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「アゲイン(陸×千)」
1:疑惑の男

アゲイン 1-4

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「なんで……」

彼は確か、昨日から都内には居ないはず。仕事の急なスケジュール変更があったため横浜に居て、本当は来てくれる予定だった今日の撮影も来れなくなっていたのだから。
そしてそれを知っているからこそ、幸田も驚いていたのだ。他のメンバーたちもまた、昼ごはんを摂る手を止めて、そのありえない存在を凝視している。

「なんで……」

またもや千田は、同じ言葉を無意識に出していた。
そんな風に戸惑いを隠せない千田に陸は気付かず、ちょうど傍に居た高瀬マネージャー(大河の個人マネ)に話しかけている。高瀬は当然週刊誌の件を知っているが、タレント時代は陸の後輩でもあったせいか優しい表情で陸を迎え、用件を聞くと、またもや笑顔で陸の背中を軽く叩いてから部屋を出て行った。
陸は誰かを待っているのか立ったままで、ゆっくりと館内を見渡している。千田は体が硬直して動かず、彼の視線がこっちにくるのを待つだけだった。
やがて、陸の顔が千田の方へと向いて……

―――……

千田に気付いた彼が少しだけ表情を変え、そしてそのまま真っ直ぐ見つめてくる。
千田も彼から視線を逸らすことができず、ただただ、見詰め合うしかできない。

すると、

間もなくそこには、高瀬に連れられた伊集院社長と、SQUAREチーフマネージャーの八神が現れた。
陸が千田から視線をはずし、伊集院と八神に頭を下げる。伊集院は陸が来るのを知っていたように小さく頷きながら肩に手を置いて顔を上げさせると、陸を出口へ促し、3人は室内から消えていった。

―――な、何、これ。何で彼がここに?

「千田、あの人、来ちゃったよ」

幸田が千田の腕をぐいぐいと引きながら話しかけてくるが、千田は言葉が出ない。

「何しにきたんだろ?だって横浜っつってたよな?わざわざ横浜から来たのか?何しに?」
「…………」
「っていうか、ストレートに考えるとすれば……
お前とのこと、ちゃんと説明しに来たってこと、か…?」
「……まさか」
「そのまさか、だろ、普通に考えれば」

いい度胸してるじゃん―――呟くように、姿の消えた扉を見つめながら幸田が言う。
千田はふと、大河からのさっきのメッセージを思い出し、

「ごめん、俺ちょっと、電話してきます」

スマホを握り締め、その輪を抜けた。



部屋の隅で千田は、大河に電話をかける。
彼は数回のコールで電話に出てくれた。

「あ、大河さん」
『おお、チダちゃん。L●NE見た?』
「はい」
『いや、撮影中に兄貴からL●NEきとってな?"お前にはまた迷惑かけるかもしれないけど、今日ちょっと事務所行って社長と話すつもりや"って。朝のうちに送られてたっぽいから、もしかして着いたかなと思って…』
「はい。で、あの、たった今…」
『ああ、来ちゃった?なんや、俺には生意気なこと言って、やっぱ限界だったんやんか』
「限界?」
『お前と連絡とれなくて、だいぶ参ってたんやで、あの人』
「え…」

千田は、その言葉が信じられなかった。
あの人が、そんな風になるわけがないと。

『あのさぁチダちゃん、兄貴と、ホンマに別れるつもりなん?』

戸惑いで口を閉ざした千田に、大河が優しく呼びかける。

「え、あ、えっと…」
『ん?』
「そもそも陸は、俺のこと好きじゃなかったかもしれないし」
『あ、"陸"って呼んでるんやぁ』
「え?あ…えっと、(焦)」
『ふふ。どうせあっちから"そう呼んで"って言ってきたんやろ?どうするよ誠さん、実』
「ちょ、ちょっと!誠さんたち居る場所で電話してんですか?」

千田の"陸"呼びで少しふざけるような口調になった大河と、電話の向こうで笑いながら『無いな』と声を揃えている立花兄弟の声。恥ずかしさで、千田も思わず声の調子が戻った。だいたい、彼らが行ったのは定食屋のはずだ。この昼時に、誰に聞かれるか分かったもんじゃない。
するとそれを察したらしき大河が、食事は終わって車の中(誠が運転中)だということを教えてくれたが、それでも立花兄弟に聞かれた時点で千田からしたら赤っ恥ものだ。

「大河さんだけだと思ったから話したんすよ?」
『ああ、ごめんごめん。あはは、チダちゃんの元気な声久しぶりやぁ』
「…え?」

その言葉に千田が思わずハッとすると、冗談を飛ばしていた大河が、再び静かな口調に戻して言ってきた。

『なあチダちゃん、俺は、できれば兄貴と別れてほしくないよ。チャンスあげてくれない?』

優しくて、大人を思わせる、声。
それは陸と酷く似ていて、千田はまた心がチクリと痛んだ。
まるで彼から"別れたくない"と言われているようで。
でも―――

「チャンスなんて…。話を切り上げて一方的に振り切ったのは俺の方だし」
『だから呆れられたかもって?無いわ、それは無い。兄貴は、チダちゃんにマジやもん。俺にはわかる。実際、マジの相手やからここまで来とるわけやし。
ああ大丈夫、俺はチダちゃんの味方やから、チダちゃんがどうしても嫌ならバッサリ切って構わんで。自業自得やし、1回ぐらい振られる辛さ経験すればええねん』
「はあ。でも、ここまで来たのと、マジって、どう関係するんですか?」
『え、分からんの?』
「分からないですよ」
『そおか。あのな?―――』

それから彼がしてくれた話に、おそらくこうであろうと話してくれた大河の意図に、千田は衝撃を受けた。


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