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「アゲイン(陸×千)」
2:あるがままの自分

アゲイン 2-4

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「……わかった」

しばらくの沈黙の後、伊集院が八神や川口と顔を見合わせて頷いた後、そう口を開いた。

「陸」
「…はい」
「千田は、これからどんどん成長するタレントだと思うし、たくさんの可能性を秘めている。大切に育てていきたいと思ってる。だから、お前の行動で今回のような問題が起きることは、本当に困る。もうこんなことが二度とないように、事態の把握と処理は迅速に行ってもらいたい。自分だけじゃ難しいなら、俺たちに相談すればいいんだ。今回の件はまさにそれの典型パターンだ。まずそれを約束してくれるか?」
「はい、もちろんです」
「じゃあ、今度はお前に向けて。
 俺にとってお前は、特別な奴だ。俺が拾って育てたタレントで、今はこうして、事務所のタレント育成にも関わってくれる。お前のことは誰より信頼してるし、才能も俺がいちばん知ってる自信がある。
だから……」

―――お互い支え合っていけ

静かな、優しい声。
千田も陸も、その意外な言葉に、思わず目を丸くした。
そんな2人に、伊集院は、彼特有の優しい笑みを見せる。

「2人の気持ちが同じなら、陸の言うとおり本当にお前たちがわきまえるべきところはわきまえているのなら、付き合ってはいけない理由なんてない。問題ないと思う。事務所としても、しっかりバックアップしてやる。それが俺の意見だ」

そうだよな?と伊集院が八神や川口を見れば、2人も大きく頷く。そして彼らも、微笑んで千田と陸に顔を向けた。

「ありがとうございます」

陸が、深々と頭を下げる。
千田もそれに続いた。

「記事に関して多少は騒ぎになるだろうが、今回に限り特別に、こっちでそれらしい理由を作ってやる。安心しろ」
「すいません薫さん(←伊集院)。ホンマにありがとうございます」
「ったく、三十路超えても手がかかる奴だなお前は。
ただ、これだけは念を押しておくが、今回だけだぞ」
「もちろんです」
「また気の緩みを感じさせるようなことをしたら、この付き合いは認めないからな」
「わかってます。二度とこんなヘマしません」
「千田、お前も同じだぞ?」
「あ…は、はい!」

いきなり矛先を向けられて焦りながら、千田は大きく返事をしてまた頭を下げた。





長いようで、時間的には短かった"ミーティング"が終わって。
千田は撮影に戻りがてら、駐車場へ向かう陸と共に並んで歩いた。

「間に合いそう?すでに2時近いけど…」

陸が何時から何の仕事があるか分からないから、千田は恐々と陸を見遣る。
本当に彼は、合間を使って来てくれているのだろうかと。途中で抜け出て来てしまったりしていないだろうかと。
そんな風に心配そうに眉を下げる千田に、陸は目を細めて頷いた。

「道路空いてそうやし、余裕で間に合うよ。横浜やし、大丈夫」
「そっか……」

川口も八神も、今回の件の処理関連で伊集院と話をするからと、社長室に残ってしまっている。だから2人きりで歩いているのだが、千田は彼にかける言葉がそれ以上見つからない。
そこからは2人また無言になって、駐車場へと続く裏口まで来てしまった。
立ち止まり、どちらからともなく見つめ合う。
さっきまでの話がグルグルと頭を回っていて気持ちが追いつかない千田は、ぼんやりとただ、陸を見つめるしか出来ない。
自分のために真剣な思いをぶつけてくれた彼の表情や言葉が、頭から離れなくて。
何か言葉が欲しくて。自分も謝りたくて……

「あの…」
「そんな目で見るなよ」

フッと、陸が小さく笑った。

―――さっそく約束破りそうになるやろ。

千田の手を、互いの体で隠れる位置でそっと握って。

「有介と別れたくないから、仕事戻らせて?」
「……」
「撮影、何時まで?」
「え、っと…20時ぐらいには終わるかと…」
「じゃあ、俺と同じぐらいかな。終わったらお前のマンション行く」
「え?」
「ちゃんと話がしたい。してくれる?」
「あ、それはもちろんだけど…」
「ん?」
「でも今日は、疲れてるだろうし……」

千田は、複雑な気持ちで陸を見た。
心身共に疲れているだろうに、陸は自分のために横浜から飛んできてくれて、そしてまたとんぼ返りするのだ。これでまた、仕事終わりで東京まで戻るというだけでも大変なのに、自分のところへ来させてまた帰らせるのは、申し訳ない。
いや、申し訳ないというよりも、そんな無理をさせるのは、自分が嫌だ。
しかし陸は、

「大丈夫やって。有介との話を持ち越す方が嫌やわ」

と、何でもないことのように笑う。
こういうときの彼に何を言っても折れないだろうことは、千田もこの半年の付き合いで何となく分かっている。
そして自分としても、気持ちは陸と同じだ。彼ともう一度、向き合いたい。
ならばどうすべきかと考え、

「じゃあ、俺が行く」

いちばんシンプルだがいちばん妥当であろう提案を出した。

「あなたが、あちこち足を運ぶ必要なんて無い。疲れる必要なんて無い」
「え?別にこれぐらい大したこと…」
「俺があるんだ」

まだ何か言い募ろうとする彼を、遮って。

「来てくれて本当にありがとう。だから今度は俺が行く」

有無を言わせない勢いで言うと、

「……うん、わかった」

ようやく陸も納得したようで、素直に頷いた。

「車、気をつけて」
「有介もな。気をつけて来いよ?」
「うん」

久しぶりに、少しだけだが微笑み合う。
そして本当に時間がギリギリになった陸は、慌てて横浜へと戻って行った。


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