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「アゲイン(陸×千)」
3:アゲイン

アゲイン 3-3

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買ってきたものを2人で完食し、ゴミの片付けと食器洗いを手分けして終わらせ、ソファに並んで座る。
テーブルには、陸が作ってくれたアイスカフェオレ。千田の好物だ。

―――22時半か……

特に意味はないのだが、千田はチラリと時計を見た。
陸も、千田の仕草に気付いて、自分も時計を見遣る。

「有介は、明日何時?」
「えっと…11時に青山」
「じゃあ泊まっていきな」
「…え?」
「洋服なら、貸してやるよ。俺ら体型ほぼ一緒やし、大丈夫やろ」
「…陸の服を?」
「何や、俺の服はダサいか?」
「ま、まさか」

そういうことじゃないだろうと、千田は困ったように首を振った。
単純に、洋服のシェア自体に戸惑っただけなのだ、と。

「俺そそっかしいし、しょうゆとかこぼしたら…」
「ははっ、別にかまわんで。ホンマ有介は真面目やな。ええよな、そういうとこ」

決してバカにしているわけではなく、純粋に楽しそうに笑った陸が、テーブルに無造作に置かれているスナック菓子をパクリと口に運ぶ。酒が好きなのに甘いものが好きなところも、ご飯食べた後でもダラダラ食べてしまうところも、それでも太らない体質も、背格好同様に千田と陸の共通点だ。

「なぁ有介」

"食う?"と千田の口元にスナック菓子を運び、大食漢の条件反射でパクリと食べた千田をまた愛おしそうに見つめた陸が、

「本題なんやけどな?」

真剣な表情に変えて、そう切り出した。
それで千田も気付き、口の中のお菓子をゴクリと飲み込む。

『俺は有介に訊きたいことがあって……』

夕飯を買いに行く途中で途切れていた、会話の続き。
自分は千田からの信用がないと苦笑いしていた陸が言った、あの言葉の続きだ。

「俺、今日、あれからずっと考えてて……」

どこか不安気に視線を落とした陸の声に、千田は緊張が高まって。無言のまま、相槌を打つだけしかできない。
すると陸が、再び視線を上げて千田を見つめた。

「有介は、俺とのこと、そんなに不安やった?」

胸をしめつけるような、核心を貫く言葉。

「ふとしたきっかけで信じられなくなるほど、俺との関係は危うかった?そんなに不安にさせてたかな、俺」

それは、昼間の自分の発言についてだろうことは、千田にもすぐ理解できた。

『今回のことで不安が膨らんで、彼を信じきれなくなって……』
『きっと、心のどこかで、いつも不安だったからだと思います』

千田が陸に、初めて言った本音。
分不相応のような関係が千田の心に積み上げていた、不安。

「俺、何がアカンかったかな……」

不安になる理由が分からないとでもいうように、陸は髪をかき上げる。困ったときの彼のクセだ。
千田は、情けなくて俯いた。
ああ、自分はまた、彼を困らせている。と……

「陸にダメなところなんて、ない」

バツが悪くて視線を上げることはさすがにできず、千田は俯いたまま答える。
彼は正直に話してくれたのだから、自分もちゃんと話さないと……

「原因は、単純に俺が、自分に自信がないからだ。昼間もそう言ったとは思うけど」

『僕は自分に自信がないから、彼の言葉を信じきれなかったのかもしれません』

そう、自信がない。
これまでずっと脇役で、恋愛だって引き立て役で、"いい人だし顔も良いんだけど恋愛対象としてはちょっと…"と言われ続けた自分が、こんな人と恋人同士になれるなんて信じられなくて。
裏方でも周囲の目を惹いてしまうような華のある人が、自分を好きになるなんて……

「不安を取り除けるかどうかは、自分次第だったんだ、結局。
陸の周りにはたくさん魅力的な人がいて、出会う機会もたくさんあって。俺みたいな目立たない地味なヤツを好きになるなんてこと自体が不思議で……」
「………」
「そう思ったら、時々無性に不安になることがあって。
俺を大事にしてくれてるのは、陸の行動でじゅうぶん分かる。でもその反面、もしかしたら一線を引こうとしてるんじゃないかって思うこともあって…」
「は?何で…」
「陸、あんまり俺に触れないし。陸の"好き"ってどういうことなんだろうって考えたら、怖くなった」
「怖い?」
「気軽に"好き"って言い合って同じ空間を味わって、それで満足な程度なんじゃないかって。恋愛ほどの重みは、もしかしたら無いのかなって…」

言ってて、千田はどんどん虚しくなった。
もちろん、今日の出来事で彼が本気で好きでいてくれたと分かったけれど、でも……

「俺も男だから、女の子となら付き合ったことあるから、分かるけど。その…普通だったら、好きだったら手ぇ出しちゃうよなぁとか思ったら……」
「お前…」
「あ、でも、それはその、あくまで男女の付き合いについての経験上っていうことであって。実際俺は今まで男の人と付き合ったことないし、陸も無いって言ってたよね?
だから、俺たちは元々はそういう人間だから、同性と付き合う場合にそこは繋げて考えるべきじゃなかったかもって、今は思う。
ごごご、ごめん、下世話なこと言って」

目を丸くして絶句した陸の反応に、焦った千田は必死で言葉を取り繕う。
バカ正直に、何をベラベラ喋ってしまったのかと。

「ホント、ダメだ俺。バカだから、今までその辺は直結して生きてきたっていうか。…って言ってもそんなに場数こなしたわけじゃないけど。正直、片手でも余る程度で…って、ああ、何言ってんだ。
ああ、あの、陸はたくさん恋愛してきたんだよね?大河さんが言ってた。"兄貴は昔からモテモテだった"って。だから、きっと陸の判断が正しいと思う。だからあの、これからのことは、陸の意見に………――――っ!」

突然、千田は強く抱きしめられた。

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