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「アゲイン(陸×千)」
1:疑惑の男

アゲイン 1-3

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「それより、これからどうすんの?あの人と何か話したか?」

頭を撫でていた手で今度は肩を抱いて、幸田が千田を覗き込む。

「……。もう、会わない」

千田が、ボソリとそう答えると、

「「「「え?」」」」

そこに居るメンバーたちが、ほぼ同時にそう声を発した。

「会わない。特に向こうからも連絡ないし、たぶんこのまま会わない方が―――」
「何考えてんだよ、あの人」

千田の言葉に幸田が苛立った声を出し、今度は頭を抱きしめてくる。

「千田の気持ちを何だと思ってんだよ。さんざん振り回しておいてさ。結局何が目的かわかんねーし」
「アキ」
「だってそうだろ?誠さん。川口さんだってそう思うだろ?
大河には悪いけど、あの人何考えてんだよ。事務所移るとかも聞いてねーし。
こんな問題起こして、自分の立場マズくなったら連絡しないの?そんなのあり?」
「まだ分かんないだろ」
「でも…!千田かわいそうじゃないか!」
「まぁまぁまぁ」

千田をギュウギュウ抱きしめる幸田を引き剥がしにきた誠が、大らかな笑顔を見せて千田を彼から解放した。大河は困ったように頭を掻きながら、「あの人そんな無責任ちゃうから」と幸田を宥めている。
すると川口が、幸田の頭を軽く撫でて言った。

「大河君の言う通りだよ。陸さんが連絡できないのは、容易に行動とって問題を大きくしないためだと思う。
俺もあの人の肩持つつもりは無いけど、かといって千田をそんな風に利用して逃げるようなタイプでもないよ。そんな汚い手を使うような人じゃないと信じてる。千田とのことをどう思ってるかは分からないし、彼自身が事務所移る云々ていうのも俺も全然聞いてないけど、必ずこの落とし前はつけてくれるはずだ。そうじゃなきゃ俺が許さないから安心しな。タレントを守るのが俺の役目だ。相手が誰でも許さないよ」

お人よしでいつも優しい川口だが、いざとなればとても頼れるマネージャーだ。言葉に説得力もある。
だから今も、川口の発言で幸田は一気に冷静になって、

「そっすね。ていうか、俺だって許さねーし」

またもや千田の頭を掻き回しながら言った。
すると大河が大きく頷いて、

「そもそも俺が居るんや、安心せぇ。俺なら誰よりも気兼ねなくあの人ボコれるから」

ニヤリと笑った。
すると仲間たちがまた笑い、今度は千田も笑顔になって。ようやく、その場の緊張がほぐれていく。
稽古場にはいつの間にか全員揃っていて、それぞれ準備を始めるべく散っていった。
通り過ぎながら、誰もが千田の背中を叩いたり頭を撫でていく。

『大丈夫だよ』

と言うかのように。
千田は、自分はみんなに守られていると強く感じた。

ならば、あの人は―――?と考える。

まずい立場になってはいないだろうか。
もしそうだとして、庇ってくれる人は居るのだろうか?
一人で闘うことにはなっていないだろうか?
いざとなったら大河は、兄である彼をちゃんと庇ってくれるだろうか?

……なんて。
また陸のことが気になった自分は、やっぱりダメだなと千田は思った。





キリのいいところで撮影はいったん中断し、千田たちは各々昼食をとっていた。
エアコンの甲斐なく熱気が上がっている室内に寝不足の体はこたえて、食欲のない千田は、食べもしない弁当を飾って水だけ飲んでいたが、

「イベント直前に倒れたらタレント失格だからな」

ポロリ、と目の前に何かが落とされる。
それは、千田の大好きなパン屋の袋。
顔を上げると、幸田と拓郎だった。

「あ、ありがとう…」
「ごめん、メロンパン売り切れだった」
「…別にぜんぜん、何でもいいで…」
「変わりにプレミアムメロンパン。50円高い方」
「あはっ、好都合すねぇ」

笑った千田に幸田と拓郎もにこりと笑って、そのまま隣に腰を下ろしてくる。

「もう1つはさ、タクが千田はチョコデニッシュが好きだからそれにしようって言ったけど、甘いの2つは厳しいと思って、俺の独断でコロッケサンドにした」
「あそこのチョコデニッシュ好きですけどね」
「ほらほら~~!アキ~~!」
「はぁ?うっせぇよ。甘いの2つじゃ塩分足りないだろ?汗かいたんだから塩とるんだよ、塩」

ぎゃーぎゃーうるさい2人は夏の暑さに若干拍車をかけている。
でも、このばかばかしいやりとりが好きで、千田は自然に笑いながら見ていた。
すると、不意に千田のスマホが、メッセージの着信を告げて。

「ん?あ……」

相手は、立花兄弟と外へ食べに出ているはずの大河だった。

『兄貴、もしかしてそっち来とる?』

意味が分からない内容だ。

『どういうことですか?』

そう返そうとしたとき、

「おい、千田っ!」

幸田に突然肩を強く揺すられて、千田はスマホを落としそうになった。

「ちょ、何すか…」
「あ、あれ!」
「え?」

"あれ"と指差された先。
稽古場の出入口の扉。
そこには―――


陸が、いた。

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