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「アゲイン(陸×千)」
3:アゲイン

アゲイン 3-4

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突然、千田は強く抱きしめられた。
ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、息ができない。
でも、彼の鼓動や体温が心地よくて……

「アホやな、有介」
「え?」
「俺が、大丈夫やと思ったか?」
「え……あの…」
「恋愛ほどの重みは無い、同性と付き合うから心と体は別。俺がそう思って有介と接してきたと思う?」
「……だって…」

陸がしゃべる度に、首筋に息がかかって。
千田の体に、甘い痺れが走る。
だから、

「あっ……」

首を竦め、思わず声を漏らせば。
その瞬間―――唇を塞がれた。

「……!!!」

驚いた千田が、今度は目を丸くした。
唇を陸の舌にノックされて、少しだけ口を開くと、するりとそれは口内に入ってくる。
千田の頭を抱え込むようにして、そのまま舌を絡ませてくる陸に、千田は今まで感じたことのない、彼の"本気"を感じた。
苦しさも怖さもあるけれど、それ以上に気持ち良くて。目を閉じて陸のキスを受け入れれば、体がどんどん熱をもつのが分かる。

「う…」

酸欠もあるのか、千田は頭がぼーっとしてきて……
ソファに突っ張っていた手からガクンと力が抜けて、思わず陸のシャツを掴んだ。
そうすればやっと、解放される唇。
一気に、肺に酸素が入ってくる。
はぁはぁと肩で呼吸をする千田に反し、陸は"はぁ"とひとつ息を吐いた程度で、以降はまったく息が乱れてない。

「ず…ずるいっ」
「…へ?」
「こっそり息してたでしょっ」
「……は?」
「平気な顔して、ずるいじゃないか」

的外れというか言いがかりというか、分かっていたけど悔しくて。
こんなキスして平然とした顔してるこの人が憎らしくて。
千田は、陸をそう責め立てる。
しかし……

「平気に見える?」

苦笑しながら千田の手をとって、陸は自分の左胸に当てた。

「あ……」

千田の手をバクバクと打ってくる、強く早い鼓動。
それは、自分と同じで。

「俺、今、いろいろ必死なんですけど」
「……あの…」
「下世話どころか、そんな話されて俺、本気で理性飛びそうになった」

そして自分の胸に当てていた千田の手をとり、強く握り締めてくる。

「好きな子そばに置いて平気かって?んなわけないやん。そんな男いるわけがない」
「……じゃあ」
「言い訳に聞こえるかもしれないけど、俺だって、ゆっくりでもいいから先に進もうと思ってたよ。でも、これ以上触れたら止められないんじゃないかって思って。俺、自分の理性にそこまで自信ないから。下手に手ぇ出してドン引きでもされた日にゃぁ立ち直れへんし」
「ドン引きなんて……」
「だいたいお前、自分が地味やとか普通やとか言うとるけど、お前を普通と思ってる奴居らんと思うで?」
「え?」
「面白すぎるし不思議すぎるわ、お前。
ファンから"不思議ちゃん"呼ばわりされてるって、川口が言うてたで」

『どうにもこうにもつかみどころの無いフワフワした奴でね。千田独自の世界があるんだろうけど。仲間からもファンからも"不思議ちゃん"て呼ばれるような奴だから大変だと思うけど、頼みますね』

今日、東京に戻って改めて川口や八神と電話で話した際にそう言われたと、楽しそうに陸が笑う。

「有介はじゅうぶん魅力あるし、それは俺の欲目なんかやない。自信もってええから。俺が恋愛してきた中で、お前は間違いなく最高の相手やから」

そう断言されれば、千田もようやくホッと笑顔が漏れた。
今まであれだけ不安だった思いが、不思議とすっと消えていく。
陸の言葉は、魔法みたいだ。

「それに、心配は俺だって一緒」
「…え?」
「有介は愛されキャラやから、いつか誰かに攫われやしないかって、俺けっこう心配してるんですけどね」
「そんな…ないない!23年間無かったんだからあるわけない!」
「それ、気付かなかっただけやろ。しかも、俺が知ってる限りでは、お前みたいなタイプに捕まるのって、面倒な奴が多い」
「は?」
「往生際の悪いやつばっかりってこと。俺みたいに」

だから苦労するよ、と、陸が千田の頭を撫でる。

「大体俺、そんなすごい人やないで?有介まだ見てないのかもしれないけど、いろいろ欠如してるとこあるから」
「?」
「仕事に夢中になると他のことに目が回らなくなるっていうか。考えながら歩いて思いっきり蹴躓いたり、タオル肩にかかってるのに超探したり。収録見に行ったはええけど、注意しようとして前に出てしまって、俺の方がめっちゃ怒られたり…」
「いや、それはもう気付いてるから大丈夫かな…」
「あら、そお?」

完全無欠そうな陸が、千田でさえ"何で?"とツッコみたくなるほどの失態をおかしている姿は、何度か見てきている。
収録中にカメラに映り込む件に関しては陸の代名詞ともいえるほどの名物だし、普段の生活でも、彼の意外な"天然"は何度も見てきた。
それが陸の人間的な部分だし、千田が彼を愛しく思ってしまう部分だ。

「有介の不安に気付かなかったのも、俺の欠如した部分や。ごめんな?」
「……?」
「そうやな。普通やったら心配になるよな。中高生じゃあるまいし、あんな付き合い続けられたら。高校生だってもっと進んでるか。
大人ぶって余裕かましてるふりして、俺、アホやな。こんなこと有介に言わせるなんて」

情けないよ、と自分自身に呆れたような声を出す陸に、千田はハッと思い出して赤面した。
そういえば自分は、この期に及んで、さっきとんでもないことを言ったのではないか、と。
そこに気付けば急に恥ずかしくなって、無言で首を左右に振りながら話題を逸らそうとするのだが、

「でもこれだけは分かって欲しいんやけど、俺、本当にお前のこと大事なんや。大事やから、有介の気持ちを優先したかった」

陸は気付いていないのか、話題を続けてくる。
当然千田は恥ずかしくて仕方ないが、でも陸のその真摯な瞳と誠実な口調には、やっぱり安心を感じた。

「……うん…分かってる」

恥ずかしさよりも勝った安心感に導かれるように、頷く。
今なら、素直に彼の言葉を信じられる。

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