。おかげで取材中は、春海と栗原はのんびりと野次馬していられた。
そしてこの番組のゲストがお約束のようにされる質問というのが、それだった。"メンバーの中で"とは、もちろんPOLYGONのメンバー。
その質問に、直希は一切の迷いも見せずに『もちろん大河』と答えた。実と幸樹は直希の"もちろん"をツッコミながらも同じく大河の名前を挙げ、他のメンバーもそれぞれノリと冗談で適当な回答を繰り返して。
そんな、大部分が適当ムードの中、少し考えてから『ダントツ自分ですかね』と答えていたのは千田だ。最愛の恋人・陸に惚れきっている千田からしたら、冗談でも他の人間を答えられなかったのだ。もちろん、そんな事情を知るのは大河と直希だけだが、咄嗟に答えた割にはなかなか良い答えだけに、場は盛り上がった。
そんな中で、千田と同じく恋人を持つ男・大河は違った。同じように少し考えたまでは良かったが、出た名前は……

『誠さんかなぁ…』

理由は"同じ男としてカッコいいと思うから"らしい。
確かに誠は、すぐにボケたがるバカで色気のない部分が目立ちつつも、ルックスは抜群だし、大らかで優しく賢い男。双子の弟・実のような女泣かせのクールということもなく女性への気遣いだって利くし、歴代の彼女との付き合い方を見ていたって、彼が"良い彼氏"だと思うのは大河だけではないはず。
だから大河に他意はなかったし、客観的な意見を言っただけなのだと、すぐに分かるはずなのに。

「あんなん、ただの一般論やんか」

大河の本心なんて、直希が一番分かっているだろうにと春海は思う。

大河は不器用で失敗も多いトラブルメーカーではあるが、それでもたくさんの人から好かれる。根っからのお人よしで優しい大河は、自分が損をしたり苦労をしても相手のことを考えてやれるからだろう。
もちろん、その気の強さや正義感や白黒はっきりした性格のせいで敵を作ることもあるが、一度味方についた人間からはとことん好かれる。大河もまた、自分の周囲の人間を分け隔てなく大事にしている。
そんな、特別扱いを嫌う大河だが。"ある人"に対してだけは別。それはその人が、大河にとって最愛の人であるからだ。たくさんの仲間を愛していたって、大河がその人物に抱いている愛情は、種類が違う。
そう。男女問わず愛される大河が恋愛対象として愛する相手は、いつでも"ヤンキーあがりの相棒"でしか、彼の形にしか心に存在しない。
だから…

「こんな事で機嫌損ねることないのに…」

春海はやれやれと溜め息をつき、すでにビールを1本空けてしまっている幸田と栗原の相手をしてやることにした。

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